1,KPI監査とは何か
KPI監査とは、企業の収支結果などの財務結果だけで経営判断をするのではなく、その業績につながった行動プロセスの指標を監査モニタリングする事で、「業績プロセスの改善」をPDCAしていくことです。
一般的に「会計監査」と言えば、財務状況や収支結果をチェックしたり、適正な経理処理をしているかに重点が置かれます。
税務士事務所が行う「税務監査」がまさにそれ。
しかし、KPI監査はその業績や収支結果を出す為の行動プロセスを分解し、それに行動数量目標を設定します。
その行動数量目標のモニタリングと行動結果、事後の行動計画修正をしていくことです。
KPI監査を知るには、それにつながるKGI・KSFを知る必要があります。
KGI(重要到達指標)、KSF(重要成功要因)、KPI(重要業績評価指標)の関係や流れを整理したのが下記の「KPI監査 中小零細企業でも活用できるKGI、KSF、KPIの関係と体系図」です。これを見ると、KPIの位置づけが理解できます。
https://re-keiei.com/consulting/74-kpi/1758-kpi-kgi-ksf-kpi.html
2,KPI監査をすると何故業績があがるのか
コンサルタントであれ、会計事務所のMAS業務(経営支援)であれ、究極の提供業務は「業績改善支援」です。
その途中過程に、「人材育成・教育」 「経営計画作成支援」 「マーケティング」 「事業承継支援」 「組織・仕組みづくり」 「経営者のメンター」などがあるわけです。
実際に「業績改善支援」に直結しないコンサルティングや経営支援サービスは、どうしても解約の憂き目にあいがち。
それは「会社が少しでも良くなっている」という実感が経営者にわかないからです。
いきなり「売上利益」の拡大を保証するようなコンサルタントは危ういし、何か隠れた条件があったり、結果的に失敗するケースが多いでしょう。
多くのまともな経営者は「業績向上は大事だが、一朝一夕にはよくならないし、簡単によくなるという事は簡単にダメになる事」だと分かっています。
だから「即業績向上」という甘い言葉に乗りやすい経営者は考え物なのです。
⑴業績改善の兆候は小さい変化から
業績の結果とは、「売上拡大」 「「粗利率改善」 「営業利益の拡大」の事を指します(ここでは資金繰り改善などの財務業績は脇に置く)
多くの中小企業では、よほどの神風や外部環境の好転がない限り、売上急拡大はあり得ません。
私もこの40年間のコンサルティング経験の中で、数度はクライアントの業界で吹いた「神風」を経験しました。
しかし、急激な神風はどうしても一時的なもので、長く続きません。
その神風商品や神風顧客の依存度が高い企業は、数年すると大幅な規模縮小や倒産を余儀なくされました。
神風商品や神風顧客がある間に「Next戦略」が打てたなら、その後も継続的に経営が進んだかも知れません。
実際に私がコンサルティングしているクライアントの多くは「多角化や周辺事業の拡大」で、特定商品や特定顧客の依存度を下げています。
だから「耐性」がある訳です。
また、これも長年の経験から「業績改善」や「売上・利益規模」が拡大している企業には必ずと言っていいほど、「小さな変化」が起こります。
この「小さな変化」は、最初業績に影響しない事から「見捨てられて放置」される企業が多い。
しかし、業績改善や企業成長をする経営者は、そういう「小さな変化」を見逃しません。いわゆる鼻が利くのです。
その「小さな変化」の現実と理由を深く考え、その可能性を見出しいく。だから経営者は「目先の業績だけに右往左往せず、小さな変化に気を遣う」事が必要なのです。
⑵「小さい変化」から見出すKSF(重要成功要因)
「小さな変化」は主に「顧客の変化」 「顧客の新たなニーズや要望」として現れます。
その「小さな変化」に、少しでも自社の「強み」を活かして対応をしていけば、顧客は更にいろいろなニーズや情報を言ってくれるし、そこに「新たなブルーオーシャンのニッチ市場」を見出すかも知れません。
「小さな変化」からニッチ市場を「自社の得意分野」に育てるには、「今ある強み・使える経営資源」を明確にして、それを該当顧客のニーズにぶつける事です。
その時「明確な武器」や「企画」が必要です。何も与えず竹やりで戦えと言っても全く成果は出ません。
例えば、新規との接点開発のイベント、ノベルティ、攻略用低単価商材やサービス、販促キャンペーンなど。
そういう企画とターゲット顧客と掘り下げる戦略をKSF(重要成功要因)と言います。
そしてこのように「ニッチな機会」と「自社の小さな強み」を掛け合わせてKSFを出す事を「積極戦略」と言います。まさにクロスSWOT分析の姿そのものです。
KPI監査をする為に必ずKSFを先に導き出しますが、そこには単なる経営者の思い込みだけでなく、クロスSWOT分析のような明確なロジックが必須なのです。
考えてみれば当たり前の事です。
●「小さな変化」の正体を見極め、それが今はニッチニーズだとしても、いずれ大きな波に変わるかもしれない
●儲かる企業はイノベーター理論でいうところの「イノベーター(革新者)」か「アーリーアダプター(初期採用者)」のみ。
●誰でも儲かると分かった段階はアーリーマジョリティ(初期追随者)とレイトマジョリティ(後期追随者)が参入し、ブルーオーシャンからレッドオーシャンに変わる(価格競争になり利益が取れない)
だから「小さな変化」の段階で確実に、行動力を上げていくことが肝要です。
⑶KPI(重要業績評価指標)がよくなれば、確実に業績改善は進む
この「小さな変化」は、イノベーター理論での初期段階のマーケティングだけでなく、今の経営活動、営業活動、生産活動にも起こっています。
売上利益などの業績向上に直結する行動プロセスがどんな企業にも存在します。
その行動プロセスは「売上利益」を上げる為に「初めの一歩」だったり、「小さな変化」の継続行動だったりします。
KPIの考え方は、行動プロセスを数値目標化して、その行動プロセス数値がよくなれば、いずれ業績改善が進むというものです。
前述の的を絞ったKSF(重要成功要因)を行動に転換する為のプロセス量を確実に増やせば、「業績改善の確度」は高まります。
だから多くの経営者は「別に新しい事をしなくても、基本的な事をしっかりすれば業績は上がるはず」だと思っています。
ただ、経営者が思うように現場や社員が動かないから、「出来そうな気がするKSF」 「動きやすいKPI設定」が必要になるのです。
⑷KPI経営を推進し、モニタリングしていくのが「KPI監査」
中小企業の業績を上げたいなら「的確なKPI」が確実によくなることです。
的確なKPI設定とKPI結果のモニタリングをしていくのが「KPI監査」です。
だから出てきた売上利益が計画対比、前年対比どうだからと議論する予実チェックとは、根本的に監査スタイルが異なります。
目標値にしていた「KPI」がどうだったのかを議論し、その進捗やKPI推進の結果、出てきた情報から更にKPIを再設定していくことをKPI監査モニタリングと言っています。
KPI監査士は、中小企業のKPI経営を推進し、KPIをモニタリングしながら、経営改善・業績改善の伴走支援をしていく人なのです。
3,業績改善に直結する『管理会計』をしたいなら『KPI監査』が近道?
最近は「管理会計」を気にする経営者も増えてきました。
会計や財務の専門家も盛んに「管理会計」を推しています。
しかし、管理会計と言う概念は企業の考え方次第でいかようにもとらえることができる事から、財務会計や税務会計のような形式的な決まりがありません。
また「部門別損益」 「原価管理」 「経営分析」とか言っても、多くの中小企業経営者の理解を得るにはなかなかハードルが高い。
そこで、どのレベルの中小企業や経営者にも理解できる管理会計が「KPI監査」です。
「KPI監査」の考え方や推進方法が分かれば、「シンプルな管理会計入門」として導入でき「管理会計導入=業績改善」と言う提案が可能になります。
⑴KPI監査は財務的見地より、行動プロセスに比重
KPI監査は業績プロセスを分解し、効果のある優先行動の数量を指標化したものです。
だから、部門別損益や原価計算などで「個別生産性数値」が明確になって「業績管理が細かくなった」と言うレベルの話ではありません。
業績を上げる為の重点行動を分解することから始まりますが、KPI監査では「クロスSWOT分析」 「「業績の公式」 「ボトルネック」の3つの切り口から具体的な課題と行動の指標化を行います。
一般的な管理会計での目標は、KGI(重要到達目標)に置くことが多いですが、それだと「詳細行動の数量化」まで踏み込めず、監査をしても抽象的な議論に終始します。
だからKPI監査として「行動プロセスの目標数量化、指標化」を設定し、モニタリングする方が効果があるのです。
⑵KPI監査は即行動展開できる管理会計
管理会計でいろいろな計数が出たとします。
経営者は、個別データの結果から財務的な問題点が明らかになった事で、今後の方針や目標管理、幹部社員への指示に役立つと思うでしょう。
しかし、管理会計で出た数値から「直球での行動改善の具体的な内容」はなかなか決まりません。
財務会計よりは自社に合った管理会計データは分かりやすいし方向性は見えますが、その結果「誰が、いつまでに、何を、いくらの量で、どうする」と言うアクションプランには即はいかない。
KPI監査は文字通り「行動プロセスの指標化」なので、「誰が、何を、いくらの行動量で、どれだけの成果を、どのように出す」と言う詳細目標設定になります。
だからKPI監査の導入=業績改善へ即行動展開できるのです。
⑶KPI監査は経営者だけでなく、幹部社員も巻き込める管理会計
またKPI監査は経営者だけの目標ではなく、関係幹部社員全員が何らかのコミットメントを持つ指標です。
どこかの会計士から経営者だけが「管理会計データ」の説明を受けても、そのこと自体が幹部社員に直接的に影響しないことも多い。
KPI監査なら、その目標KPIの実践結果を「賞与査定」に反映することもあります。
「管理会計=賞与評価」
となれば、眼の色が変わる幹部社員が増えるのは当たり前です。
⑷KPI監査で自社の「勝ち筋」が見えるから、社員も前向きに
KPI監査では「クロスSWOT分析」 「業績の公式」 「ボトルネック」と言う3つにアプローチで優先課題を見つけ、行動プロセスの分解を行います。
その中でも「クロスSWOT分析」で「強みを活かした顧客視点と業務プロセス視点のKPI」の比重を高くしています。
その為もともとある「強み」を更に伸ばし、同業者は地域でその「強み分野」では圧倒的な差別化を図る商材や顧客戦略を立てます。
その商材や顧客戦略を実現する為の行動プロセスの指標を決めていきます。
だから「なるほど、これをこのように頑張れば、うちはまだまだ勝てるんだ」と幹部社員も理解し、前向きに取り組んでくれます。
多くの管理会計から出された目標は「弱み改善」 「苦手解消」の指摘や具体策が多いことから、経営者も幹部社員も「管理会計=苦痛」と言う図式にもなりかねない(結構、このケースが多いようだ)
やっぱり、どうせ仕事を頑張るなら「得意なこと、強みを更に伸ばして業績改善」した方が近道だし、ストレスも少ないですね。
我々が指導するクロスSWOT分析から生まれる「積極戦略」はそういうものです。
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