SWOT分析、KPI監査、採用サイト、事業承継「見える化」コンサルタントの嶋田です。
KAIZENは、外国の生産現場でも通じる言葉です。
トヨタのカイゼンは特に有名で、トヨタ生産方式の基本になっています。
またトヨタだけでなく日本の製造業の強さの象徴でもある活動が『カイゼン活動』です。
今では生産現場に留まらず、事務部門・販売部門・病院や介護施設・公共的な団体までもが、その活動に取り組まれています。
その進め方は、様々ですが、基本は
『金をかけず、現状の条件(人員・設備・資金)の中で、知恵とアイデア・チームの協力で、効率化・顧客満足・コストダウンを実現する』と言う事です。
私たちも、中小企業から病院・介護施設まで、多くの事業所で『カイゼン活動』を指導しています。
当然、上手くいく事業所とそうでない事業所があります。
上手くいっている事業所には、『カイゼンの限界』がないくらいに、次々と提案・実施結果があがります。
しかし、導入しても長続きしない事業所は、数回アイデアを出せば、後はジリ貧で徐々に活動自体がしぼんでいきます。
ところで経営者から、『うちの社員は問題意識やヤル気がないから、提案も改善も上がらない』との嘆きを聞く事があります。
本当にそうでしょうか?
問題意識も職場カイゼン意欲もまったくない従業員など、そう多くはないはずです。ほとんどの従業員は、
『少しでも楽にしたい』
『少しでも効率的にしたい』
『少しでも患者利用者から誉められたい』
『少しでも品質上げたい』
『少しでもクレームを減らしたい』
などと考えている筈です。
なのに、どうして経営者からは、上述のような嘆きが出るのでしょうか?
私たちは、『カイゼン意見を出させない・カイゼン意欲を潰してしまう経営陣や管理者』に問題があるように思うのです。
それを、つぶさに物語る出来事が過去ありました。
ある病院で『カイゼン活動導入』の指導を始めた時の事です。
管理者や職員にカイゼン事例の紹介、モチベーション教育も数回行い、第1回目のカイゼン提案を提出後、簡単な発表会を経営者や他部門の管理者もいる運営会議で行いました。
私たちは、カイゼンは『大きく変える』のではなく『小さく変える』・『少し変える』事からスタートし、その多くのカイゼン提案の中で、たまにホームラン性のカイゼンが生まれる事を知っています。
ですから、その病院でもそのように指導してきました。
全員参加が基本のカイゼン活動だから、最初から難題に取り組ませたり、成果が出にくいテーマを選んでは途中で挫折するだけです。
そういう観点から、『目の前のカイゼン』から開始させていたのです。
しかし、その発表会の最後のコメントで、院長がぼそっと一言言ったのです。
『その程度のカイゼンは、今更言わなくても既にやっていると思っていた。もっと、ダイナミックに成果が出るカイゼンを期待したい』と。
経営者として、早急な成果を出したい院長の気持ちも分からないではありません。
しかし、一気にモチベーションが下がったのは言うまでもありません。
そればかりか、院長は現場の看護師や医療技術スタッフに、『この前のカイゼン発表程度のものより、もっと大きなカイゼン案を出してくれよ』と平然と言ったのです。
少しずつ動き出そうとしていた矢先の、心無い一言で出鼻をくじかれた形になってしまいました。
私たちも事務長も院長には事前に根回しをしていたので、まさか、あんな軽率な言葉を出すとは思っていませんでした。
その後のカイゼン推進者会議で、ある部門の委員からこんな言葉がでました。
「先生の指導通り、小さなカイゼンを出していましたが、院長の要望は違うみたいですね。せっかくカイゼン活動しても、認められないなら、活動の意味も感じなくなります」と。
その後、私たちと事務長は一度冷めてしまったカイゼン活動を継続する為のマインドを取り戻す為に
『TOPに評価される為ではなく、患者・利用者の満足度向上と、自分たちが少しでも「楽」になる為に頑張ろう』
といい続けて、動機付けをしました。
人間のヤル気は、TOPや上司の一言に大きく影響されるものです。
ですから、不用意な発言がある度に、モチベーションが下がらぬよう、全ての行動の目的を確認すべきでしょう。
このカイゼン活動は、TOPの為ではなく、患者利用者と自分たちの為に行うと考えれば、無理解な上司や傍観者の仲間がいても、構わずやり抜けると思います。