M&A後に考慮すべきは、M&Aでグループ会社又は合併部門になった譲渡側の幹部従業員のモチベーションです。
当初は子会社化の場合、資本関係が変わっただけで、組織もビジネス形態もは以前のままです。
しかし、M&Aした側(譲受側)は早い段階で、統合効果を出したいもの。
統合効果を出す為にPMI作業が不可欠ですが、大事な事はいかに組織の融合を図るかです。
しかし、組織の融合が一番難しい事は、誰もが知っている事です。
では、中小企業でM&Aの効果をいち早く出す為には、何が必要でしょうか?
私の経験則から言うと、「早い段階で共通の成功体験を実感してもらう」事が大事だと考えます。
グループになった事で「得をした」を思ってもらえれば、その後の統合作業もスムーズにいきます。
1、共通の成功体験は統合後1年以内に成果を出す
M&Aをしたのに、それぞれの企業任せで「統合効果」の具体的な手を打たなければ、時間の経過と共に同床異夢どころか、他人以上に難しい関係性になってしまいます。
「親会社と一緒になって良かった」と早い段階から実感してもらい、どんどん協力体制を双方がとっていく為にも、1年以内に何らかの成果が必要です。
ここでいう成果とは、数字に現れる事です。
人事交流や会議参加などの管理的なものではなく、売上や利益、または顧客開拓、製品開発などの眼に見える成果を目指します。
1年以内に成果を出すには統合後6か月以内には行動プロセスを踏む必要があります。
2、共通体験として業績効果
双方が売上効果を出さなければなりません。
子会社の顧客資源や商材資源を活用して親会社だけが良い目に合ったり、また逆に親会社の各種の経営資源を子会社が使って、業績に貢献するのみなどの一方通行は、いずれ組織に不満がたまっていきます。
また、利益面では販売拠点や生産箇所の適材適所による統合も、仕入先の一元化、仕様の統一などもどちらかに有益性が偏れば、どちらかが被害者意識を持つようになります。
かといって、「たすき掛人事」や「何でも平均」みたいに、双方の立場の中間点などが増えればコストも下がらず、競争力も減退するかもしれません。
ここで大事な事は親会社も子会社もお互い「win-win」の共通体験が必要だという事です。
3、シナジー積極戦略から重点キャンペーン展開
以前に書いたシナジーSWOT分析では最初に「シナジー強み」を出します。
そしてそれと「機会」の掛け合わせで「シナジー積極戦略」が生まれます。
この「シナジー積極戦略」から早期に成果が出そうな項目をピックアップします。
そしてそこだけに絞って「期間重点キャンペーン」を譲渡側も譲受側も展開します。
この「期間重点キャンペーン」の項目設定は、シナジーSWOT分析などの「PMI」に参加した経営陣や幹部で決定します。
更に進捗チェックや期間中の事例の情報公開や再対策などもこのメンバーによる「キャンペーンプロジェクト」を行います。
この「期間重点キャンペーン」は何が何でも成功させる必要があるので、経営資源に総動員、社員全員の意識高揚策を徹底して組み立てます。
期間重点キャンペーンに最初にはkick offイベントをしたり、終わったら打ち上げをしたり、共通体験の中で生まれた「リアルな信頼感」づくりこそ、融合化への一歩と言えるわけです。
こうしてPMIでの成果を早期に出すことがリアルな信頼感づくりには重要だといえます。
精神論や概念論の議論も大事ですが、スモールM&Aではより実践的に早期に果実をゲットできるように推進してほしいものです。