コンサルタントファーム時代の苦い記憶1 【規模急拡大の行き着く先】
SWOT分析、KPI監査、事業承継「見える化」コンサルタントの嶋田です。
コンサルタント会社のカタチにはいろいろなものがあります。
その中で一人のスーパーコンサルタントが顧客の支持を集め、業容と規模を拡大、社員数も増やします。
しかし、いくつかの要件で判断ミスやベース思想から脱皮ができず、矛盾が拡大。
収拾がつかなくなって雲散霧消したケースも枚挙にいとまがない位あります。
私が修業していたコンサルファームもそうでした。
独立して25年経つので、出せる範囲の回顧録を少しずつ出していこうと思います。
1,創業20年位までイケイケどんどんで成長
私が入社したコンサルティングファームはその時、年商1.5億円、社員20名位のこじんまりとしたところでした。
昭和60年でまだバブル前。就職もまあまあ厳しい時代でしたので、就職できた事への感謝と「小さいけど経営者がビジョンを持っているから、これから成長するだろう」という期待がありました。
その期待に沿って、コンサルファームはどんどん成長しました。
複数の拠点を全国に持つようになりました。
私自身も26歳の時には未熟なのに地方の拠点長になり、拠点の一人当たり経常利益1位や成長率1位を取り、社内では「若手のホープ」と言われました。
その後も会社はどんどん成長し、一時は年商も大台に乗り、全国知名度のある大手ファームとバッティングする機会も相当増えました。
それでも、大手と比較して何か負ける気がしなかったのは、若気の至りが無知か(笑)、実際にコンペでは何回も勝ったものです。
会社の成長はそのまま自分自身の成長になり、複数の経営顧問担当、プロジェクトコンサルティングの担当、コンサルスキルの開発、顧問先開拓、他拠点のテコ入れ、コンサルの指導など業務は多岐に渡っていました。
休日はほとんどありませんでしたが、結構充実していました。
2,経営者の自信過剰と規模拡大妄想
その経営者はすごい説得力とカリスマ性で経営者を説き伏せ、その経営者がコンサル受注の為に面談したら、80%の確率で何等かの契約に至ります。
無論、実際の施工は担当コンサルに振るのですが、その経営者は全国の拠点を毎月巡回し、その拠点のコンサルが引っ張て来た見込み客を「クライアントに変える」受注面談を毎月数十本行っていました。
会社の拡大に合わせて、私自身も入社6年を超えた時点で基幹拠点の所長と本社の経営技術部長も兼務など、どんどん責任が増えていきました。
その経営者は自身への絶対的自信が強く、コンサルが何人になろうが、自分が説得すれば大体のことは処理できると思っていたようでした。
ある年の年末、全社員が集まる全社研修会をしていた時、総勢100名を超える宴会を見ていて、私自身身の毛がよだった事がありました。
「この人数の固定費をどうやって今後も捻出するのか?」
拠点によっては赤字が続いていたり、以前から人材基盤の薄さが気になり、これ以上の拡大は危険だと認識していました。
しかし、その経営者は意に介さず「そんな小心でどうする。前を向くしかないんだよ」
と一喝されました。
規模拡大とは業容拡大と拠点展開、提携先拡大、商材拡大の事です。
100名弱のコンサルファームが一人のカリスマ経営者に依存している姿は、今から見ると異常だったのです。
しかし、当時は「この社長なら大丈夫」という安心感があったのも事実。
この経営者は自分を「神」か「絶対運の持ち主」と思っていた節があり、そのマジックに乗っていたのかもしれません。。
3,内容が伴わない薄い人材基盤と採用離職の繰り返し
私も28歳の時には最年少ボードに名を連ね、責任の一端を担いました。
私の基幹拠点は社員数も20名弱おり、他の拠点も統括管理をし、その固定費を賄う事が優先課題になりました。
この頃から「顧客の為のコンサルティングから、自分たちの為のコンサルティング」に色合いが変わった気がします。
私が責任者の基幹拠点でコンサル志望者を採用し、経験も育成もまだ不十分のまま他拠点へ転勤させます。
それは他拠点での人材離脱が繰り返されるからです。
しかし基幹拠点として自分のところも人材は欲しいのですが、ちょっと育ったら転勤命令が来ます。逆らう事はできません。
その理由はいろいろありますが、拠点長が育ってない事が原因でした。
拠点長が育たないのは、決裁や判断は全部経営者が握っており、小さなことも経営者に報告し許可を仰ぐ習慣が根付いてしまい、拠点長も経営者に依存するし、力量のない人材を「野菜の促成栽培」のように拠点長に仕立てた事も要因でした。
問題のある拠点は採用と離職を繰り返し、いつも新人ばかりの素人集団と化します。
素人コンサルでもできるコンサルティングはありましたが、その普及が進みません。
私自身が現場コンサルと部下の後処理に時間を取られ、コンサルタントの指導ができなかったことも一因です。
新任コンサルの教育が拠点長に任せられ、段階的な教育ができないまま、コンサル営業に行かされる始末。
中小企業コンサルタントですから「自分の給与分のコンサル商品の営業や見込み客開拓」は新人からでも求められます。
大手のように6か月間は温存教育をして、じっくり育てる余裕がありません。
簡単に言うと「知識は現場で覚えろ」がまかりとおっていた時代です。
だから基礎教育を受けていない素人コンサルは自己矛盾や仕事の壁、生産性の低さ、数字を出さないから経営者や拠点長からの強いプレッシャーで1年も経たずに退職していきます。
その繰り返しの結果「薄い人材基盤」になったのです。
まあ、大手コンサル会社は今でも大なり小なり似たようなものかもしれません。
4,ノウハウは所詮その個人にあり。ファームにはない
カリスマ経営者の人間的魅力と天才的営業センスでコンサルティング受注をしていったのですが、そのノウハウには今でいう「再現性」がありませんでした。
その人だからできる事であり、ノウハウパッケージも弱く、素人コンサルが1年未満である程度カタチだけでもできる仕組みがありませんでした。
確かに「経営理念づくり」「経営計画書作成」などの基本的なパッケージはありましたが、オリジナルチェックリスト、フレーム、基本テキストなどは各自がバラバラで実施している状態。
だからそのファームでは「経営者流ノウハウ」「嶋田流ノウハウ」など「〇〇さん流」というものが混在し、それがどんどん勝手に生成され、内容が浅いものが素人コンサルに普及していったのです。
ノウハウのパターン化やマニュアル化が進まなかったことも大きな問題でした。
今の時代ならコンサルノウハウを「ファーム独自のノウハウ」と言い切るのは少し無理があるかもしれません。
いろいろなデータがネットや市場に出回っているので。
しかし、この時代はまだネット環境はなく、情報取集は本と雑誌だけ。
そこに「コンサルの知識と経営者の知識の情報格差」があったから、素人コンサルでもそれらしい事を言えば、経営者も納得した時代でもありました。
今でもそうです。
私のSWOT分析ノウハウもノウハウとしては相当出回っているから、だれがしてもいいのです。
しかし、私が行うSWOT分析と私以外が行うSWOT分析では結果も経営者の満足度も違います。
パッケージが同じでも、品質の違いはいつの時代もあるわけです。
5,固定収入比率が固定費に対して極小
コンサル会社は組織が大きくなると確かに「固定収入で固定経費を賄う」事が難しくなります。
固定収入が少ないと、常に一発受注の高単価プロジェクトや高単価研修を追いかけ、何とか帳尻を合わせるよう行動します。
すると、見込み客に対してじっくりニーズの汲み取りをしない状態で「青田買い」するので、もっと寝かせれば自然に受注できたのに、急いで刈り込んだお陰で、元も子もなくなるようになります。
すべては「安定の固定収入=経営顧問収入、継続指導収入」が固定費(人件費を含む販管費)に対して少ない事に起因しています。
経営者や拠点長の視点は半年後、1年後の業績より、目先の業績に拘りだすと社内の雰囲気も殺伐としてきます。
そこで、人件費=コンサル数の考え方が大事になってきます。
忙しいからコンサルを増やすのではなく、固定収入で人件費をカバーした上で、まだまだ案件が出る状況の時に、将来構想と絡めてコンサルの採用を行うのが筋。
そしてコンサルは1年くらいは勉強させるくらいのゆとりがないと、育ちません(まあ、センスのないコンサルを採用したら半年以内に辞めてもらわないと困りますけど)
そういうゆとりや長期の戦略投資ができるのも、固定収入比率が高く、来年もある程度の業績が予測できるからです。
私がいたファームも赤字の拠点はやはり固定収入比率が少なく、いつも一発ものを追いかける悪循環でした。
おかしくなりだしてからは、「売上に対して継続収入比率がどんどん下がる傾向」だっとと記憶しています。
全社的にも固定収入比率を意識しているマネージャーがどれ位いたか分かりませんが、少なくとも私はこの時代から「経営顧問収入の重要性」を意識していました。
6,動き出した機関車を止められない経営者
このコンサルファームの経営者も途中で状況悪化が激しく、このままではやばいと知っていたはずです。
しかし、極端な引き締めができなかった。
それはいくつも要素があり、書けない内容も相当ありますが、一つは金融機関や株主に対してでしょう。
また経営者自身の価値観やカネの使い方も大きな要素でしょう。
おかしくなる時は、いろいろなクレーム、トラブルはあちらこちらから噴出していきます。
その一つ一つの目先の処理に有益な人材の時間が取られ、未来の仕掛けがおろそかになります。
その間も将来可能性のある人材の離職は止まりません。
問題だらけの組織でもリアルな商品や設備を持っている普通の中小企業なら何とか維持したり金融機関からの支援は貰える可能性があります。
しかし、コンサルファームは具体的な商品がなく、そのコンサル自身が商品なので、そのコンサルが信用を無くせば、一気に収入は降下します。
この経営者も一度動き出した機関車を止める決断ができず、もう「やばい」と思った時は再生不可能な状況になったのでしょう。
この段階では私自身はこの経営者とは信頼関係をなくしていましたが、社員がいる事からギリギリまでこのファームで業務をしました。
最後の方には、その経営者や追随する役員とも決定的な事がいくつかあり、
そこで14年間お世話になったこのファームから独立した次第です。
その後数年して、そのファームは市場から消えました。
私もこの38年間、このファーム時代の経験が強くトラウマとして残り、どんなに忙しくても人を増やす事を極力避けています。
それより、お弟子さんにノウハウを教え、その人に自分に依頼があるコンサル先をお願いするパターンにしています。
だから今後もコンサル事務所としてはそんなに大きくならないでしょうね(笑)
コンサルタントはクライアントの為ではなく、自分の為に仕事をしだしたら、危険信号です。
今一番、ヤバイコンサルタント事務所は、社員やコンサルタントが数人いて、顧問料の安定収入が固定費の60%以下のところです。
少しでも不況風が吹きだしたら、受注や収入が急降下し、固定費が重くなりだします。
だから大手コンサルファームのように、コンサル売上が落ちても安定した物販売上、セミナー売上などの「非コンサルティング商品」を固定費の30%以上持つ事が大事になります。
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