結局 社長の仕事って何だ?
これまでいろいろな後継者の教育をしてきました。事業承継問題は経営の根幹であり、非常にナーバスな課題です。いろいろな後継者と会う中で、中には違和感を感じる後継者も少なからずいますね。それは、どんな後継者か?「本来の社長の仕事をしていない」という事です。そういう後継者の企業は、将来的に非常に危うい訳です。
1、システムや規則、管理体制強化に現を抜かす
後継者の中には、就任早々、組織や配置を変えたり、人事評価制度を導入したり、規則を作ったり、IT化をメインの仕事のように行う人がいます。これまで、経営改善のコンサルティングを何十社も実施してきていますが、私の経験からすると、そういう管理体制の強化や組織をいじった結果、業績が大きく回復したようなケースは、本当に稀です。管理システムとは手段であり、目的ではありません。
また、管理システム構築は費用は出るけど、即おカネを生みません。何か、会社の体裁や仕組みを作れば「儲かる」「従業員がヤル気になる」と誤解しているように感じます。確かに、その手段が喫緊に必要な場合はあります。しかし、そのことに社長の多くの時間を取られるのは、やはり違うと思います。
2、会社が大きく変わるのは3の「新」である
私の長年のコンサルティング経験から言える、鉄則があります。それは、会社を大きく変えて、業績を維持し続ける唯一の方法は「3つの新」を同時に行う事です。経営改善のコンサルティングをする時も、この「3つの新」が基本にあります。だから「3つの新」を阻害するようなコスト削減をメインには決してしてはいけません(経営改善計画の指導を会計事務所に依頼する場合、コストばかり言うところは要注意です。数値合わせの経営改善計画を立てても、成果は出ません)
後継者が承継前から「3つの新」に取り組んだ企業では、就任後3年以内に何らかの結果が出てます。そういう後継者のいる企業では、「管理システムの強化」に多くの時間を取ってはいません。
「3つの新」とは
- 新商品
- 新規客
- 新人又は新組織
です。「新しい事」こそ、企業を活性化させ、将来への期待を作ります。「3つの新」がない企業は、いずれ衰退しているのは自明の理です。既存商品だけでは、いずれ飽きられ、競争力をなくします。だから新商品開発、開拓、取扱をする事で商品に新鮮さが生まれ、既存客も反応します。新商品がないと結局、既存客から飽きられ、捨てられる運営をたどります。特に先代が作った商品だけに依存していると必ず、大きな業績不振にあうものです。
新商品開発や新商品の導入が進むのは、既存顧客のニーズを良く理解しているからです。逆に言えば、新商品を作らない企業は、顧客の変化するニーズを無視しているといえます。新商品・新サービスは経営者が率先して行動して成果を出すものです。この大事な作業を幹部や社員任せにしている企業で、市場から評価される商品開発が成功した中小企業を私は知りません。これこそ「経営者の専任業務」です。
4、新規顧客のチャネル開発で、未来も続く営業開拓
次の新は「新規顧客の開発」です。といっても、営業マンにように飛び込みしたり、紹介を貰って1件の顧客を、経営者自ら増やす作業を言うのではません。経営者が行う営業とは、「新たな顧客チャネルの開発」です。既存の顧客とは違う、新チャネル、新ルートなど戦略的な販路開拓こそ、経営者が行う営業です。業務提携、コラボレーション、直販システム、Web販売等々
かのピータードラッカー氏は言っています。「会社の究極の目的とは顧客を開発することだ」と。今の営業手段とは違う戦略を自ら責任者となって実現し、将来の為の新販路を作るのです。経営者には、その為に「代表取締役」という名刺があり、異業種や顧客上層部の知り合い、関係先経営者と会える権限を持っています。もし、そういう仕事が嫌で、幹部や社員に任せて、彼らが上手に仕事をしているなら、いずれ彼らは独立したり、転職して、経営者の元を離れるでしょう。
5、新人・新組織で活性化
「新しい酒は新しい革袋に盛れ」これは、西洋の古くから伝わる格言です。酒はワインの事です。新しいワインは新しい革袋に入れないと、袋が割けるとのたとえからです。古い袋をそのまま使って、新しいワインを入れるとトラブルの元という事でしょうか。新商品や新顧客チャネルを推進するなら、発想が凝り固まっていない若手や新人を採用した方が良いという事です。
しかも、そのマネジメントは経営者が直接行うのです。新しい商品、新しい顧客チャネルの仕事を、旧来の仕事しか経験ないベテランにさせてならないのです。
6、「3つの新」こそ、社長の仕事
ご理解いただけただろうか?管理システムに現を抜かす時間があれば、「3つ新」に全エネルギーを投入すべきです。しかも、自らがその矢面に立って。これこそ、後継者や経営者の仕事ですね。
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