嶋田利広ブログ

コンサルタント事務所経営

コンサルタント起業心得1「独立開業時の失敗事例と私の黒歴史」

SWOT分析、KPI監査、事業承継「見える化」コンサルタントの嶋田です。

コンサルタント起業心得シリーズ1独立開業時の失敗.jpg

この2023年で、コンサルタントになって37年、独立して25年になります。

これまで400社のコンサルタントをしてきて、毎月の長期経営顧問の13~15社、平均月額単価18万円(1回指導)、年間固定収入を2,500万円以上を30年間維持しています。

それ以外に研修、セミナー、単発プロジェクト、RE嶋田塾、コンテンツノウハウ販売もしています。

決してスーパーコンサルタントの売上ではありませんが、この30年間デフレ、不景気の間も変わらず維持しています。

コンサルタント事務所経営にとって、一番大事な事は「収入の安定」です。

しかもサラリーマン時代よりもはるかに高い所得にならないと、起業した意味がありません。

私は長年この業界にいて、多くのコンサルタント起業者を見てきました。

数にして90名位の方にアドバイスしたり相談を受けています。

その中で

「普通のサラリーマンから独立した人」「定年を契機に起業した人」「コンサルファームから独立した人」

いろいろな経緯でコンサルタント起業をしていますが、10年以上継続し、平均年間売上1500万円以上になっていない方は、これから10回にわたって紹介するコンサル起業失敗事例に近い事をしているように思います。

 

コンサルタント向けに、多くのノウハウ書が書籍やネット情報で出ていますね。

また巷の「コンサルタント養成講座」で学習する人、公的資格である中小企業診断士を目指す人、民間資格のコンサルタント資格を取得する人…などなど。

それを聞きかじり、その通りにすれば成功のパスポートを手に入れられると勘違いしている人が圧倒的に多いわけです。

しかし、現実はいろいろな失敗の上で学び、同じ轍を踏まないような努力をしたから、続けられているだけです。

その「コンサルタントの闇の部分」をオープンにして、そういうシチュエーションの予兆があれば、未然防止ができるノウハウや考え方を学んでもらう事が本シリーズの目的です。

その第1回目は「独立開業時の失敗事例」です。

脱サラして、経営コンサルタントとして晴れて独立。

不安もあるけれど、希望と情熱があるはずです。

独立にもいろいろな形態があります。

その中でも、私が経験した、または具体的な顛末を知っている事例を紹介します。

1,共同創業でけんか別れ

一人ではなく2人、3人の共同経営で開業独立するケースは多いもの。

当初は資金もなく、顧客もなくお互い助け合いながらやっていきます。

しかし、こういう仕事はほとんど、途中で価値観のズレ、収入の偏り、不公平感の顕在化が出てきます。

私が今の会社(㈱RE-経営)を創業する前、もう26年前ですが共同経営に近いカタチで、中堅のコンサルティングファームからの分社独立をしました。

前のコンサル会社の地方事業部時代の部下をNO2に据えて、資本金も一部出資させて経営参画をして貰いました。

前職では主任だったのを、取締役部長にして、給与も前職より15万円も増やしました(彼の生産性の割には高い給与)。

しかし、分社とは言え、元のコンサルティングファームとは、けんか別れに近いカタチの分社です

(出資はしないのに、親会社の経営者が取締役に名を連ねるいびつな構造)

私は顧客基盤をそのまま継承する代わりに、多額のロイヤリティを支払う契約でした。

その顧客基盤の60%は、私自身が創り上げたものであったので、ロイヤリティの高さに疑問を持っていました。

しかし、そこは分社なのでと割り切り、独自の路線を貫き、コンサル事務所として高収益を目指して頑張っていました。

ところが、こちらの情報が前職のコンサルティングファームの経営者にダダ洩れが続き、その経営者が分社への関与を強めてきました。

分社の取締役にしたNO2が情報を漏らしていたのです。

彼の言い分は「親会社あっての分社」だから、情報を流すのは当然というスタンスです。

しかし、こちらの経緯はそんな甘いものではありません。

分社せざるを得ない状況になった経営者とは、不信感いっぱいの関係です。

そこから徐々にそのNo2との関係にも亀裂が生じてきました。

しかも、給与を高くしたのに彼の生産性があまりに低いことも、悩みの種でした。

取締役なら最低でも月給の2.5倍の粗利を稼いでほしいのですが、せいぜい月給分だけの付加価値しか稼ぎません。

当然、私の生産性だけが頼りの経営でした。

そんなこんなで亀裂は不信感に代わり、これ以上一緒に仕事はできない状態になりました。

私は、苦渋の決断をして、その分社した会社をNo2に譲り身を引きました。

そして、自らは今の会社を立ち上げた訳です。

私のケースはレアケースですが、共同経営はやはり成立しません。

 

単独創業の不安感は誰にもあります。

しかし、共同創業での後からのもめ事は取り返しがつかないケースが多いものです。

まず自由さがなく、必ず収入や職務権限への不公平感が発生します。

合議制だとしても、決定事項は常に1つなので、言い分が違えばどちらかの意見が却下されます。

更に、最初は話し合いで何でも解決できますが、そのうちいろいろな出来事が積み重なる内に、確認や報告のない案件が発生して不信感が漂い始めます。

一度芽生えた不信感は、消えるどころか、どんどん心の中で膨らんでいきます。

そして、決定的な出来事が起こって、仲違いになるのです。

後日、身を引く決断をした後、元の親会社の経営者に挨拶に行きました。

すると、その経営者は

「〇〇君が、コンサルタント事務所経営なんてできる訳ないだろう」と激怒。

私からすれば、そう仕向けたのはその経営者です。だから

「それは◇◇社長が支援すればいいのでは?◇◇社長と〇〇君の思い通りに私が去る訳だから、それは私の関与外の事です」と。

しかし、今でもあの時、決断をしてよかったと思っています。

 

2,辞めた会社の客に手を出し、逆襲

これはコンサルファームや会計事務所に勤めていた方が、顧客をそのまま独立時に持ち去る事による失敗です。

コンサル業界はこれが結構多いものです。

私も完全独立時には、顧客がついてきてくれました。

当然、顧客には辞めることを伝え、本来なら担当は後任に引き継ぐのが正統です。

しかし、顧客から「あなたがしないのなら、契約はしない。独立してもあなたと契約する」とありがたいことを言われれば、それは仁義を切った上でのことだから仕方ありません。

契約継続を決めるのは顧客であり、コンサルではありません。

私の時も、私が出張中に私のクライアントに元の経営者が「嶋田の代わり、この◇◇(苗字)自らコンサルにきます」と強い営業を掛けたようです。

複数の顧客から

「嶋田さん、◇◇社長が来て、自分がやるから嶋田さんとは一旦切ってくれと。でも◇◇社長のようなえらい方が来なくても、嶋田さんで十分やってもらっているから遠慮します、と伝えました」と。

その後、◇◇社長は私のクライアントへの横やりはなくなりました。

しかし、これはこちらに力と実績があればこその話です。

もし、私にそこまでの力がなければ、元の会社は力づくでも奪いに来たでしょう。

まず独立するなら、顧客にも元の会社にも仁義を切って、正々堂々と営業を掛けましょう。

 

3,高学歴、高職歴の経験で食えると誤解

高学歴・高職歴の経験者が転職してコンサルタントになるケースも多いです。

これも今から30年前、私の部下として大手工作機械メーカーの主任技術者が転職をしてきました。

生産現場の改善に詳しいという触れ込みだったので、基本的なことを教えた後、即2社ほどの製造業の工場指導を担当してもらいました。

すると、半年もしないうちに、2社から同じようなクレームが発生。

要約すると

  • 横文字が多い
  • 直ぐ前職の大手企業の内容を持ちだす
  • 「そんなことも知らないのか」みたいな口調が多い
  • 指導が丁寧ではない
  • 指導結果を文字や図に残してくれない
  • できないと論理的にぐいぐい詰めてくるので息苦しい  等々

それで「彼を外して欲しい」又は「契約を見直したい」というクレームです。

彼にそのことを伝えると

  • 主観の問題であり、私はそんなつもりはない
  • レベルが低いから、いろいろ教えているのに、その言掛りはいかがかと。

また彼が6か月経っても受注(新規のコンサルティング契約)がないことを指導すると、

  • 営業する為にコンサルタント会社にはいったのではない
  • 営業を強要するなら、辞める

と、そこで辞めてもらいました。

入社時に「営業できないコンサルタントは一人前ではない」から、受注目標がある事は承知の上での入社でした。

最後まで、いわゆる「コンサルタント病」を持った方で、そんな方はどこかで価値観を変えない限り、コンサルタントとしては生きていけないでしょうね。

 

4,大手の経験が使えない中小企業

大手出身の転職組のコンサルタントが最初に悩むことが、

「指導しても、指示しても、宿題を出してもやってくれないからコンサルティングが進まない」

とこぼす方が多いです。

大企業で、レベルの高い、訓練された部下を使い、中間管理職経験があるコンサルタント転職組は特にそうです。

何故なら中小零細企業の経営者も幹部も、

「決まったことを決まったようにしない」ことが多いからです。

更に、マニュアルや規定があれば動く組織と、そんなものがあろうがなかろうが、「やりたい」と思えば動く中小零細企業の差です。

だから、大手企業の専門スキルや知識よりも、人を動かす人格やヒューマンスキルの方が中小零細企業では優先されるのです。

 

次回は「営業受注の失敗事例」を解説します。

 

 

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