嶋田利広ブログ

SWOT分析コンサルタント

「根拠ある経営改善計画書」の作成手順

SWOT分析、事業再構築、経営承継可視化コンサルタントの嶋田です。

 根拠ある経営改善計画書の作成手順.jpg

この前、継続指導している会計事務所のMAS業務技術研修で、「根拠ある経営改善計画書」の進め方を行いました。

経営改善計画書のフォームは最終的には金融機関指定のものに転載しますが、そもそもの「元ネタ」を作り込まないと「説得力のある内容」になりません。

では、どんな感じで経営改善計画書の元ネタを作るのでしょうか?

私達は次に紹介する7つの段階で経営改善計画書を作成しています。

1、中期で破局のシナリオを知る

現在の環境(商材別の過去3か年の平均加減率、原材料値上げ、外注費高騰、労務費上昇等)を入れ、それから老朽化した設備交換の減価償却費、既に盛り込み済みの各販売管理費増、変動予定の人件費などを入れて、今後3か年の収支計画を出してみます。

「破局のシナリオ」とは、その各種条件を入れた結果、今後更に悪くなるか、悪い状態の維持か、厳しい未来像を数値で出していくものです。

従って、商材別も顧客別も過去3か年の平均加減率で計算するので、毎年落ち続けている商品や顧客は、更に今後平均減少率を掛けて落していきます。

この「破局のシナリオ」では、希望的観測を排除してだすのがポイントです。

220404_破局のシナリオ.jpg

 

2、返済原資や必要キャッシュから「売上・粗利差額金額」の捻出

「破局のシナリオ」で3年後の経常利益の予想が出ます。

そして、金融機関への返済や今後の設備投資、人件費投資を考え「必要経常利益」を出します。

「破局のシナリオ」での予想経常利益と「必要経常利益」の差額が出ます。

簡単に言うと、固定費を削減しないなら、その差額が必要粗利額増加分だという事になります。

そして、それを平均粗利率で割れば「必要差額売上高」が算出されます。

ここで「粗利率の改善」の具体的な戦略が既にあれば、その分「必要売上」が少なくて済みますが、多くの中小零細企業では今の段階で「粗利改善」どころから「粗利率が更に悪化する」事実を盛り込んだが予想です。

 220404_必要差額売上粗利整理表.jpg

3、「売上・粗利差額金額」につながる商材中心のクロスSWOT分析

では「必要差額売上高」が決まったら、それに沿った

●商品開発

●顧客開拓

●顧客単価アップ商材

●売り方改革

●アイテムアップ

などの具体策を出す為に「クロスSWOT分析」を行います。

クロスSWOT分析は「強み」「機会」「弱み」「脅威」を整理し、その掛け算である「積極戦略」「致命傷回避撤退縮小戦略」「改善戦略」「差別化戦略」を出します。

この時、小さな「強み」をいろいろ出して、小さな「機会」も多方面からだし、「新たな商材の可能性」を複数出すことです。

「必要差額売上高」が大きいと、それだけ「商材の個数」が必要です。

しかし、社員数もリソースも限られている中小零細企業では、そんなにたくさんの商品や顧客戦略を一度に対応できません。

商品戦略、顧客戦略の優先順位を決めて、平行して「致命傷回避撤退縮小戦略」の「商品・顧客の絞り込み」とコスト削減又は、収益構造を根本から変える構造改革を同時進行する事も求められます。

会計事務所で「根拠ある経営改善計画書」指導をすると、この「クロスSWOT分析」による商材開発が一番弱いことが分かります。

その為、この部分に時間をたくさんとって研修をしているのです。

下記のクロスSWOT分析のフレームは「経営改善計画書用クロスSWOT分析」として各種戦略の誘導をしやすくしたフレームです。

220405_新クロスSWOT分析戦略誘導ヒント付き.jpg

4、3か年、5か年経営改善方針、具体的な商材対策体系図

クロスSWOT分析で「商品」「顧客」「組織」「コスト」の4つの方向性が出ます。

それを整理するのが体系図です。昔の「実抜体系図」です。

商品」なら、新商品開発、既存商品リニュアル、既存商品の付加価値づくりと価格アップ、既存商品の取捨選択などが対策として整理されます。

「顧客」なら、新規口座開拓、新販売チャネル開拓、紹介ルート開発、外部機関との業務提携、既存顧客の付加価値、アフターサービス、既存顧客の取捨選択などが対策になります。

「組織」では、体制の変更、人員削減、役割見直し、人事評価や賃金の見直し、非正規雇用の比重向上、ITなどの活用方針がここにはいります。

「コスト」では、できる範囲の販管費や原価の合理化の方向性を出します。

先ほども言ったように「経営改善期なのに、原価や人件費が上がる時代」です。

現実的に不可能なコスト削減を計算し、「必要差額売上高」を少なくしても実行できません。

その当たりを考えると、「コスト削減」は限られた対策になります。

 220404_基本方針体系図.jpg

5、5か年具体策連動収支計画表作成

このクロスSWOT分析や体系図に書かれた内容の「商品戦略」「顧客戦略」「価格戦略」「組織・コスト対策」の中身とそれが反映した売上粗利、そしてそれを行う場合の販管費を入れた5か年具体策連動収支計画表を作ります。

「具体策連動収支計画表」とは、左に収支予定、右にその根拠対策が固有名詞で金額も入れて記載します。

ここでは収支計画と右の「根拠戦略」の辻褄を合わせることが肝要です。

 220404_5か年具体策連動収支計画表.jpg

 

6、実行具体策の中期ロードマップ

3か年、5か年で経営改善を図る場合、収益改善に伴う経営戦略を実施するには段階が必要です。

例えば初年度はここまで、2年目にはここまで、3年目にはここまでやるから、収益改善が見込めるというロードマップ(工程表)です。

このロードマップは金融機関向けだけでなく、自社の組織や方向性、社員に我慢を強いる場合、重点方針を理解させるためにも必須です。

220404_中期ロードマップ.jpg

7.単年度アクションプランモニタリング表

中期ロードマップの初年度をより具体的に誰がいつ、何をどうする、どの会議で報告するかを明確に記載し、モニタリングでチェックできるようにしたのがアクションプランです。

そしてモニタリングの時、当然修正が発生するのでその修正計画を加筆修正します。

220404_アクションプラン.jpg

 

4月19日の第4回RE嶋田塾では「根拠ある経営改善計画書」の実例を解説します。

このフレームに書いている意味が分かれば、金融機関所定のフォーマットへの転載はかなり容易になります。

 

 

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