事業承継とSWOT分析は同時進行が良い
私のクライアントには5~20年の経営顧問として研修やコンサルティングをしている会計事務所が6事務所あります。その事務所の先生たちに聞くと「最近、相続相談が増えている」という事です。これは相続税の改正で今まで非課税だった人たちが有税になる可能性がある事から増えているようです。
しかし、それと合わせて事業承継の相談も増えているようです。経営者の高齢化に伴い後継者(主に身内)にバトンタッチをする為に、株式の相続や資産の承継などで計画を組むわけです。
1、大事な事は承継後に「勝てる戦略」があるかどうか
承継したは良いが、後継者の代になって潰れてしまっては元も子もありません。そこで私たちは事業承継のタイミングや準備に入った経営者に対して、後継者も交えた「SWOT分析を使った中期ビジョンづくり」を推奨しています。この目的は現経営者と後継者が同じベクトルで経営判断ができる為の教育であり、後継者が考える自分の代での「勝てる戦略」を見出し、現経営者がそれを理解し、支援してもらう為の議論です。
現経営者の時代に収益を生んでくれた戦略がじり貧になっているとしたら、後継者の時代には「新たな戦略」を考えなくてはなりません。その戦略判断にはSWOT分析手法が効果的です。SWOT分析で生まれた戦略を、事業承継計画に費用面、投資面に入れていきます。すると、新たな戦略を入れる前の一般的な事業承継計画の中身が大きく変わる事があります。
借入も返済中心の長期計画だったものが、投資をする事で、新たな借り入れ計画が発生する場合もあります。その結果、経営者退職金の額面も変わり、現経営者の引退時期も変わるかもしれません。事業承継は相続や資産の承継以上に、眼には見えないけど「戦略の承継」が実は一番大事なんですね。
2、コンサルタントが支援する長期禅譲カレンダー
禅譲とは、位の高い人が、後継者へ権限を譲る事を言います。私は経営者が後継者へバトンタッチする事は「禅譲」に値する重要な事だと思い、この言葉を使います。長期禅譲カレンダーとは、一般的な事業承継計画に、固有戦略や投資、それに伴う新たな財務計画を含んだものを指します。
一般的な事業承継計画とは、
「現経営者・後継者の年齢」と「役職」
「売上計画」…根拠はないが経営者退職金や必要経費と必要利益から捻出される
「定款・株式の異動」「持ち株」「相続資金準備」等々
主に財務を中心とした計画です。
これに対して「長期禅譲カレンダー」には、以下の項目が追加されます。
「年度別新戦略実施時期と準備対策」
「今後の設備投資予定と借入金」
「経費増加分と減額分 年度別対策」
「株式一元化スケジュール」
「後継者時代の内閣組織計画」
「代表者勘定整理スケジュール」
このように、普通に事業承継計画は必要売上と必要利益さえあれば、計画はできますが、その必要売上と必要利益を出す為に戦略や対策が先に議論され、それに沿った資金政策になるのが、「長期禅譲カレンダー」です。
3、事業承継計画こそコンサルタントが出しゃばる案件
一般的に事業承継計画の話になると、税理士さんに相談となります。しかし、コンサルタントは戦略という視点でしっかり、クライアントに提案して欲しいですね。普通の税理士先生は、固有戦略分析の知識も経験もありません(最近はSWOT分析を学習する会計事務所も増えてますが)後継者にしても、戦略と関連しない将来的な投資計画抜きにした資金計画だけでは、「勝てる事業承継」のイメージが沸かないはずです。
SWOT分析を使った中期ビジョンを先に議論し、それに沿った中期損益計画を考えます。その中期損益をベースに資金計画が組まれるはずです。但し、中期ビジョンの中でイチかバチかの大型投資は、慎重を期する必要があります。ここでいう戦略とは、ニッチ市場やニッチカテゴリー」で勝てる戦略ですから、思い切った事業モデルの転換などの議論と事業承継計画を絡めるとかなり難しくなりますね。
事業承継計画時に、戦略立案でコンサルタントが活躍すべきです。そしてコンサルタントとして、現経営者と後継者の橋渡し機能を持ち、経営顧問としてしっかりモニタリングして欲しいものです。
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