ローカルベンチマークで非財務項目のスキルを上げる

経済産業省が推進する「ローカルベンチマーク」が脚光を浴びています。今後ますます、融資の際に「事業性評価」に比重を置くなら、経営計画書も決算書だけから作成したものや、数値だけで具体策の乏しいものでは、融資が厳しくなる可能性があるという事です。特に金融機関は、そういう指導が求められています。このローカルベンチマーク(通称ロカベン)は、財務分析と非財務分析に分かれ、特に非財務分析に注力しています。非財務分析とは、数値だけでは見えない「経営戦略」「企業の強み」「ビジネスモデル」などを、具体的に検討するようにしています。

1、非財務分析での4つの視点の記載する項目

 ローカルベンチマークの非財務分析の中身は、大きく「経営者」「事業」「企業を取り巻く環境・関係者」「内部管理体制」という4つの目次から、下記の項目を書くようになっています。

  1. 経営理念・ビジョン
  2. 経営哲学・考え・方針等
  3. 経営意欲※成長志向・現状維持など
  4. 後継者の有無
  5. 後継者の育成状況
  6. 承継のタイミング・関係
  7. 企業及び事業沿革※ターニングポイントの把握
  8. 強み(技術力・販売力等)
  9. 弱み(技術力・販売力等)
  10. ITに関する投資、活用の状況
  11. 1時間当たり付加価値(生産性)
  12. 向上に向けた取り組み
  13. 市場動向・規模・シェアの把握
  14. 競合他社との比較
  15. 顧客リピート率・新規開拓率
  16. 主な取引先企業の推移
  17. 顧客からのフィードバックの有無
  18. 従業員定着率
  19. 勤続年数・平均給与
  20. 取引金融機関数・推移
  21. メインバンクとの関係
  22. 組織体制
  23. 品質管理・情報管理体制
  24. 事業計画・経営計画の有無
  25. 従業員との共有状況
  26. 社内会議の実施状況
  27. 研究開発・商品開発の体制
  28. 知的財産権の保有・活用状況
  29. 人材育成の取り組み状況
  30. 人材育成の仕組み

それぞれ、書き方の類例も掲載されていますが、これらに対して、どんな質問をするかによって、相手の答え方が変わってくるわけです。

2、非財務分析のヒアリングは質問と再質問、再々質問次第

30の質問を上から順番にしていくとします。果たして、日頃からそういう思考に慣れていない、中小零細企業の経営者は上手く、具体的に答えられるでしょうか?答えられる方なら、日頃から経営計画も、非財務項目も具体的かつ戦略的な表現になっているはずです。問題は、頭の中にはあるが、それを上手に表現できない経営者に対して、どんな質問、どんな再質問が具体的にできるかがカギになります。例えば、経営者に「3.経営意欲」を質問したとします。藪から棒に「社長は経営意欲がありますか?」なんて、質問すれば、「いや、責任があるからやっているけど、そこまで意欲はないかも」って答えたとします。そう答えたら、どう再質問をしますか?

「あー、そうですか。なんか意欲を感じる事ってないですか?」みたいにつまらない、押し問答を繰り返すと、相手がそのうち「君は何が言いたいんだ」とお叱りを受けるかもしれません。しかし、「3の経営意欲」について聴くことを、「社長は、いくらの役員報酬が欲しいですか」と聞けば、それなりの答えが返ってきます。そして「その役員報酬をもらうには、最低いくらの利益が必要ですか?」すると売上…、その売上をするためには、何をどれくらい売りますか・・・とつながっていきます。

要は相手がイメージしやすい質問ができるかどうかでヒアリングが決まる訳です。

3、SWOT分析をすれば、「外部環境」と「強み」から具体策を出せる

このロカベンの非財務分析には、簡単に答えられない項目が複数あります。その中でも「強み」」「弱み」「市場動向」「競合他社」「主な取引先推移」「顧客からのフィードバック有無」は、まさにSWOT分析で詳細に詰める項目と類似します。特に「市場動向」では、「これからこの分野が伸びる」という、マクロ的な事目指してはいけません。マクロで気づく事は大手もライバルもやっている事です。それより「ニッチ市場の探索」に力点を置きます。ニッチ市場は、特定顧客が求める特定ニーズに対応できる商品、サービスを意味します。そして「強み」とは、その「ニッチ市場」に使える体制、技術、サービス、ノウハウなどが選択されます。

4、で、結局30のヒアリングをして何をするのか?

最終的に「現状認識」「将来目標」そして、「課題」と「対応策」という欄に記入するようになっています。しかし、30の質問を色々聞いて、課題を絞り込むのはなかなか難しいはずです。これはロカベンであろうが、早期経営改善計画であれ、企業の将来を決めるのは「商品戦略」「顧客戦略」「価格戦略」そして、それらを実行するための「組織戦略」しかありません。これらの各種戦略を固有名詞で、決める事で初めて、目標と言えるのです。だから、現認、目標、課題、対応策は、

  1. ニッチで攻める商品・サービス名と特徴
  2. ニッチターゲットの顧客属性名又は地域、
  3. 狙う価格帯と差別化した売り方SPの中身
  4. 実行するための部署や体制、担当名、外注の使い方

などが具体的に表記されなければ、その後のアクションプランにつながりません。

5、アクションプランがないと実行ができない

ロカベンの指定書式には、アクションプランの欄がありません。アクションプランとは、非財務分析の結果、課題と対策を実行するには、アクションプランが不可欠です。アクションプランとは、いくつかの対策を一つずつ、その行動プロセスを決めて、それぞれに担当、期限を設けるものです。

ここで一番大事なことは、具体策を分解してプロセス別に担当、期限を決める事です。多くの中小零細企業の計画が進まないのは、「大きな目標・方針」だけあって、その第一歩の詳細な行動プランがない事で、最初の一歩が踏み出せないからです。

 ロカベンを使いこなすには、非財務分析の箇所をいかに具体的に落とし込むスキルがあるかどうかで決まると言えます。私たちが「実践SWOT分析」を展開していますが、まさにこの非財務分析の具体化に直結するノウハウだと言えるのです。

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