コンサルタントの診断チェックリストの功罪

企業診断、経営診断といえば、部門ごとのチェックリストに沿ってヒアリングし、改善箇所を指摘します。そして、改善の設計図をコンサルタントや診断士が作成して、それに沿って経営指導するパターンです。診断での肝は「チェックリスト」です。言い換えれば、チェックリスト項目に対して、実際はどうかで判断しているとという事です。

もし、そのチェックリストがその企業規模、業種、経営の実態に合っていない場合、コンサルタントや診断士の経験や感覚で修正していくのでしょう。問題はそのチェックリスト通りヒアリングすれば、その企業の実態と本当の改善策が分かるのか、という事です。

1、チェックリストは表面的な項目でできている

部門別、機能別の診断チェックリストは数十項目に渡ってチェックすべき項目を指定しています。但し、いろいろな企業に対応させる為、どうしても総花的な質問になりがちです。それ以降の深掘りは、コンサルタントや診断士の感性や経験に掛かっています。だから、感性と経験のないコンサルタントはチェックリスト通りの通り一遍に聞き込んで、その結果を「現状認識」だと思っているのです。だから、チェックリスト中心の現状認識は、中身が乏しくなりがちです。

2、企業の現状認識に必要な「Why」

チェックリストのヒアリングでも、「Why」を何回も追及するコンサルタントは実態を把握しやすく、適切な処方箋を出せます。「Why」を繰り返すことは、実情の原因と真因を聴きだすことです。表面化した問題やできていない事の原因は各社各様です。チェックリストヒアリングから導き出された必要な改善策は同じでも、「Why」を徹底した場合、入り口や段取りが変わってきます。つまり、現実の課題解決に近いアクションプランになりやすいという事です。だから「Why」をインタビューで、掘り下げないコンサルタントや診断士は、おそらく実際の経営指導の場面で苦戦し、長期継続契約にならないケースが多くなります。

3、最初から答えありきの企業診断報告書

「Why」の掘り下げから生まれた「改善策」とその実現に相応しい段取りは、本来は企業固有であり、千差万別のはずです。しかし、経営改善の処方箋は、機能別、部門別でもそう多くの選択肢があるわけではありません。経営の本質と言うべきか、企業規模と業種は意識しても、「改善の具体策」は似たり寄ったりになってしまいます。ひどい場合は高額な経営診断を請け負っているのに、どこかの会社のコピペで全体の50~70%ができているケースもあります(ある大手コンサル会社の元社員からの告白)

どんなにパターン化された「改善の具体策」でも、クライアントの実態と原因、状況を鑑みて、そのクライアント固有の段取りを踏む「改善の具体策」なら、良いと思います。しかし、「Why」のヒアリングがない場合は、そのようにはなりません。

4、多くの案件を抱えるコンサル会社のコンサルタントの「手抜き」

中途半端なヒアリングと深掘り不足、クライアント固有の段取りを考えない「企業診断報告書」の作成は、コンサルタント本人のスキルアップにはなりません。いかに多くの案件を抱え、忙しいからといって、大事なところ、オリジナルが必要な箇所までコピペが横行するような仕事をしていては、必ずクレームかコンプレインの温床になります。

昔、私もコンサルティングファーム時代に、たくさんの案件と経営顧問を抱え、さらに業績と部下の案件獲得の為受注活動を行っていました。当然、時間がありません。今のように「働き方改革」が言われる前の時代ですから、残業、休日出勤当たり前。それでもこなせない量の仕事をしていました。そんな状況ではヒアリングの深掘り、仮説検証に伴う再ヒアリングなどの時間が取れず、簡単に仕上げたことはあります。今思うと、本当に申し訳ない気持ちです。

だから、その反省から独立後は徹底したヒアリングを意識して仕事をしてきました。

5、チェックリストに依存しない現状認識が必要

チェックリストはこれまでの多くの経験から生まれた実績のたまものです。だから今後も企業診断では相応の位置づけであり続けるでしょう。但し、それだけに依存しない「現状認識ツール」が必要です。しかも、コンサルタントの経験則や勘、感性からの指導ではなく、もっとロジカルな手法です。私の経験から導き出された現状認識ツールは、「SWOT分析」と「業務フローチャート」の作成でした。

この2つの手法を使えば、マーケティング対策と内部改善がほぼ、クライアントの実態通りに進められるので結果も出しやすいです。

SWOT分析と業務フローチャートについては、別項でご紹介します。

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