嶋田利広ブログ

中小企業のコンサルティング

ニーズはあるが、M&Aが上手くいかない本当の理由

SWOT分析、事業再構築、経営承継可視化コンサルタントの嶋田です。

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今回のコロナショックでスモールM&A市場を狙って各業界は活発に動いているようです。

「先行きの見えない中、これ以上頑張ってもいい事はない、だったら今のうちに経営を代わってもらおう」 と考えている経営者も多いのでしょう。

それも後継者がいない中なら尚更です。

しかし、M&Aはしたが何とも不完全燃焼だったり、組織が不安定になったりと、当初の思いとは異なる場合も多いようです。

それは、M&Aが成功するかどうかのカギになるその後のPMIに問題もあるようです。

PMI(ポストマージャーインテグレーション)とは、M&A後の統合効果を最大限に出す統合プロセス計画という意味です。

ネットで見るとその段階は「経営統合」「業務統合」「意識統合」の3段階からなっているようです。

そしてそれをコンサルティングする企業の進め方を見ると、何ともチマチマした時間の掛かる方法を取っている所も多いようです。

私たちが過去経験したM&A(買収側の経営顧問として数社経験)では、

●スピードを持った経営判断

●経営者(後継者)の陣頭指揮と常駐による覚悟

●共通の経営戦略、共通ビジョン

●適切な組織・人事配置の断行

をしてきました。 その経験から現実的なPMIの進め方(どんなアウトプットがあればスムーズにいくか)について数回にわたってご紹介します。

1、スモールM&Aで効果が出ない理由(1)「M&A後の経営戦略が曖昧」

元来M&Aの目的は帝国データバンクの分類では大きく4つあるといわれています。

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こういう目的は明確でも、その目的に沿った目標や経営戦略が概念的、理念的だと「重点集中の意識や行動」が組織的に浸透しません

その結果、譲渡した側の不信感が出たり、譲受側の被害者意識がでたりします。

譲渡側も譲受側もしっかりと経営資源を分析し、明確な目標と経営戦略、そしてアクションプランを決めない場合、成果が出にくいのは当たり前でしょう。

無論、「M&A後の経営戦略を考えてM&Aの意思決定をした」はずですが、財務デューデリジェンスによる買収価格などの時間を取られ、譲渡側の経営資源分析を深くしてない場合があります。

M&A後の経営戦略の整合性、具体性、効果性を当初にしっかりしないと、後からどんどん矛盾や把握不足から誤解曲解が生まれやすくなります。

 

2、スモールM&Aで効果が出ない理由(2)「時間がかかる意思決定」

企業規模が大きい場合、また複数部門が絡み意思決定が遅いとだんだん集中力が消えていく傾向があります。

意思決定は原則TOPダウンで行うのが「スモールM&A」の原則です。

しかし担当役員が責任者の場合、TOPとの意見の整合性や関係部門との調整に手間取ったりします。

更にM&A仲介会社やPMIコンサルタントに依存した推進で、意思決定が更に送れるケースもあります。

統合効果に時間がかかれば、経営者同士は信頼感があっても、譲渡側、譲受側の幹部社員には不信感が出てきます。

各種対策の意思決定に時間がかかる最大に理由は、戦略マップやアクションプランを「見える化」してないからです。

ブループリント(青写真)と担当、日程入りのアクションプランとモニタリングは欠かせません。

 

3、スモールM&Aで効果が出ない理由(3)「企業風土の統合ができない」

これは「意識の統合」という一番難しい課題です。

元々生き方も文化も違う企業が結婚する訳ですから、風土が一致するはずがありません。

中には風土統一の為に飲み会やイベント、交流の場を積極的に行う企業もあります。

それは悪い事ではありませんが、仕事や生産性の交流のない、フワーッとしたイベントを何回しても名前を覚える位で、仕事としての信頼感の醸成にはつながりません。

また多くのPMIコンサルタントは経営理念の統合として、CI(コーポレートアイデンティティー)の提案や価値観共有の合宿研修などを提案します(今はコロナの影響でもそれもできませんが)

これも悪い事ではありませんが、昔から「仕事の報酬は仕事」と言われるように「具体的な共通の成果目標を持った仕事」をする過程で価値観の共有や相手へのインスパイア、誤解の解消などが生まれてくるものです。

だから、下手な風土交流をするより早く「共通戦略に沿った共通行動で、共通成果を出す」ことに当初はエネルギーを使うべきです。

 

4、スモールM&Aで効果が出ない理由(4)「処遇の統一ができない」

ここは最後までやらないか、当面眼を瞑る事が多い分野です。

給与制度や処遇や評価制度やキャリアプランとも関連してきます。

人事コンサルタントはこの部分の重要性を殊更強く言いますが、私たちの経験では、こういう即生産性に影響しない箇所や下手に触る事で不平不満の温床になりかねない箇所に、先にエネルギーを使う事が良いとは思えません。

特に賃金制度は当面「1社2制度」でもよいと割り切り、比較的導入しやすいMBO(目標管理制度)、人事評価項目の統一性位に抑えるのが妥当だと思います。

何故ならスモールM&Aであり、譲渡側の社員が数百名もいるような規模ではないからです。

これは中期統合計画の中で行えばよい事です。

 

5、スモールM&Aで効果が出ない理由(5)「推進する人材・組織の不足」

もともとスモールM&Aを行う規模ですから、そういう部門や専門人材がいるはずがありません。

当然TOPが通常業務をしながらPMIを進めるカタチになります。

しかし、それでなくても本業で忙しいTOPが自社だけでなくPMIまで管理するのはなかなか難しいものです。

どんなに計画を立てても実際に行動するのも、小さなことの意思決定もTOPに集中します。

その結果漏れや根回しが抜けたり、そういう小さなことが後々不信感の原因にもなります。

そこでPMIコンサルタントなどを活用し、プロセスのPDCAを随時回していく事が必要です。

「スモールM&A」には「スモールPMI」をいかに具体的に推進するか、それもTOPだけで行わず適切な信頼できる第3者をコーディネーターとして入れる事が必要かもしれません。

 

次回は、スモールM&Aでの「経営戦略の統合」「シナジーSWOT分析」についた解説します。

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