病院施設の問題職員にリーダーはどう対処すべきか
どこの職場にも「問題部下」はいるものです。私も、32年間の経営コンサルタントの経験の中で、コンサルティングファームにいた15年間 に多くの個性的な部下や問題部下を配下にしてマネジメントをしてきました。そして、その後の19年間、コンサルタント会社の経営者として、また病院や介護施設に幹部 教育、職員教育を行う過程で、いろいろな問題部下や問題職員を見ています。一般企業でも、病院、介護施設でも、「問題部下」に対するマネジメントは大きくは変わりません。ただ問題部下と一口に言っても、様々なパターンがありますが、問題部下に向かう管理者 としての基本姿勢がなければ、テクニカルなマネジメントで解決はしません。
「問題部下」に向き合う管理者としての基本姿勢とは、下記の6点を提唱しています。
- 問題部下を職務権限で強圧的に指導しても、根本解決にならない
- 問題部下を育成する為に管理者だけで悩まず、他のスタッフの協力を貰う
- 問題部下の行為を妥協せず、「辞めても構わない姿勢」で厳しく、ケジメを付けさせる
- 問題部下には、問題行為の事実を教え、何が悪いか、その理由を明確に指導する
- 問題部下には、その問題行為を起こす原因を何回も聞き出し対策も本人に考えさせる マネジメントを行う
- 問題部下を育成するのは「人間研修の機会」を貰ったと前向きに捉える
この6点をベースにおいて、「問題部下別の対応法」を紹介したいと思います。基本的には「問題職員を放置しない」という事です。管理者の中には、問題職員と向き合いことが面倒臭いとか、無関心で突き放した態度をとる人も いますが、それは「問題職員の問題の幅」を広げる事になります。パターン別の対応法を紹介します。
問題部下別の対応法
いちいち細かい指示がないと仕事ができない部下
もし、その部下の経験や知識、意欲、資質から、考える能力や経験がない場合、詳細な指示が 常に必要です。また、レベルが低い部下の場合「そんな事位自分で考えろ」と突き放してはいけません。もともと 考える能力がないのですから、毎回答えを教える覚悟が必要となります。しかし、多少の経験があるのに、イチイチ聞いてくる部下には、「君はどうしたいんだ」「次に何を したらいいと思うか」を質問し、部下に答えさせ、考えさせる教育を行うように仕向けます。
分からない事を聞いてこない部下
この手の職員には、聞いてこない理由を把握する必要があります。「聞きにくいのか」「何を聞いていいか分からないのか」それによって管理者側のあり方も変わっ てきます。先ずは面談で分かっているという前提でいろいろ質問し、把握度を確かめてみます。そして、管理者の質問に答えられない場合は、「何を聞いていいのか分からない」レベルなので、 一つ一つ把握度を確認しながら、詳細な指示を出す事が必要になります。
常識知らずで、とんでもないことをしでかす部下
中には、思いもかけない異常行動に出る部下がいます。しかし立腹して「そんな事位常識で分かるだろう」と感情的にならないようにしなければなりません。一つ一つの常識知らずの行為に対して「どうして、そんな事をしたのか」を深く何回も聞き出す事 から始めます。異常行動の原因が分かれば、指導方法も判断できます。その後、その常識知らずの行為が「何故、いけないのか」を論理的に説明します。しかし、ここで終わってはいけません。本当に理解したのかどうかを確認します。最後に、「次に●●のケースが起こったらどうするか」と理解度を確認する質問をして、本当に分 かったのか確認をします。それで、また変な回答をするようなら、再発可能性が高いので、もっと丁寧に相手の真意を聞き 出し、再説明が必要でしょう。
いくら注意しても何度も同じ失敗を繰り返す部下
こういう職員は、注意した時「はい、分かりました」と軽く返事をします。しかし、そこで許さないようにします。「何が、【はい】なのか、何が分かったのか、具体的に言いなさい」と、返事に対してしつこく聞く 事です。また、「今回の間違いは、何が原因だったか」「前回の間違いと共通しているところは何か」「自分自身の問題が分かるか」と、トコトン何故を繰り返す(相手が黙っていたら、答えるまで 待ち、次の質問はしない)。そして、真剣に答えているなら、次に 「その間違いを再発させない為に、私や先輩は君に何をすればいいか」と、本人のミスを チームでかばう為の対策を考えさせます(失敗をただ謝って、その場を切り抜けようとしても、許さ ない姿勢を出す)。本人の不注意が他人に具体的に迷惑を掛けている事実を考えさせ、本人に、他のメンバーがす るべき対策を考えさせるのです。
自分だけで仕事を抱えてしまい、結果的に周囲に迷惑をかける部下
本人は一生懸命にやっているつもりだから、単に責めるだけではやりがい低下にもなるだけに、 一工夫が必要です。管理者が、部下に仕事を振る時、他のスタッフにも「この部下にはこんな仕事をさせている」 と情報公開する事を心がけましょう。情報公開する事で管理者のチェックがなくても、他のスタッフからその職員がチェックされる場合 があります。 「仕事の見える化」を進める(時間のかかる仕事なら先にチェックリストやスケジュールをホワイト ボード等に書かせ、進捗状況が分かるようにする)事で、抱え込んでいる職員は誰か、何を抱え 込んでいるかを第3者の目に公開し、チームで助け合うマネジメントをする事です。
何を考えているのかつかみどころのない部下
何を聞いても自分から話さず、質問しても明確な返事が返ってこない部下はつかみ どころがありません。そんな部下に多い特徴は、「いきなり質問されて答えられない」と 言うタイプです。どんな人間でも自分の意思は持っているので、言葉で言えない場合は、具体的に 質問形式のレポートでも書かせ、その内容について質問をする方法を徹底してはどう でしょうか。
職場・チームより、まず自分優先で協調性のない部下
先ず管理者が部下に求める協調性が理にかなっているかを確認しましょう。場の空気を読むとか、「みんながやっているんだから、君の業務じゃないけど 協力しなさい」等の浪花節的な協調性は強制すべきではありません。また、自分優先で協調性のない場合でもやるべきことをしっかりやった上なら、「君の協力があれば、 皆も助かるから、協力してくれないか」と、自尊心をくすぐりながら、協調性を出すよう指導します。しかし、自分の仕事も中途半端なのに自己中心的な態度なら、厳しく指導しなければなりません。業務の指示で期限があるのに、その期限の約束より、自分のプライベートを優先し、他のスタッフに 迷惑を掛けるようなら、「誰が、いかに迷惑を受けたか」を説明し、本人に謝罪させる位の厳しさで臨む べきでしょう。
指示されたことしかやらず、気配りがない為、漏れが多い部下
こういう部下には、指示した時に、どういう配慮まですべきか、具体的な指示をしたかを先ず管理者が 自己反省する必要があります。もし部下に気配りが足りないのは、 「経験してない為か」 「頭がそこまで回らないのか」「経験していても意識が浅いのか」に分かれます。どのケースも指示した時に、可能な限り、考えられる配慮を詳細に言うべきです。同じような事を何回も経験しているなら、「こういう場合はどうした方がいいと思う?」と、指示時に 多面的な質問をして考えさせるようにしましょう。
仕事の報告、連絡、相談を怠る部下
しかし、一方的に事情も聴かずにいきなり報告連絡相談の漏れを責めてはいけません。「何故、報告をしなかったのか」「これからは、どうしたら漏れなく報告連絡ができるか」を部下に考え させる作業が先になります。そして、部下が「メモしておきました」「メールで送りました」と言って、口頭報告を怠る場合、明確に 「メールだけでなく、詳細な状況を知りたいから、必ず口頭報告をするように」と厳命しなければなりません。
自分の仕事の管理さえできない部下
散らかったデスクや現場、仕事も整理整頓されてない部下は、自分の仕事なのに漏れ・ロスがあり、 他人に迷惑を掛けることが多くなります。正直、面倒臭いが「部下の仕事管理」がある程度できるようになるまで、管理者が意識して個人チェック をさせるしかありません。「仕事の見える化」を進め、今週の業務計画、今日の業務を書かせるか、そういうソフト(アプリ等)を使い、 都度管理者に報告を義務付けるようにもっていきます。
問題部下は管理者にとってストレスの元かもしれませんが、そこの少しでも変化と改善が見られれば、 管理者のマネジメントの成功例にもなります。飽きずに懲りずに頑張っていきましょう。
職場ミーティングで発言のない部下
但し、この場合その職員ばかり責めるわけにはいきません。管理者サイドが『発言しやすい環境』を整えているかが重要です。
例えば、「部下の返答や発言を否定したり茶化したりしていないか」「部下が答えやすい質問を投げかけるように意識しているか」「答えなければならないように指名しているか」「発言するまで待っているか」 「発言しないと会議が進まない事で迷惑を掛けている事を理解させているか」
管理者がブレーンストーミング手法を学習する事も必要かもしれません。管理者のスタンスとしては、「発言しない職員が問題なのではなく、発言を促せない管理者のスキルと姿勢に問題がある」と認識した方が改善の糸口はつかめそうです。
聴いているふりで、人の話を真剣に聞こうとしない部下
指示した事を上の空で聞いているのか、後から「あれ、なんでしたっけ」のように聞き返す部下がたまにいます。この手の部下への一番の指導方法は、指示時に復唱させる習慣を作る事です。「復唱してご覧」「○○の場合、どうするんだったかな?」等と、その場で確認してみましょう。更に、「今のメモに書いて」とメモを義務付け、更に「今書いたメモを見せて」と書いた内容をチェックしてみます。ここまですると、この手の部下も学習して、適当な態度は取れなくなります。
やりかけの仕事の途中でも平気で退社したり、段取りもせずに休日を取る部下
仕事も途中なのに「お先に失礼します」と勝手に退社している事が多い部下には、「業務時間中に何故、仕事が終わらないのか」の理由を真剣に考えさせなければなりません。「やりかけの仕事のまま退社した結果、どんなに周囲が迷惑したか、段取りがどう狂ったか」を説明し、「そういう事をしたことについて、君はどう思うか」と、迷惑を被った相手の立場にたって考えさせます。段取りもせずに休日を取り、残ったスタッフが迷惑を受けた事も事実を話し、そのスタッフを呼んで、その人の前で謝らせる事も必要です。具体的に周囲に迷惑を掛けた以上は、とにかくケジメをつけさせる事が大事です。
職場内会議や集まりにいつも遅れてくる部下
何回注意しても会議に遅れる部下は、その会議の重要性の認識が低いという事です。どこかのタイミングで「その部下が参加するまで皆待って、到着したら始める」と言う事も必要かもしれません。(「○君が到着したから、今から始めよう。時間単価にして何万円のロスだ」等と真剣に迷惑な事を知らしめる)会議の進め方や決定事項の出し方を見直す事も同時にしてみましょう。(会議を重要視していないのは、中身の問題かも知れない。単なる報告会だけや、管理者の独演会なら、遅れても構わないと思う心情は働きやすい)
他人とチームを組ませるとトラブルを起こす部下
他人と組ませてペアやチームで仕事をさせると、いつも仲間からクレームが出て、「もうあの人とは組みたくありません」と懇願される場合があります。自己中心的な業務をするトラブル部下から迷惑を被ったスタッフからの悲鳴が、そこにはあります。放置すればまともなスタッフが精神的に参ってしまい、単独プレイヤーにさせれば本人が楽をするだけであり、業務配分が難しいパターンです。複数のスタッフから上がったクレームを事実として伝え、「どうして、そんな声が複数から上がると思うか」「君の反省点は何か」と具体的に自己反省をさせてみましょう。もしかしたら、本人はそんな思われ方をされている事を知らない場合もあります。また、その本人の思いもしっかり聴かないといけませんが、こういうケースの場合、自分の非をなかなか認めない事が多いようです。管理者は事実を積み上げて、論理的にトラブル部下の改善ができるように、本人にも考えさせるようにしましょう。
いつの世も、どの職場も人間が働く組織では、トラブル人材はいるものです。しかし、管理者がそのトラブルから目を背けて、放置したり、できる職員とだけ物事を進めると、必ず後からしっぺ返しが来ます。粛々と必要なマネジメントに取組み、管理者だけが奮闘するのではなく、他の職員も巻き込んで、問題部下へ対処する事が今、求められています。
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