服務規律の効果を高める
就業規則の中に服務規律を挿入している病院・介護施設は多いと思います。問題はその服務規律がしっかり守られているかです。ある介護施設で、賞罰委員会が開かれ、賞罰を決める際の、問題を起こした職員の上司と、施設長との会話です。
施設長「この件は、服務規律に書いているから、Aさん(規律違反の職員)
は知っていたうえでの、違反ですか」
上司 「はい、服務規律は読んでいるし、知っています。」
施設長「だったら、あまり情状酌量の余地がないから、けん責処分をしな
いといけませんね」
上司 「そうなですが、今の服務規律は抽象的な表現になっていて、Aさん
が行った事が服務規律違反だと認識してなかったのではと思います」
上司 「現場からは もっと何をしてら悪いのか、具体的なケースを示して
欲しいと、要望も出ています」
上司 「今の服務規律のまま、けん責処分を実施すれば、職員に不満とわだかまり
ができそうで心配です」
施設長「要は、今の服務規律では、職員には分からないという事ですね」
これはその一幕です。
多くの病院・施設では、服務規律が概念的な表現になっている所が多いようです。表現が抽象的だと、職員からすると、「どこまでならOK、どこからアウト」なのかが分かりません。また、表現が白黒はっきりせず、どうとでも取れるグレーな表現なら、賞罰の判断を下す経営管理者が非難される可能性もあります。
1、「やってはならない事」のみを服務規律にする
服務規律は、全人格的な模範者を求める内容にすると、どうしても総花的な表現になります。そこで、先ずは「やってはならない事」のみ、文書化します。「やってはならない事」とは、過去のクレーム、トラブルにそのヒントが満載です。10年からの事故報告書やインシデントレポート、ヒヤリハットなどから、今後もありうる事をピックアップします。
2、カテゴリー分け
ダラダラ列挙しても分かりづらいので、過去のアクシデントレポート、インシデントレポート、ヒヤリハットから、下記のカテゴリー別に分類します。
- 患者・利用者に対してやってはならない事
- 患者・利用者家族に対してやってはならない事
- チーム仲間・人間関係上やってはならない事
- 組織で働く上でやってはならない事
- 外部業者に対してやってはならない事
- 品質管理上、やってはならない事
- 自己勝手な判断でやってはならない事
- コンプライアンス違反でやってはならない事
こんなカテゴリー別に、過去に起こった出来事から、必要な服務規律をピックアップします。
3、服務規律が徹底する方法
せっかく作成した服務規律が、全職員の隅々まで徹底させるには、やはり教育が大事です。最低でも年に1回は職員勉強会で、服務規律の徹底を行うべきだし。その勉強会で、この服務規律を順守するという、誓約書の署名捺印も欲しい所です。また、上司が部下の服務規律違反を見逃さない為に日ごろの気づきのレベルを上げる為に幹部同士の情報交換も欠かせません。それは賞罰委員会での、違反の状況と経緯と賞罰決定を流れを、幹部にはケーススタディとして学習してもらう事も必要です。
決して、ルールと規則でがんじがらめにしようというのではありません。普通に守っている職員は何も問題がない訳です。でも、「ちょっと自己判断で、間違った事をしようとした職員」を未然に防ぐのが、本来お服務規律教育ではないでしょうか。
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