何故、この介護施設は職員の定着率が高く、求職者を断る状態なのか?
SWOT分析、事業再構築、経営承継可視化コンサルタントの嶋田です。
熊本で10年コンサルティングをさせていただいている社会福祉法人があります。
10年前は幹部の派閥や組織のゴタゴタ、人の退職が後を絶たず、この社会福祉法人の施設長は途方に暮れていました。
そんな時、その社会福祉法人の顧問税理士を私が研修をしていた関係で、そこの紹介から関係が生まれました。
今でも、多くの社会福祉法人、医療法人や介護施設では「人が辞める」「人が来ない」「現場が疲弊している」という3重苦になっています。
しかし、この社会福祉法人ではその問題がほとんどありません。
それはこの10年間にいろいろな事を実践してきたからです。
もう3年前くらいから「職員の離職と採用問題」が経営の重点課題ではなくなったのです。
では、その施設の経営者何を実践し、参謀としての私はどんな事を提案してきたのか?
実は、このドキュメントは、2022年2月に出版で公開する予定ですが、少しだけ紹介します。
1,最初は人事評価・職能要件書と賃金制度の改革
10年前に賃金制度を貢献主義と能力主義に変えるべくコンサルティングを行いました。
それまでは準公務員扱いの流れで平等主義が基本でした。
当時はまだ多くの社会福祉法人がそうでした。
そこで貢献行動主義・能力主義の賃金制度と人事評価そして、等級別職能要件書を導入。
この中身や進め方も私が一方的にコンサルティングしたのではなく、経営者、幹部の意見をベースに「彼らの言葉」で作り上げました。
今も表現の修正はあっても継続して活用しています。
賃金と人事評価の適正化は、採用や離職防止にも重要な要素です。
2,古参幹部の退職
昔はいろいろな幹部がいて、組織運営に支障をきたしていました。
派閥があったり、部門間連携ができず、現場職員が困惑したり・・・
個人ごとの職務権限や組織を変えて、影響力を変更したり、いろいろな事をこの施設長と共に協議して少しずつ実践しました。
その流れの中で「これからの施設の方向性やビジョン」とそぐわない古参幹部は徐々に身を引いてもらいました。
それまで古参幹部の圧力下で力を発揮できなかった若手職員が徐々に活発化していきました。
組織に新たな伊吹を入れるなら問題のある古参幹部を放置しないという姿勢が必要です。
これはこの施設長にとっても「孤独な外には見えにくい戦いの連続」でした。
3,行動規範の全員参加型作成と手帳化
基本方針はもともとありましたが、それを行動に反映させるために「行動規範」を幹部と議論して作成し、それを手帳化しました。
行動原則が決まらないと、現場での「共通ワード」ができません。
行動規範を作ったからと言って、一朝一夕に「職員の価値観」が変わるということではありませんが、目指す方向が決まることで、あらゆる場面で『行動規範にはこのように書いているから、この行動は問題あるのでは?』と議論できるようになるのです。
この行動規範は一般的なものよりかなり細かく書かれています。
しかも、自分たちで決めた表現ですから、自ずと自浄作用が働くというわけです。
新人が入職しても最初にこれを徹底して動機づけすることで、「鉄は熱いうちに打て」が可能になります。
定着率向上に一役買っています。
4,業務手順書の作成
人事評価や制度運営が少し安定したところで、現場作業の標準化に取り組みました。
作業別に業務手順書を全部門で作成してもらいました。
この手順書があることで、現場業務が「人によって異なる」作業から、「誰でもほぼ同じ手順で作業ができる」ようにしました。
これが特に新人が業務を早く覚えることに効果を発揮しました。
ベテランはこんな手順書を見なくてもできるのですが、自己流を新人に教えており、それでは施設の作業方針が安定しません。
大事なことは、「誰がしても同じレベルの作業ができる」事です。
そうすることで新人が早くを仕事を覚え、自信を持つことで、早期離職を防止できる効果があるのです。
5,カイゼン活動の導入
カイゼン活動は「今ある経営資源で創意と工夫で、少しでも楽に、早く、きれいに、効率的に仕事ができる活動」という意味です。
これを習慣化するまでには相当な時間がかかりました。
今ではかなり自主的に取り組んでおり、その結果もホームページに公開しています。
ここで一番大事なことは「カイゼン活動」をすることで「前向きな手抜き」ができて「職員の負担軽減」「介護品質の向上」「コスト削減・時間短縮」という『一石三鳥』が可能だということです。
このカイゼン活動を導入し、職員が自発的に「考えて作業をする」という風土ができたことは大きいと思います。
このカイゼン活動が「職員の負担軽減」が最初にあることも、職員が積極的に取り組む要因になっているようです。
6,外部活動・新たな取り組みでブランディング
昔ながらの介護施設の枠にとどまらず、いろいろな企画を導入しています。
アクティビティケアや熊本地震の経験からBCPにつながる各種の研修を実施したり、とにかくいろいろな事に取り組んでいます。
もし昔ながらのやり方に固執する幹部だったら、悲鳴を上げて拒絶するかもしれませんが、そういう人はこの施設にはいなくなり、チャレンジが当たり前に風土になっています。
そして、それに対して「誇りとプライド」を職員が持っているように感じます。
それがブランディングです。
7,ホームページ大改革
この施設のホームページを見ると、ありとあらゆる出来事がホームページで分かります。
単なる施設案内に留まらず、施設内の各部署での取り組みのドキュメントが部署別に常にアップされています。
ホームページだけでなく、それに連動してfacebookにも記載。
ホームページを見ると今の活動がほぼすべてわかるようになっています。
その分、コンテンツを探すのが一苦労ですが(笑)
その包み隠さず、事実をオープンにしているホームページを見て求職者が増えているのです。
そのホームページを見ると分かります。職員が主人公だということが。
だから直感的に求職者にも伝わるのでしょう。
8,動画教育
幹部教育、理念教育、管理教育そして施設でのレクリエーションからイベントまでどんどん動画に納めて、公開しています。
介護技術も動画にして「実務教育の効率化・迅速化」を図っています。
動画がここまで職員教育に効果的か!
率直にそう感じます。
何故なら施設の考え方や取り組みが施設長の言葉で直接語られ、新人でもわかるような表現で相当数の動画コンテンツを上げているからです。
細かいものはもっとたくさんありますが、それは出版までお待ちください。(笑)
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