あるTV番組で、中小企業の塗装工事会社が紹介されていました。
急成長している中小企業です。
その秘訣が「若手のスキルアップ」と「若手の定着率改善」だったそうです。
塗装会社ですから、いわゆる3K(危険、汚い、きつい)職場です。
そこに女性も含めた若手がどんどん活躍する事でコロナ禍でも業績を伸ばしているという事でした。
では、その会社は何をしたのか?
実は、当社もこのことをずーッと言い続けていますが、それを実践しているに過ぎないのです。
1、せっかく入社した若手が辞める理由
3K職場では共通した課題です。
この塗装会社もその課題に長年、頭を悩ませていたそうです。
若手を採用しても1年以内に辞めてしまう。
しかし、人材の新陳代謝をしないとどんどん職人が高齢化している。
また端から若手が募集に来ないという現実です。
若手は定着しだすと次からも若手は入社しやすくなります。
その会社でも若手が辞める理由を調査すると、あることが分かったそうです。
「先輩が技術を教えてくれない」
「徐々に技能体験の幅を広げさせてくれない」
「準備や下働きばかりで、働く実感がない」
という事でした。
先輩職人も忙しいし、今教育時間が取れません。
そして何より「教え下手」な職員が多い。
こういう状態だと「若手を現場で放置している」状況です。
これが若手が辞める理由だと考えたのです。
そこでいくつかの対策を講じます。
2、シニアを教育担当に再雇用
塗装会社ですから職人の集まりです。
職人も高齢になれば、眼もかすむし、足腰も痛くなる。高い所での作業も怖くなります。
どんなに頑張っても70才が限界だそうです。
しかし、その作業ノウハウは超一流です。このノウハウを退職で失うのはもったいないと考えました。
そこで70才を超えても「技能教育者として再雇用制度」を作りました。
給与より「自分が役に立つことへの自負」からこの制度を使いたいベテラン職人が結構いたそうです。
まだ体は動くし、高い所やきつい作業でなければ難なくこなせます。しかも給与は年金との兼ね合いもあり少額で済むし、その分食事補助や交通費など福利厚生で自己負担を減らせば、可処分所得も増えます。
若手の技能研修としてマンツーマンでついて、教えることもできるのです。
現場の先輩なら作業に追われそのOJT時間が取れません。
シニア職人の技能活用で会社もシニアもウインーウインの関係になるのです。
3、教育にはITと体験研修をつかう
このシニア職人が若手の現場に行けないケースも多いようです。
そんな時この会社では、若手の頭にCCDカメラをつけて現場作業をして貰い、作業の仕方を事務所にいるシニア職人にパソコン上で見せていました。
そしてオンライン会議の仕組みを使い、リアル動画を見ながらその場でシニアが指示したり、教えたりしているのです。
シニア職人はそのリアル動画を見るだけで、具体的指示ができます。
若手は不安感なくなり、その指示の忠実に従い作業を進めます。
その作業が終わったら、他の現場の若手のCCDカメラに切り替わって、またシニアが指導するのでしょう。
またこの会社は本社内に「研修体験スペース」があり、そこでもシニアが直接若手の技能指導をしていました。
塗装や壁塗りの仕方を直接、技能実習するのです。
4、若手は教育を待っている
こういう手厚い技能研修やフォロー体制があれば、若手も技能が上がっている事を実感できるし、自分が職場で役立っている事が分かります。
またおじいちゃんほど年が離れた人生経験に触れることも、プラスに作用することでしょう。
「若手は長続きしない」
「3K職場には合わない」
「最近の若手は根性なしで、楽ばかり考えている」
とネガティブは意識を持っている方が多いようですが、実はしっかりした教育を待っているのです。
OJTに任せて、放置した教育を行うから潰れる場合が多いという事でしょう。
最近はITやシニアの有効活用次第でいろいろなことができるのでぜひトライしてほしいですね。
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