先日、後発組でありながら急成長を遂げている、ある税理士・公認会計士事務所の代表とZoomで面談を行いました。
その席で彼が言い放った言葉は、極めて冷徹で、背筋が凍るような警告でした。
「あと3〜5年もすれば、普通の税理士事務所は顧問料がもらえなくなると思いますよ」。
月次試算表の分析や経営課題の抽出程度なら、今や経営者自身が生成AIを使って数秒で答えを出せる時代です。
もはや効果の実感できない形式的な税務顧問に、毎月数万円もの顧問料を払い続ける経営者はいません。
いま会計業界は、
「徹底した記帳代行請負型」
「人間味あふれるアナログ経営支援型」、
そしてその狭間で立ち往生する「中途半端な従来型」
へと容赦なく3極分化しています。
もしあなたの事務所が漫然と従来の業務を続けているなら、淘汰のカウントダウンはすでに始まっています。
1. 急成長事務所の猛追と「記帳代行請負」の勝機――自
計化を押し付ける従来型が見落としている盲点
急成長を続ける前述の会計事務所では、在宅のパート社員が記帳代行や仕訳入力を担当し、訪問する正規職員は税務や経営支援に特化する体制を完全に構築していました。
さらに社内の定型作業にはAIエージェントや最新アプリを徹底配備しており、代表は「会計事務所向けのAI活用セミナーで紹介されるノウハウは、うちではとっくに導入済みです」と涼しい顔で語ります。
圧倒的な業務効率化により、低コストかつ高品質な入力代行サービスを実現しているのです。
一方、旧態依然とした会計事務所はどうでしょうか。
「時代は自計化ですから、御社で入力してください」
と顧客にシステム導入を迫り、記帳代行を嫌がる事務所が後を絶ちません。
しかし、起業したばかりの創業者や、間接部門の人手不足に喘ぐ中小零細企業が真に求めているのは、正論の押し付けではなく「面倒な経理実務の丸投げ」です。
経営資源を営業や本業に集中させたい経営者にとって、自計化の強要は単なる負担の押し付けに過ぎません。
圧倒的なIT装備で作業を巻き取る後発事務所が台頭する中、「記帳代行はやりたくないが顧問料は欲しい」という従来型事務所は、真っ先に市場から見限られる運命にあります。
2. AIレポートを棒読みする職員の怠慢――経営者に見限られる「形だけの経営支援」
「これからは経営支援の時代だ」と焦り、試算表分析AIツールを現場に導入する事務所も増えました。
しかし、現場では痛々しい「会計事務所あるある」が量産されています。
ある事務所の若手職員は、AIが出力した立派な分析レポートを手に顧問先を訪れました。
そして画面に目を落としたまま、
「前月比で外注費が18%増加しています」
「売上総利益率が2ポイント悪化していますね」
と、AIが弾き出した数字を一生懸命に棒読みしたのです。
社長から「最近現場がバタついていてね」と曖昧に返されると、職員は背景事情を深掘りすることもできず、沈黙に耐えかねて「利益を圧迫しますから、外注先の相見積もりを取りましょう」と教科書通りのアドバイスを口にしました。
社長は内心、「そんな数字の解説ならAIを見ればわかる。薄っぺらい一般論を聞くために顧問料を払っているのではない」と深くため息をついていました。
さらに深刻なのは、AIが作った見栄えの良い経営計画書をそのまま金融機関に提出させるケースです。
バンクミーティングの席上、銀行の担当者から「この新規開拓プランは、誰がどのような営業ルートで実行するのですか?」と問われ、社長は完全に絶句してしまいました。
会社の力量を無視した「AIの綺麗事」を貼り付けただけの計画書は、実行力ゼロの絵に描いた餅であり、金融機関からの信用を一瞬で失墜させます。
形だけのAI活用で経営支援を取り繕う中途半端な姿勢は、経営者に対する不誠実でしかありません。
3. 生き残る道は二つに一つ――AIには絶対に真似できない「泥臭いアナログ力」の価値
これからの会計事務所に中途半端な立ち位置は許されません。
生き残る道は、徹底したDXで間接業務を請け負う「記帳代行型」か、AIには絶対に不可能な泥臭い対話力を備えた「アナログ経営支援型」の二つに一つです。
自計化が進む規模の中小企業が求めているのは、AIが出力する最大公約数の正論ではありません。
経営者の夜も眠れない葛藤を受け止め、頭の中を整理してくれる「思考整理の壁打ち相手」です。
数字の裏にある現場の混乱や職人のボトルネックをあぶり出し、経営者自身に「そうか、根本原因はここだったのか」と自発的な気づきを与えるには、生身の人間にしかできない傾聴、質問、カウンセリング、コーチング、そして議論を前進させるファシリテーション技術が不可欠です。
AIを壁打ちの下書きとして使いこなしつつ、浮いた時間のすべてを経営者と膝を突き合わせた「強み×機会=積極戦略」の徹底検証に注ぎ込む。
会社の身の丈に合ったアクションプランを策定し、実行プロセスに伴走する泥臭い対話力こそが、経営者が毎月喜んで高額な報酬を支払う唯一の価値です。
「うちは長年の付き合いがあるからまだ大丈夫」という根拠なき楽観は、事務所を静かに破滅へと導きます。
AIが試算表を読み解く時代において、形式的な月次監査と年数回の決算申告だけで顧問料を維持できる猶予は、長くてあと3〜5年です。
記帳代行を極めるか、それとも経営者の魂を揺さぶる本物の伴走者になるか。
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