圧倒的なスピードの裏で感じる「強烈な違和感」の正体
生成AIを実務に導入してからというもの、スライドの骨子づくりもテキストの作成も、データや財務分析の初動も驚くほど速くなりました。
以前なら「どんな切り口で書こうか」「顧問先の専務にどう伝えようか」とウンウン唸り、1時間近く頭を抱えていたブログ記事やメルマガの執筆でさえ、いまやプロンプトを投げればわずか5分、10分でそこそこのものが立ち上がってきます。
確かにすごい時代になりました。業務効率化という点では文句のつけようがありません。
しかし、画面の前でふと手が止まり、なんとも言えない「モヤモヤした違和感」を覚えることはないでしょうか。
「作業は劇的に早く片付いた。でも、なんだかちっとも面白くないし、達成感がない……」と。
かつて時間をかけ、何回も書き直し、悩み抜いた末にようやく一枚の提案書や文章を仕上げたあの時の「よし、できた!」という手応えが、綺麗さっぱり消え失せているのです。
この感情を抱いているのは、決して私だけではないはずです。
1. 速さは手に入ったが「思考の汗」と「生みの苦しみ」が消えた現実
以前の私たちは、良くも悪くも「生みの苦しみ」を味わっていました。
中小企業の社長の顔を思い浮かべ、
「あの頑固な社長を動かすには、どの言葉から入るべきか」
「あの工場の現場リーダーが納得する行動プロセスはどう書くべきか」
と、頭の中でシミュレーションを繰り返しながら言葉を絞り出していたはずです。
ところがAIを使うと、キーボードを叩いて数分待つだけで、一見すると論理的で80点前後の綺麗なアウトプットが吐き出されます。
しかし、そこに「自分の魂」や「思考の汗」は一滴も入っていません。
自分が苦労して生み出した感覚がないからこそ、完成したものに対する愛着も湧かず、達成感も生まれないのです。
作業スピードという名の「楽」を手に入れた代償として、私たちがプロとして感じていた「仕事の面白さや手応え」をAIに明け渡してしまっているのではないでしょうか。
2. AIの回答を「右から左へ流す」コンサル・会計事務所の危うさ
ここでコンサルタントや会計事務所の現場で起きている、非常に危うい「あるある事例」を見てみましょう。
ある会計事務所のMAS担当職員が、顧問先である製造業の経営改善支援を担当していました。
次年度の行動計画を作る際、AIに「中小製造業の利益率改善の具体策」を出させ、そこに出てきた「歩留まり改善」「多能工化の推進」「外注費の見直し」といったもっともらしい項目を、そのまま綺麗にお化粧して提案書に貼り付け、月次の巡回監査へ持っていったのです。
面談でそのシートを見た社長の反応は冷ややかなものでした。
「○○さん、理屈は分かるけどさ。うちの現場で今一番ネックになってるのは、先月辞めたベテランの穴埋めで新人が手直しばかり出してることなんだよ。外注を減らせって言われても、具体的にどう工程を組み替えろって言うの?」
担当職員は言葉に詰まってしまいました。
AIが出してきた表面的な「正論」をそのまま右から左へ流しただけで、その会社固有の泥臭いボトルネック(真因)に全く踏み込んでいなかったからです。
経営者の言葉を鵜呑みにして数字の辻褄だけを合わせた経営改善計画書が「絵に描いた餅」になるのと全く同じで、AIが作った一般論をそのまま使っていては、社長の心には絶対に響きません。
何より、それを繰り返している担当者自身の思考力もどんどん退化してしまいます。
3. AIは「完成品メーカー」ではなく「最高の壁打ち相手」
では、AIを使うのをやめて昔のアナログな作業に戻るべきかといえば、決してそうではありません。
問題は「AIに完成品を作らせて満足していること」にあります。
AIは「完成品を出してくれる自動販売機」ではなく、「思考を深めるための最高の壁打ち相手」として使うのが本来の筋です。
例えば、自社の強みを活かした戦略(KSF)や行動目標(KPI)を練り上げる際、まずはAIに広くアイデアを出させたり、論点を整理させたりするのは大いに有効です。
しかし、そこからが人間の出番です。
「AIはこの3案を出してきたが、あのクライアントの現場リソースで本当に実行できるか?」
「うちの事務所の強みである泥臭い現場指導を掛け合わせるなら、この表現はどう変えるべきか?」
「『なぜなぜ分析』をもう一段掘り下げて、固有の固有名詞に落とし込めているか?」
AIが提示した骨組みに対して、もう一度人間が徹底的に頭を使い、現場のリアリティや自身の経験値を注入して「自分の言葉」に変換していく。
この「ひと手間」をかけることで初めて、アウトプットに魂が宿り、自分自身の深い納得感と達成感が戻ってくるのです。
4. 【警告】AI依存が専門家から奪う「発想力・論理的思考力・文章力」劣化の恐怖
いま本当に恐ろしいのは、AIの手軽さに甘えることで、コンサルタントや会計事務所職員自身の「プロとしての頭脳そのもの」が音を立てて劣化していくことです。
第一に「発想力の劣化」です。
AIに指示を出せば、それらしい優等生的なアイデアが瞬時に並びます。
しかし、それに慣れきってしまうと、現場の些細な違和感や雑談の中に潜む「小さな変化」から独自の突破口をひらめくような野生の勘が完全に鈍ります。
AIが提示する平均点の枠組みの外にある「突拍子もないけれど現場に効く独自策」を生み出す発想の跳躍力が枯渇してしまうのです。
第二に「ロジカルシンキング(論理的思考力)の劣化」です。
本来、経営課題の解決とは、泥臭く「なぜなぜ分析」を繰り返し、真因をピンポイントで特定する過酷な知的作業です。
AIが整ったロジックを一瞬で作ってくれる環境に甘えると、
「なぜその課題が起きたのか」
「どこが本当のボトルネックか」
を自分の頭で深く掘り下げる負荷に耐えられなくなります。
結果として、表面的な理屈の辻褄合わせしかできない浅薄な思考回路へと退化していきます。
そして第三に「文章力の劣化」です。
AIが生成する滑らかで無機質な文章に頼り続けると、泥臭い葛藤や経営者の胸を打つ「体温のある言葉」を自力で紡ぐ筋力が失われます。
いざという時、自分の言葉で相手を動かす文章が一行も書けなくなるのです。
AIの画面がなければ何一つ発想できず、論理も組み立てられず、言葉も出てこない――。
「借り物の知識」しか持たない専門家など、現場の修羅場をくぐってきた経営者には一瞬で見抜かれます。
考える面倒くささに負けてAIに丸投げを続けた先に待っているのは、専門家自身の「能力の完全な空洞化」という、あまりにもリアルで深刻な危機なのです。
効率化の先にある「プロの矜持と面白さ」を取り戻そう
AIを使えば、誰でも手軽に「それっぽい成果物」が作れる時代になりました。
だからこそ、AIの出力をそのまま鵜呑みにして流すだけの仕事には、価値も面白さも存在しません。
AIという優秀な道具を壁打ち相手に使い倒しながら、最後のひと汗は自分の頭で泥臭くかく。
そこにこそ、経営者やコンサルタント、会計事務所が持つべき「プロとしての付加価値」があり、仕事本来の醍醐味があるはずです。
効率化に流されて満足感を失うのではなく、AIを梃子(てこ)にして自分自身の思考をより深い次元へと進化させていきましょう。
ていきましょう。
まあ、この文章も生成AIで何回も指示しなおして作成してますけど(笑)

