今の税理士が指導する経営計画書内容では、事業性評価融資は難しい?
知り合いのコンサルタントから最近聞いた話です。
ある地銀の融資担当を話す機会があったそうです。
その担当から税理士事務所が指導している経営計画書では、今後の融資は難しいという話です。
どんな内容だったか?
その担当者が言うには、
「返済をする為にはいくらの収支改善が必要かは細かく数字になり、キャッシュフローまで出ています。
しかし、肝心要の具体策が役員報酬減額を含めたコスト削減や、抽象的な商品戦略、顧客戦略ばかり。
多分経営者が言った言葉をそのまま掲載しただけでしょう。根拠を感じない。
これでは、その経営計画書の信ぴょう性が疑わしいし、何より経営改善するとは思えない。」
だそうです。
1、事業性評価対応の経営計画書は何が違うのか?
経営計画書を作成支援する会計事務所はローカルベンチマークを活用する所も多いですね。
しかしこのロカベンは「非財務」のアナログの箇所が重要なポイントです。
財務分析はデータ入力で誰でもできますが、「非財務」はヒアリングや分析が必要です。
しかも、この内容をそのままヒアリングして、そのまま記載。
そこから経営計画書や経営改善計画書のフレームに転記して「これが経営計画書」と言っています。
どこに事業性評価の要素が具体的に入っているのでしょうか?
事業性評価とは、今後の「可能性評価」と言えます。
●該当企業がどういう具体的な経営戦略(5W2H)をしようとしているのか
●収支改善につながる商品戦略やその売り方、売れる理由はどこか
●顧客戦略では新規開拓ができる理由は何か。既存客への深耕開拓ができるプラス商材、SPは何か
●価格戦略はどういう商材にはどんな価格戦略で、どう活用するのか
●上記戦略を実行する為に、どんな行動プロセスを踏むのか
●行動プロセスを実行する為のアクションプランは具体的にモニタリングできる内容か
こういう詳細な具体策から、収支改善の根拠ができてくるわけです。
だから、ロカベンの「非財務」項目を表面的に聞くだけでなく、「深掘り質問」をしない限りこの「可能性評価」を捻出する事は難しいのです。
2、何故、「根拠ある経営計画書」が作成できない事務所が多いのか?
これまで40以上の会計事務所のコンサルティングや研修を実施してきて、「根拠ある経営計画書」の支援をしてきました。
そのメイン手法は「SWOT分析」を活用する事です。
しかし多くの会計事務所の経営計画書は「根拠なき数値羅列型経営計画書」です。
SWOT分析を入れている所はごく一部。しかもそのSWOT分析も抽象的な内容です。
で、何故、会計事務所の監査担当者は「根拠ある経営計画書」の作成支援が上手くいかないのでしょう?
一言で言えば、「話をじっくり聞かない職員が多い」という事です。
世間話は誰でもできます。
しかし経営課題から具体策の深掘り、SWOT分析の展開等、ただヒアリングすればいいというものではありません。
「聴き方」が大事なのです。
●相手に考えさせる質問
●それをどんどん掘り下げる再質問
●相手が答えやすいような多様なヒント、事例
●相手が言っている事を論理的に整理しながら文字化する技術
これらは多少の訓練がないとできない事でしょう。
しかし「自分達はコンサルタントではないから、そこまではできない」と最初から諦めている事務所もあります。
ならば「経営計画書支援」という業務名を変えた方が良いでしょう。
例えば「数値のみ経営計画書支援」とか。
3、「根拠ある経営計画書」の中身は3段階話法で訓練
「根拠ある経営計画書」はSWOT分析を使って商品戦略、顧客戦略、価格戦略を中心に行い、その後「事業の選択と集中」と「リストラ」の具体策から成り立っています。
そして、その内容は経営者からいかに聞き出すかにかかっています。
すべてのヒアリングに共通している事は、論理的に掘り下げて聞き出すことです。
そこで3段話法を活用します。
3段話法とは、一つの質問に対して
「何故そうなのか」
「その原因の背景には何が具体的あるのか」
「どの商品か・どの顧客で起こった事か」
「その顧客はどうしてそのようにしたのか」
「その商品では対応できない理由は、他社商品が良い理由は」
決して3段話法だけではありませんが、1つの質問に対してトコトン固有名詞まで聞き出すことが重要です。
これらはやはりロープレやワークショップなどの訓練をしないと、上手くいきません。
しかも話法だけでなく、ヒアリングした事をどう記述入力しているかも重要な技術です。
本音を言えば「聞き出す」のが目的ではなく、「書き出す為に聞き出す」が目的です。
だからロジカルシンキングをそのまま記述していく習慣をつけない限りこの3段話法は進まないのです。
今の経営計画作成ソフトで作った「数値羅列型経営計画書」だけでは益々、厳しい評価がされます。
事業性評価に相応しい「アナログ」技術をもっと監査担当者には教育していく必要があります。
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