②【重要】内務規定の必要性(2回目)

内規の必要性の2回目のコンテンツです。

③ 悪い事、問題を起こした事は明確にケジメをつける

我々日本人はその民族の歴史において、「村社会」の中で互いを尊重しながら共に生きてきた。

言いたい事もオブラードに包んで話し、問題だと思っても、「村八分」にされる事を嫌がり、多勢に追従したり、見てみぬふりをする事で組織バランスを取る事は多々あった。

外国でも大なり小なりある事だが、我々はそれが諸外国に比べれば多いように感じられる。

特に組織の管理では、誰でも「信賞」を与えるのは好きであり、予算と内容の許す限り積極的に行いたいものである。

だが「必罰」はどうか?

多くの責任者クラスは、その必要性を分かっていても、その個人に与える影響やチームワークを考えて遅疑逡巡するケースは多い。

組織の大義名分よりも、必罰を下した責任者が嫌われたり、指示を聞かなくなるのではと言う不安から、思い切って「必罰」を出せない場合が多いのである。

しかし、これからはそういう曖昧な態度で組織の維持ができるだろうか?

問題に蓋をして曖昧な解決策で、事故やミスを防ぎ、スピード経営、低コスト経営に対処できるだろうか? 必罰を明確にできないと言う事は、ケジメをつける事ができないのだから、極言すれば職場での緊張感もなくなり、お互いの傷をなめあう仲良し集団と化してしまう事を意味する。

そういう病院や施設が「減収対応経営」を推進して、品質向上による利用者患者満足度の上昇とコスト削減と言う相反する取り組みの成果を出すとは到底思えない。

恐らく、そういう病院や施設は、「必罰」ができないのだから、「信賞」も曖昧になっているのだろう。良くも悪くも曖昧な管理や評価では人材育成や技術品質のレベルアップにはならないのは明らかである。

ここで言うケジメとは「罰則を強化し厳正に運用せよ。問題のある職員は躊躇せず、ケジメをつけさせろ」と言う一方的な解釈を言っている訳ではない。

むしろ緊張感と責任感を各自に持たせる為にも、必要なことだと考えているのである。

それはそういうケジメ策がはっきりしている方が、職場にメリハリが生まれ、適度な緊張感を作るということを意味しているのである。

緊張感がケアレスミスを防ぐのは明らかな事である。

 

話は飛ぶが、このケジメの重要性を示す逸話が中国の兵法書にある。

春秋戦国時代の中国の兵法書である「孫子」を書いたとされる孫武は、ある国の皇帝から、兵法指南の役を頂いた。

丁度他国と一戦構えねばならない時代であり、宮中の女性と言えども、槍を持ち、いざと言う時は戦う必要があると皇帝も判断した。

そこで、孫武に「宮中の女官に槍を訓練してくれ」と依頼した。 孫武は槍の使い方を丁寧に教えて、訓練するが、女官はクスクス笑いながら、真剣に取り組もうとしない。

再度、号令を掛けてもやはり、笑いながら適当にしている。

そこで、孫武は「今までは私の指導方法が良くなかったのであろう」と言い、また再度号令をかけたが、相変わらず女官は笑うだけである。 孫武はここでこう言った。

「今度号令をかけて真剣に取り組まねば、責任者である皇帝の側室に責任を取ってもらい、斬る。良いな」と言って、再び号令をかけた。

するとまたしても笑いながら槍を真剣に訓練しない。

すると孫武は「先ほど、側室に責任を取ってもらうと言ったはずだ。なのに、諸君らは言うことを聞かない。それでは責任を取ってもらう」と言って、皇帝が止めるのも間に合わず、彼女を斬ってしまった。

しかし、その後の槍の訓練では全員が真剣に行われるようになった。と言う故事である。

歴史的には極端な例だが、ケジメを予め伝えるとは、そういう意味合いではなかろうか。

④ 起こりうるリスクに対して予め、伏線を出しておく

病院や施設にはさまざまなリスクが内在している。事故やミスと言うリスク以外に労務管理上も多くのリスクがある。

例えば、昨年の冬の事だが、インフルエンザが流行し、多くの施設職員が感染した事があった。

業務上、少しでも感染の疑わしい職員は、施設入居者や利用者に感染させてはならないため、休養を取り、完治してから業務に就くように指示していた。

これは当然の事であり、その対処には問題ないのだが、多くの職員が欠勤すれば、当然手が回らなくなり業務に支障を来たす事になる。

その場合は大至急に部門間協力で人員配置を行い対応しなければならない。

しかし、施設介護もデイサービス双方とも余裕のあるシフトを組めない状態では協力すると言っても、自部門の業務を犠牲にしてまでは行いたくないと言う思想があった。

そこで、人員調整がうまくいかず、施設介護の特定職員は不眠不休の業務をこなし、何とか凌いだ。

だが後日になって、その協力姿勢のなさに怒りを感じた施設介護職員は、送迎なのでデイサービスへ協力するのが通常なのに、いろいろ理由をつけて拒否してしまった。

この場合、困るのは利用者であり、法人全体のイメージダウンである。

普段からデイサービスと施設介護の要員の乗り入れは簡単ではないのだが、先の件を通じてちょっと険悪なムードとなり、セクショナリズムが更に進行する雲行きであった。

幸い、経営者を交えて、今後はそういう事が起こらないように話がついたが、何故、このような状況になったのだろうか?

そこでは、これを教訓に「部門間協力体制」に関する「決め事」を明確にし、経営者決済で優先度を決めるようにした。

その後は似たような欠勤が多数起こる事があっても、粛々と部門間協力を行うようになっている。

このように、リスクは突然起こるものだが、病院内にも施設内にも類似の事例が多数存在しているはすである。それを予め決める事はリスクマネジメント上も重要な事である。

 

もう一つの事例として、組織内の労務管理上のリスクがある。

ある施設での話しである。 重要な業務を担い、ポジションもそれなりに高いレベルにある職員が、本人の都合で突然退職したいといってきた。

それも1週間後には退職したいと言うのである。 恐らく、もう既にどこかに就職を決めての行動であろう事は容易に想像がついた。

が ポジションと業務から考えるとあまりに唐突で、自分勝手だといわざる得なかった。

引継ぎも、部下の役割分担も事前教育も全くできてないのである。

この職員は多くの傷跡を残して、転職してしまったが、残された職員はたまったものではない。

今までこの施設では「退職意志は1ヶ月前までに伝え、了承してもらい、その後的確な手続きをする事がルールである」と明確にしてなかった。

また、そのような辞め方をしても、退職金は規定通り払われ、何の制裁も与える事ができない。

そこでこの施設では、不文律の「決まり事」として、「退職前のルール」を明確に規定し、ルール通りしない場合は、退職金の支払い延期減額、差し止め、又は懲戒解雇もありうると言うルールを公開した。

普通に正しい辞め方をしようと思う職員にはあまり関係ない事だが、辞め方の卑しい職員には、それなりの牽制機能にはなっているようである。

もし、今後似たような辞め方をする職員がいれば、実際に適用するかどうかは別として、「前にも決めていたように、それは認められない行為だからね」と言えるのである。

 

それと今後重要になってくるのが、先述のように「減収対応経営」が必要だと言う事は、固定費の削減、合理化、職員給与の減額も視野に入ると言う事である。

その場合にも、この内規は事前の方針と言う事になり、職員にも「ある程度予測はついていた」と思われる事にもなる。

ある施設では給食部門を自前からアウトソーシングに切り替えようと方針を検討していた。

給食部門の職員、パート数名は、その施設からは必要でなくなるのである。

事前に内規では、合理化の一環でそういう事もありうると言う項目があったから、職員は覚悟していたようであった。

しかし、それでは忍びないので、職員には一旦は退職してもらうが、アウトソーシングの会社にそのまま受け入れを依頼した所、快諾してくれた。

給与は下がったが、職場は同じなので、職員は今まで通り勤務できる。

これも、内規に予めうたい、給食部門の職員にもその可能性を言っていたから、大きなトラブルなく移行ができたのである。

誤解があってはいけないが、事前に「内規」に記してさえいれば、問題なく進むかと言うと現実はそう甘くはない。何故なら、先ほどの給食部門のアウトソーシングを可能にした施設は、経営者と職員とのコミュニケーションが日ごろからよく、信頼関係があったからできたのである。

この施設では特に情報公開を進め、相互信頼関係づくりに努めていると言う過程があったからできたが、日ごろの情報公開も無く経営者との信頼関係もなければ、「内規で以前、説明したから、断行する」と言っても簡単には通用しないのではなかろうか。

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