①【重要】内務規定の必要性(1回目)
このコンテンツは私が以前執筆した「医療法人・社会福祉法人の経営改革・組織改革実例マニュアル」から抜粋したものです。組織力が発揮できてない事業所はすべからく、ルールの曖昧さが際立っています。そこで、「内務規定」を作成することをお勧めしています。
これまで多くに事業所の内規を作成してきましたが、決してルールでがんじがらめにするのではなく、
「やっている人とそうでない人を公平に処遇したい」
「曖昧なルールの為誤解を受けて、人間関係にひびが入るのを防ぎたい」
という目的です。
①既存の規則類では網羅されない、毎日起こる組織の悲喜交々
病院や介護施設、福祉施設には業務特性上さまざまな規則類やマニュアルが存在する。
その規定通りに運営しているつもりでも、どこかで漏れが起こる。
一般企業と違い その漏れはそのまま重大な事故やミスに反映し、人命に関わることもある。
実際に就業規則や各種規定類を拝見して、職員に「この規定で組織運営は十分ですか?」と尋ねれば、皆首をかしげる。
一般に言われる規則類は建前論が多く、現実的でないからだ。また規則やマニュアル類が「こうあるべきだ」論が中心なのに、「しなかった場合のペナルティや罰則」にはほとんど貧弱な内容しか書いてない。
「曖昧なルール」「人によって判断が異なる事」は組織の中では日常茶飯事に起こっているのである。
がそれが、対処解決にとどまりルール化されてない事が多い。
会議で職員からあがった問題に対して決定事項を出していても、それがルールとして公式に周知徹底されなければ、当事者は同じ問題を起こさなくても、他者が起こす事は十分考えられる。
そこで通常の規則類では網羅できない項目を「内務規定」として整理する必要がある。 筆者のお手伝いしている医療法人や社会福祉法人には、ほとんどこの「内規」を導入している。
またこの内規のほとんどの内容が職員管理に関する事である。
作業や業務に関する項目はむしろ内規よりも、後述する手順書を中心に行い、内規には労務管理、人材育成、信賞必罰管理、が中心となっている。
その程度なら、就業規則や給与規定、他の規則類で大丈夫だと言う人がいるが、実際に労働基準法通りにすべての職員が、権利を前面に出し、ルールもなく行動すれば、必ず業務に支障を来たすのは明らかである。
そこには「確かに基準法では君の意見は正しいが、現状と組織を考えれば、矛盾とは分かっていても、こうして欲しい」と言う事は多いはずだ。
また心ある職員や管理者では、多少を自己の時間や余暇を犠牲にしてまで、職務に精励している人も多い。こういう「見返り求めない献身的な心ある職員像」を他の職員にまで強制する訳ではないが、多少の矛盾は勘弁して欲しいというのが本音である。
したがって内規は 法律違反をするのではなく、職員の権利主張にも事前の約束事を予め明確にすることで、「後から知らなかった」と言わせない為のツールと言う事である。
この内規を作成して、一番必要性を感じるのは一般職員よりも、管理職以上である。それだけ、毎日毎日職員の労務管理に悩まされる事が多いと言う証左であろう。
また、部下である一般職員から見ても、上司によって返答が違ったり、判断に一定のルールや基準も存在しないのであれば、どう対処していいか分からず右往左往しても仕方ない。
現実の医療法人や社会福祉法人の組織では、それが病院であれ、介護施設であれ、障害者施設であれ、限られた人員で皆がルールを守り、協力体制をとりながら、コストを抑えて経営をしていかねばならない。
ルールと言うと「押さえつけ」や「枠にはめる」等と個人の尊重を無視した制度で縛り付けると言う印象もあろうが、既存の規則類では、網羅できない様々な出来事について、「決め事」を作る事は今後の必須事項になるように思う。
② 「起こってから対処する」より「起こる前」の基本対処法を大事
多くの病院や施設では、利用者患者に関係する事では、何か問題が起こってからその対処法を決め、職員に告知していると言うスタイルが一般的だ。
当然、起こる問題は内容、状況とも千差万別であるから仕方ない。
しかし、労務管理について言えば、起こりうる問題はある程度決まっているし、過去にもいろいろ類似の事例で苦い経験もしているはずである。
例えばある問題を起こした職員へ、管理職が始末書を出すように指示したとする。
当然始末書は評価の対象になる。以前にも類似した問題を起こした別の職員がいたとして、その時は始末書命令が出なかったとする。
そうすると 今回の当事者は、「自分だけが始末書を出さねばならない」と言う理由が分からず、「何故、前の○○さんの時は始末書がなくて、自分だけにはあるのですか?」と言う反論をされる事になる。
もし、ここで内規に類似のケースの処分ルールがあれば、「今回のミスの度合いを考慮して、××の処分より、少し重くする」などと判断しやすくなるし、処分された方も、納得もいきやすい。
しっかりした組織のように「賞罰委員会」が臨時に召集され問題検討と処理を行うならいざ知らず、ほとんどの病院や施設では、上級管理職や事務長、施設長級で是々非々を判断しなければならない。
だから、裁判で言う判例のような、基本ルールを決めておく必要はあるのである。
また、始末書や減給処分、ひいては解雇処分などの罰則は、毎日顔を合わせている仲間に対して、管理者、経営者と言えどもなかなか言いにくいものだ。
それが、議論すればするほど、内容をほじくり返したり、片や検事的立場の経営者、片や弁護士的立場の管理者などの話し合いと化し、一から議論すれば時間も掛かるし、過去の類例のケジメへの批判も出て収集がつかなくなる。
特に管理者が妙な職員擁護派だったりすると尚のこと話が進まない。 そのように、労務管理に関する内規は、いちいち管理職が、職員に言いたくない事やケジメに関する事を予め明確化する事に重きを置く。
また、この法人での労務管理上のルールを入職時に説明すれば、「この施設はそういう事がルールになっているんだ」と事前の動機付けにもつながり、後からとやかく言われる確率が減る。
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