「その業種は経験ないからSWOT分析ができない」といったコンサルタント
こういう事を言ってきたコンサルタント、会計事務所職員が過去に相当数いました。
- 経験のない企業にSWOT分析をしようとした時
- ロープレで経験がない業種の社長を相手にした時
- 新規客にSWOT分析を提案するよう指示したとき
自分自身と同じ業種の企業を支援した経験がないから、SWOT分析ができないと、拒否しているのです。何故、同じ業種の経験がないからとSWOT分析をためらうのでしょうか。そこには、まだ、あるメンタルブロックとSWOT分析の誤解があるようです。
1、経験がある業種なら、相手が言っている事が分かるからスムーズという誤解
知っている業種なら、「機会」「脅威」「強み」などもイメージが沸くので、議事もスムーズにいくかもしれません。しかし、「知っている」という事は、発想を限定的にしてしまう可能性があります。だから、「機会分析」にしても、参加者が言う業界常識論に左右され、新たな切り口を誘導する事ができません。だから、議論がスムーズだとしても、発想の転換ができず、「面白味のない普通の具体策」が出る可能性があるのです。
2、過去に経験があるから具体策の提案ができるという誤解
同じ業種を2社以上経験があると、「この業界では、こんな事が対策になる」と勝手に決め込んでいる場合があります。以前にも言ったように、SWOT分析では同じ業種、同じ規模、同じ地域でも「機会」の掘り下げ、「強み」が異なり、「積極戦略」も違ってきます。なのに、「自分が知っている経験・知識」を、さも正解のように考えているとしたら、それは大きな誤解です。我々コンサルタントや会計事務所職員は、正解の具体策を提案する為にSWOT分析をするのではありません。
相手に
「そういう考え方もあるな」
「そういう切り口なら可能性があるかも」
と「気づき」や「発想の転換」を導き、これまでの延長線上の戦略ではない
ものを一緒に考えるところに醍醐味があります。だから、過去の経験業種がヒントとして使う分には構いませんが、自ら自分が経験した具体策を誘導する事は、良いことではありません。
3、知らない業種だから、どう議論を進めて良いか分からないという誤解
SWOT分析は、原則「相手が考えやすいようなヒントを与えて、相手の発想を誘導し、相手が納得する戦略や具体策を、相手自身が導き出す」ことです。私たちが長年実践してきたSWOT分析は、
「教えないSWOT分析」
「自ら気づくSWOT分析」
です。知らない業種なら、それこそ、相手の出方に任せて、純粋なファシリテーターやコーディネーターに徹する事です。むしろ、その方が良い結果になることを、私たちは100社以上経験しています。
4、業種を知らないからできる「ニュートラルな議事」
私は全く知らない業種をSWOT分析するのが、好きです。それは、この業界にはどんな癖があるのか、どういう固有課題があるのか知る事ができるからです。特にB to Bの生産財関連の企業だと、一般の素人には分からない事ばかりです。まだ消費関連なら、一消費者として見聞きしたことがあるから、消費者目線で議事も可能ですが。以前、半導体検査の業種のSWOT分析をしたことがあります。取引相手は、大手半導体メーカーで、全くの下請けの企業でした。半導体がどういう取引経路で・・なんて知ろうが知るまいが、議論の過程で必要ならそこで聴けばいいだけです。
だから固有業界の下知識があろうがなかろうが、SWOT分析の議論過程ではあまり必要ありません。むしろ、下知識があると、議論も幅を狭めることは前述した通りです。「知らないからニュートラルなSWOT分析が可能」と腹をくくった方が良いですね。
コンサルティングであれ、経営支援であれ、知っている業種、経験ある業種が良いという事は、そこに少なからず「アドバイス病」が顔を出している可能性があります。
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