嶋田利広ブログ

事業承継のコンサルティング

「理念承継の肝」経営判断基準作りコンサルの現場

前回、ある外食企業の経営承継コンサルティングの現場ドキュメントを紹介しました。その中で、少し詳細な説明が必要だと思うので、「経営判断基準づくりコンサルティング」の現場で何を、どう表現したのか進め方ノウハウを公開します。実は、今まで10数社の経営判断基準づくりコンサルティングをしてきて、いろいろ試行錯誤していますが、大体パターンが確定しました。

そのコンサルティングの順番は

  1. その企業に必要な経営判断のカテゴリーを予め作成
  2. それに沿って宿題を出す
  3. 会社沿革を聞きながら、経営判断経験をカテゴリ別に記載
  4. 後継者の経営姿勢、人格姿勢の話は、その専用欄に記載
  5. 表現整理と確認
  6. 役員会で内容解説と追加補正
  7. 部門別の判断基準の作成指示
  8. 役員会で部門別の判断基準の検証
  9. 冊子化して役員に配布

では一つ一つ見ていきましょう。

⑴その企業に必要な経営判断カテゴリーを予め作成

大体、どの企業も経営判断に関する事は決まっています。だから、最初にあらかじめ考えられるカテゴリーをこちらで決めておきます。そして、検討の最中に新たにできたカテゴリーがあれば随時追加していきます。

代表的な経営判断基準の目次は

  1. 設備投資・改修改装時の判断基準
  2. 新規事業参入時の判断基準
  3. 出店・進出時の判断基準
  4. 新規顧客取引開始時の判断基準
  5. 新商品取り扱い時の判断基準
  6. 値上げ時・値下げ時の判断基準
  7. 役員幹部登用時の判断基準
  8. 通年赤字が見えた時に判断基準
  9. 経費削減・コストカット時に判断基準
  10. 資金活用、運用時に判断基準
  11. 新組織、新部署構築時に判断基準
  12. 業務提携・出資受入時の判断基準
  13. 法的トラブル・風評被害、メディア被害時の判断基準

およそ、こういう項目を用意しておき、後は聴きながらその企業独特の判断基準カテゴリーを追加します。

⑵それに沿って宿題を出す

上記に沿って、過去どんな事があったか、現経営者、後継者にあらかじめ宿題を出します。宿題はメモ程度でいいので、思い出してもらうだけです。その時、各判断基準の影響を与えた事実、出来事も考えてもらうよう依頼します。会社の歴史年表を作ってもらう感じです。

⑶会社沿革を聞きながら、経営判断経験をカテゴリ別の記載

実際の現場では、現経営者、後継者と一緒にプロジェクター投影しながら、コンサルタントのPCに入力しながら進めます。私の場合Excelを使って、左に経営判断基準のカテゴリー記載し、右に会社沿革とその時の出来事、そこからの学びを入力していきます。そして、経験や学び、訓示の議論があれば、その都度左側の経営判断基準カテゴリーを決めて、その下にコピペしていきます。この議論を数時間していくと、いつの間にか、左側が埋まっていくのが分かります。

⑷後継者の経営姿勢、人格姿勢の話は、その専用欄に記載

経営判断基準を聞いている最中に、「経営者としての在り方」「人格とは何か」など、経営者の資質について、現経営者が言う場合があります。それは経営判断基準とは言い難いので、左側の別項目に「経営者の姿勢」というカテゴリーを設け、随時そちらに入力していきます。

⑸表現整理と確認

聴きながら、一気に入力しているので、誤字脱字や表現間違いがあるので、検討時間の最後の時間に表現整理の時間を取り、現経営者、後継者と確認しながら、文言調整を行います。その時、あるカテゴリーの基準が1つとか2つとか、かなり少ない場合は、そこで追加の議論をします。また、同じような表現が見つかったら、どこかのカテゴリーに集約していきます。

⑹役員会で内容解説と追加補正

現経営者と後継者でこの経営判断基準ができたら、役員や幹部に対して勉強会を開催します。その時、質疑応答を行い、役員に意見も入れて補正をします。ここで、「この定義通り行かない場合はどうするのか」などと、現実論の指摘が出ます。その場合、「この判断指針に沿って議論するが、特例がある場合もあるので、その時に議論する」と伝えます。この判断指針は原則論であり、原則論に大きく逸脱するような経営判断を戒めるものだから。

⑺部門別の判断基準の作成指示

経営判断基準ができれば、各部への判断基準づくりを担当役員や上級幹部に指示します。ここで間違わないようにしてほしいのは、これは判断基準、判断指針であり、マニュアルではないという事です。マニュアルっぽく書くと、誰も覚えられず、使われません。誰が担当幹部になっても、この部門の判断指針はこうだと、明確化することで、各部員のベクトルを合わせやすくするものです。

⑻役員会で部門別の判断基準の検証

各部から部門判断指針、判断基準が箇条書きで提出されたら、役員会で議論して、補正を行います。その場合もコンサルタントが、PCでプロジェクター投影しながら、その場で作成します。部門が多い場合は、複数回に分けて行います。

⑼小冊子化して役員に配布

最後は、経営判断基準、部門判断基準、を小冊子にまとめて、主要幹部に配布し、再度読み上げをします。一般に「京セラフィロソフィー」「トヨタウエイ」「コマツウエイ」など大企業にも理念や指針についての小冊子がありますが、これは後継者向けの判断基準なので、より詳細な表現の小冊子になります。そして、もしこの判断基準通り行かないケースや環境の変化、時代の流れがあれば、中期計画作成時にレビューをすればいいでしょう。

 

このように、経営判断基準はどこまでやるかでその労力が変わってきます。単純に「経営者の姿勢」だけなら、簡単にカードやパウチにして、常時携帯も可能です。企業の規模、ニーズによって変えても結構です。

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