嶋田利広ブログ

中小企業のコンサルティング

取締役の仕事とは?

経営承継コンサルティングをする際、取締役や幹部の役割責任を明文化するというものがあります。中小企業では、取締役の責任項目や評価項目が曖昧で、「高給の割には、働く成果が見えない」と、従業員や中堅幹部から批判されることもたびたび。しかし、部門長や管理者の延長線上で、取締役になった人、一族だから取締役になった人、いずれにしても「取締役就任前研修」を受けたわけでもなく、「取締役としての心得」があるとは言えない方が多いのが実情です。では、取締役とはどういう仕事をする人でしょうか?

1、分かりやすい取締役のスタンス「給料をもらう側から払う側」という立場

この立場が分かれば、経営者に近い発想ができるはずです。しかし、多くの取締役は、まだまだ「給与をもらう立場」で判断します。払う側の立場になれば、無駄な人件費も払いたくないし、無駄なトラブルに支出も避けたい。更に、今使っているお金を最大限効果的な成果がでるようにしたいし、現場での非効率性や動きの悪いの管理者も気になる。

要は、「給与を払う側」とは、社内で気になることばかりなんです。しかし、「給与をもらう側」の発想は、気になるのが自分の立場とか、処遇、自分に都合の良い部下は誰かとか、凡そ自分中心の事ばかりが気になります。具体的な成果がなくても、毎月給料日には、従業員よりはるかに高い給与振込がされます。

2、任期2年の意味

取締役は1期2年で改選されます。しかし実質的には自動改選で、役員定年もあってなきがごとし。オーナーの匙加減一つです。取締役は雇用契約ではなく、委任契約であり、本来なら、成果も能力もなければ株主総会にていつでも解任される立場です。しかし、オーナーの取締役をそうそう簡単に解任しないし、取締役も簡単に首は切られないと胡坐をかいている人も多いようです。

しかし、この原則2年という取締役の任期には、別の意味があると思います。それは、「2年間で、取締役らしい成果を出すこと」です。取締役なら、時間の掛かる戦略的な事、困難なことの改善など、一般の従業員や幹部では難しいことを解決したり、突破口を作るのが、取締役です。だから、「企画して、仕掛けて、モニタリングして、修正して、成果を出す」には、2年が最低かかるだろうと思うのです。だから、取締役就任時に「この2年間で私が成果を出すこと」を誓約書や計画書を出させるべきだと思います。

そうではないと、真剣みのない2年を終えて、意味もなく再任される姿を見た能力のある若手や幹部から「見限られる」可能性があります。

3、管理、調整、マネジメントは取締役の仕事ではない

元来マネジメントは、課長、部長、工場長、事業所長などの責任です。取締役が下手にマネジメントに手を出すと、現場の管理者の仕事がしにくくなります。また、現場管理者を評価する立場の取締役が言う事は、どんなにピントがずれていても、むげにできず、管理者が板挟みで困惑してしまいます。あるべき姿は、もし取締役営業部長なら、幹部ができない新規開拓の道筋を付けたり、新たなチャネルの戦略的な動き、業界や同業者との連携した動きの企画したりして、道筋を付けた後、それを現場管理者に渡すという事です。また、主要顧客や面倒な顧客からのクレーム処理を実施し、再発防止策を決めるのも取締役です。

だから、単なるルーチンワークとして、日報や伝票をチェックしたり、会議に参加して抽象論を指示したり、部下から「うちの取締役は、何をしているのか分からない」と言われること自体、取締役の仕事をしていないのです。取締役とは、具体的な成果を出すことです。そして、現場管理者から「取締役のおかげで、〇〇ができました。ありがとうございました。」と言われることです。

あなたの会社の取締役は本当の取締役の仕事をしていますか?

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