KPI経営KPI監査ノウハウ クロス分析「積極戦略」からKSFとKPIを設定
SWOT分析、KPI監査士、採用サイト、事業承継「見える化」コンサルタントの嶋田です。
経営の重点戦略をフォーカスするKSF(重要成功要因)にアプローチの最初に来るのが「クロスSWOT分析」から生まれたKSFです。
クロスSWOT分析は「独自の強み」×「ニッチニーズ・ニッチ市場」の掛け合わせから生まれる「自社固有の経営戦略」を導き出します。
その為、同じ業種や業界であっても同業者とは異なる「独自戦略」になりやすい傾向があります。
クロスSWOT分析の「強み分析」「機会分析」は既に解説なので、ここでは「積極戦略フレーム」とその書き方について解説します。
1,「機会分析」から可能性の高い市場商品戦略を先方と確認
「強みを活かして・・・・」と事業再構築補助金の計画書等多くの経営計画書で言われている。
この「強み分析」が重要な事は言うまでもない。
問題は「強み優先」だけで判断するとプロダクトアウト(生産者志向)になりがちという懸念があることだ。
原則は「マーケットイン(顧客志向)」だから、「機会分析」で徹底したニッチニーズ・ニッチ市場をピックアップする事が大事。
前述の「機会分析」の章でも述べたが、重要なのは「機会分析のなぜなぜ分析」だ。
- 何故、その顧客はそんなニーズを言うのか?
- 何故、その顧客が他にも同業者がいるのに、わが社に依頼したのか?
- わが社に依頼したということは、どんな課題がその顧客にはあり、それが解決できずにどんな困りごとがあるのか?
こういう「機会分析のなぜなぜ分析」こそ「積極戦略」の優先順位を決める要素になっていく。
実際のSWOT分析コンサルティングの現場では
「社長、この複数の機会の中で、一番可能性が高く、取り組みやすそうなものはどれですか?」
と必ず聞く。
そうすると、経営者はその各種の「機会」中で何が優先か直感的にイメージする。
だからコンサルタントや士業の方は企業経営者、幹部のSWOT分析を指導する場合、このところを忘れずにしてほしい。
2,指定された「機会」と「使えそうな強み」から「KSF」を文言化
では「積極戦略」の内容の是非は何で決まるのか?
なんとなく「機会」の何番と「強み」の何番を掛け合わせて、抽象的な「積極戦略」を出しても意味がない。
先ず「掛け合わせ」の考え方だ。
私がRE嶋田塾やSWOT分析スキル検定、セミナーで伝えているのが、下記の言い回しが「積極戦略」そのものだということだ。それは
「〇〇分野の◇◇ニーズを△△機能(メソッド・メリット)を使って、■■の企画で行動し、◇◇の成果を出す」事
この●●や◇◇、■■を固有名詞で埋めていければ、「積極戦略」の具体的要素につながる。
先ず
「〇〇分野」とは、機会分析ででた特定の顧客層、狭いニーズ市場を指す。一般的にはセグメントと言われる分野。
「◇◇ニーズ」とは、そのセグメントされた特定顧客層が、具体的に言った固有ニーズであり、「機会分析」の一番右の「何故そんなニーズを言うのか?」に隠れている事だ。
「△△機能」とは、自社の使えるリソース、つまり「強み」だ。その「強み」から掘り下げてどんな機能アップや横展開をする機能の中身を書きだす。
「■■の企画」とは、マーケティング戦略やコラボ、製造方法、キャンペーンなどの具体的な企画行動を決める。
「◇◇の成果」とは、そういう一連の活動から、どんな成果(KPI、新規開拓、アイテムアップ、ストアカバレッジ、一人当たり購買額の拡大等)を出す。
ここで大事な事はこの「積極戦略」の文字表現が成立するには、固有の商品戦略、固有の顧客戦略が必須だということ。
抽象的な商品や顧客対策、一般論の表現では、この文章は埋まらない。
3,積極戦略の各要素の記入
では「積極戦略」ではどんなピースが固有名詞で埋めればいいのか?
下記の積極戦略フレームを参考にする。
先ず一番左に「商品戦略」「顧客戦略」「価格戦略」につながるヒントが掲載されている。
これは具体策が出てこない時のヒントとして活用している。
そして、組み合わせで「機会」の番号、「強み」の番号を掛け合わせる(複数に掛け合わせで可)
「何をどうしたいKSF」とは「この戦略を一言でいえば何か」を書く。
「ターゲット」は具体的な顧客属性やマーケットチャネル。
「今後の具体的なニーズ(買いたい理由)」はそのターゲット顧客が、何故その商品や企画さービスが欲しいのか、「機会分析」の一番右の何故何故分析から引用。
「求める具体的なサービス・付加価値・課題解決」では、商品企画の中身や同業者とどう具体的に差別化しているかを書く。
「顧客視点KPI」では、顧客につながるどんな行動の数値目標がクリアすべきか、その行動数量が多い事で結果的に売上や粗利につながる事をピックアップ。
下の段では「業務プロセス」で必要項目を記入。
「マーケティング・販促戦略」では、その企画商品を売るためのマーケティング戦略の具体策や販促策、キャンペーンの中身を記載。
「製造・構築の仕方」では実際に商品化するための製造、委託、設計開発、提携など記載。
「成果を出す社内体制・組織・仕組み」では、社内の役割やチーム構成、予算配分、制度等、確実に実現できる為の内部対策を記載。
「業務プロセス視点KPI」はこれらの一連の活動に行動数量の目標値を書く。
ここまで「積極戦略」を掘り下げると後々の経営改善計画書が描きやすくなるのは自明の理。
この積極戦略フレームの一番右に「業績予測」という枠がある。
各種の戦略を実施すると向こう3か年でどれくらいの売上・粗利の寄与があるのか、そしてそれに付随する投資や経費など読めない数字を読んでいく。
ここでは「やってみないと分からない」という経営者幹部からの発言を認めず、平均単価や最終年度にどれくらいまで行きたいかなど、バックキャストから数字を決めていく。
「何故見えない数字をあえて読ませるのか?」
それは、ここで議論した事の数値イメージがその後の行動に影響するし、記憶に残していくため。
またこの業績予測はSWOT分析をする前に「返済原資をねん出するためにいくらの売上と粗利が必要か」を出しているので、それに合わせる。
更に業績寄与度が少ない商材なら、更に複数の商材捻出が必要だ。
もし「そんなにたくさんの商材はできない」というなら、一つの商材の規模を上げる事になる。
しかし、それには相応のマーケティング戦略や投資、差別化が必要なので、そのあたりが丁々発止しながら、モアベタープランの落としどころを探る。
そして何か商材づくりと販促をかけるなら、必ずそこで発生する原価や経費も概算でいいから具体的に記載する事も忘れずに記載する。
設備投資額も分からないなら、概算でも結構。その償却費を計上して全体像の経費を見る。
こうする事で、「積極戦略」がより具体的になっていく。
4,主要キーワードから戦略マップを作成
クロスSWOTシートにはBSCの戦略マップが組み込まれている。
戦略マップは,財務の視点,顧客の視点,業務の視点という3つの視点からなる(ここでは学習と成長の視点は割愛している)
3つの視点それぞれにKSF(戦略目標)が設定され,業務の視点のKSFから顧客の視点のKSF,さらには財務の視点のKSFへと矢印がつながっていく。
財務の視点のKSFは戦略の成果,顧客の視点と業務の視点はその成果を生み出す要因をあらわす。
クロスSWOT分析からは「積極戦略」が導き出される。
この積極戦略をもとに戦略マップを作成していく。
顧客の視点のKSFは,積極戦略でしぼり込んだ顧客ニーズを満たすために提供すべき価値を短い言葉であらわしたものである。
業務の視点のKSFは,その価値を提供するために磨き上げるべき業務を短い言葉であらわしたものである。
顧客の視点と業務の視点のKSFは積極戦略ごとに異なるのに対して,財務の視点のKSFはすべての積極戦略に共通である。
財務の視点のKSFは,「新規顧客の獲得」と「収益基盤の安定」という2つからなる。
どちらのKSFも,必要であれば,その企業にふさわしい表現に変えてもよい。
顧客の視点のKSFは,1つの積極戦略に対して1つ設定すればよい。
業務の視点のKSFも1つでよいが,磨き上げるべき業務がどうしても2つに分かれるときは,2つ設定してもよい。
戦略マップでは,KSFとKSFをつなぐ矢印が積極戦略のストーリーをあらわす。
KSFを設定するときは,矢印のつながりが本当に実現するかどうかをよく考えながら設定していく必要がある。
つながりがおかしいとということは,ストーリーが成立していないということであり,もう一度クロスSWOTを振り返り,積極戦略を見直す必要がある