嶋田利広ブログ

病院・介護施設のコンサルタント

また、今年の夏の賞与に業績も評価も入れなかったと反省した事務長

また、今年も夏の賞与が支給されました。しかし、いつも例年通りの横並びで、何とかしたいと思っている管理者や事務長は多いのでは?「また、今年も査定の仕組みを入れなかった。間に合わなかった。仕方ないから例年通りで・・」これは、ある事務長の反省の弁です。

「ちぐはぐな賃金制度」を何とか、理屈付けしたいと考えてから、既に数年が過ぎたそうです。理事長(院長)は、ただヤレと言うだけで、「いつまで時間が掛かっているんですか」とつめられるそうです。師長や科長などの現場管理者からは「評価に差をつけないとモチベーションが上がらない。何とかして…」と文句を言うだけ。頭を抱えた事務長は、いろいろなセミナーの顔を出し、本を読んだり、事務長なりに勉強したそうですが、どれも何かしっくりこないまま、現在に至っているようです。

思い切ってコンサルタントにも相談したそうですが、どうも一般論の域を出ないもので、中小病院の実態をあまりご理解してないようだったとのことです。そんな事務長が数年前の私のセミナーに参加し、その後相談会にも参加されました。この経緯を聞いて、私は 「事務長はどんな賃金や人事制度が欲しいのですか」と聞きました。すると、事務長は「理屈さえ合えば良いんです。今の賃金は経験や評価を反映しておらず、矛盾だらけです。他の職員に説明ができないんです。職員同士がもし明細書を見せ合ったら、ぞーっとします」と。そして、人事評価については 「今使っている人事考課票は一般的なもので、管理者は職員へ自信をもってフィードバックできません。私は、人事評価は査定の為の評価ではなく、教育の為の査定であるべきと考えているんです。でも、そんな内容のものはなかなか探せずにいます」と。

この事務長の悩みは、至極当然で的を射た考え方です。事務長は先ず、賞与だけでも収支状況や評価を入れたかったそうですが、賞与だけ、部分的に評価や計算制度を導入するのは、無理があります。実際に、経営陣の理解、現場への根回しや合理性あるフレーム、評価内容等の準備を前回の冬の賞与後に進めたそうですが、制度の整合性や月例給の何も踏み込まずシステムはできないと断念したそうです。それで何とか打開策はないか、とセミナーに来られた訳です。

私は面談で次の事を提案しました。先ず、2か年の大まかなスケジュールを作成し、半年を1つのクールとして、最初の半年間で行うこと、次の半年で行うこと・・・と、計画を「見える」スケジュールにすることをお話ししました。例えば、最初の6か月間は、大きな方針の決定です。目指すべき人事制度の決定、賃金の方針の決定、評価に関する考え方の決定です。これは6か月間もいりませんが、根回しや文書化で承認作業が必要です。それに後からの設計段階で、矛盾やちぐはぐにならない為です。

但し、ここでもあまり理想的な事だけを書かず、現実的な表現を組み入れることです。そしないと、経営陣も現場も過度な期待を持つからです。我々はこれを『賃金憲章』と呼んで、冊子化して、管理者や職員向け勉強会をする場合があります。とにかく突然、人事賃金のシステムが変ると現場管理者や職員クラスは面食らい、いらぬ反発を食う可能性があるので、この根回しは大事です。

 次の6か月間で、具体的な作業に入ります。等級要件や仮等級の決定、モデル賃金、個別賃金シミュレーション、評価を賃金に反映させた場合のシミュレーションなどです。この段階で、本給や手当がある程度決まってきます。次の6か月間は、人事評価や職能評価の中身の決定と仮運用です。人事評価表も一般論なら、どこかの本からコピーすれば簡単ですが、教育効果を狙う人事考課票だと、それなりに時間が必要です。

更に、職種別等級別の職能要件書を作り、職員の等級を客観評価するとなると、やはり6か月間は見ておきたいですね。そして、最後の6か月間が、新制度の切り替えに伴う準備、動機づけ、1回目評価と賃金への反映です。ここでは、実際に導入に入っていきます。進め方は各法人の実情で多少異なりますが、こういう準備と計画で行うことが、根付き仕組みだと言えます。

ご参考にしてください。

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