コンサルタントファームでの修業時代④「固定収入を追うと事務所がやばくなる矛盾」
SWOT分析、KPI監査、事業承継「見える化」コンサルタントの嶋田です。
コンサルタントファーム時代の回顧録の第4弾です。
これもこの業界の矛盾の一つですが、コンサルファームのスタッフ数が増えると、「固定収入だけでは固定費が賄えない」事実にぶつかります。
簡単に言うとコンサルタントファームなのに、コンサルタント収入だけでは事業が成立しないということです。
ここでいうコンサルタント収入とは固定収入だけではなく、単発モノや研修モノも含んだ「全コンサルティング売上」です。
「あれ?コンサルタントファームの売上って、コンサルタント収入で経費や営業利益を賄っているんじゃないの?」
と疑問に思うでしょう。
しかし、そうは問屋が降ろさないのです。
何故か?
これには種々事情がありますが、とりわけコンサルタントの一人当の売上のばらつきに起因しているようです。
1, 本当に稼げるコンサルタントはファームの中でごく一部
仮に、そのコンサルタントファームに10名のスタッフがいるとして、その内6名がコンサルタントだとします。
するとたいていの場合、年間2000万円以上売上があるコンサルタントはだいたい1~2名。
1000万円前後が2~3名、1000万円未満や自分の給与分さえ売上がないコンサルタントが2~3名はいます。
この構造は僅か2割の稼げるコンサルタントが稼げない4割のスタッフ分まで補っているという状況です。
これより規模の小さい5名程度の事務所なら、1人の社長コンサルタントが全部稼いで、後のコンサルは給与分程度又はそれ以下ということが多いのでは。
だから、社長コンサルタントは「稼げないコンサルへのいら立ちや自分へのプレッシャー」から、コンサルタントを長期育成ができず、採用退職を繰り返す結果になるのです。
2,営業部隊とコンサルタント部隊を分けるとさらに固定負担増
コンサルティングが忙しくなると、なかなか営業活動が出来なくなります。
出来れば、集客と受注情報を持ってくる営業担当者がいればいいのに、と思うのも当然。
ところが、ここに大きな問題があります。
コンサル会社の営業力とは、コンサル現場やノウハウをある程度を知った上で営業をしないと、経営者面談にさえ辿り着きません。
また、そんなに簡単にコンサル受注情報を営業担当が右から左へと持ってくることは考えられません。
大手ファームの中には、営業部隊とコンサルタント部隊を分けているところもあります。
しかし、そういうファームは大きな固定費が発生しているので、コンサル単価や研修料金も高く、それなりの企業規模を相手にしています。
中小企業を相手にしているコンサルファームで、営業部隊とコンサルタント部隊を分けて事務所経営するのは現実的には難しいのです。
またもし、営業部隊で高い生産性やコンサル受注情報をひっきりなしに持ってこさせるのは、「付加価値の高い、専門性の高い大手中堅企業が興味を持つセミナー」を用意し、その集客をしてもらう必要があります。
私がいたファームでは経験の浅いコンサル見習いは、セミナー集客の営業や会員顧客への定期フォローをさせていました。
いきなりコンサル受注はできませんが、こういう活動から企業の困りごとやニーズを探る「探題活動」と称してアポを取り訪問します。
その訪問時に具体的に聞いたニーズを報告させ、後日上司やコンサルタントと同行訪問して、受注につなげていきました。
ただ、こういう探題活動で、経営者ニーズを引き出せるセンスのあるコンサル見習いは少なく、なかなか営業担当の生産性は低いのが課題でした。
それなのにこの営業担当者の人件費は、そのまま事務所の販管費負担につながります。
販管費が増えれば、それだけ売上を増やさなければなりません。
すると、コンサル担当者には更なるプレッシャーや業績責任が課せられ、そこそこ稼げるコンサルタントも徐々に疲弊していくのです。
3,コンサルタントが固定収入に走ると、売上の限界が見えてくる
稼げるコンサルタントが少なく、また間接人員や販管費が高いファームで、普通のコンサルタントが自分の固定収入だけに走ると、実は一気にファームの業績が悪化します。
どんなに頑張っても、コンサルタント一人で月間10数社の定期顧問先が限界です(月1回か2回かまた滞在時間で変動)
仮に1社平均15万円としても月間200万円の固定収入を維持すると、それだけで他の仕事がほとんどできず、忙しい限りです。
良くやっているコンサルタントでも固定収入が年間2000万円がほぼ限界値に近くなります。
これ以上の売上増は時間的にも物理的も無理になるのです。
私がいたファームでも、僅か8社程度の関係先だけで「忙しくてこれ以上仕事はできません」と大見えを切っていたベテランコンサルがいました。
彼は今のクライアントを守るだけで精一杯で、新たな顧客づくりの営業をしませんでした。
彼は「コンサル三昧」で自己満足していました。彼の立場では部下の分まで売上づくりや営業開拓が必要なのに。
その癖、年間コンサル売上が1200万円未満。
彼に年収600万円は払えないのです(労働分配率と直間比率で計算すると、450万円の年収が関の山)
本人は「自分の努力は評価されていない」とこぼしていましたが、客観的に自分の貢献が見えない人だったので、独立後直ぐに潰れていきました。
固定収入は安定収益としてありがたいのですが、直ぐに限界売上がくる宿命があります。
固定収入だけでは、ある規模になったファームの固定費は賄えません。
だから、コンサルタントファームでは、「非コンサルティング売上」をどれくらいバリエーションを揃えるか、また経験のないコンサル見習いでも生産性が上がる仕組みや商材をどう用意するかが重要戦略になっていくのです。
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