コンサルファームでの修業時代⑤「モチベーションが維持できた理由」
SWOT分析、KPI監査、事業承継「見える化」コンサルタントの嶋田です。
今回も独立前にコンサルティングファーム時代のお話。
新卒でコンサル業界に入った私は、多くの顧客経営者から
「どこかの業種で経験積んだ後で、コンサルタント会社に入った方がいい」
と言われました。
しかし、そのファームの経営者は
「経験者だからいいというものではない。苔や垢のついた経験者より、純粋培養した方がいいコンサルタントになれる」
と思っていました。
その頃のコンサルタント会社としては大手以外ではなかなか先進的な発想でした。
このファームでの14年間は、最後の方こそ、経営者への不信でファームを離脱しましたが、それまでは長期間「高いモチベーションを維持」して、TOP売上のコンサルタント、最年少取締役になりました。
今回はそのポジティブな部分を紹介します。
1,「自分でやるしかない」逃げ場をくれない経営者
まだ主任(当時24歳)であり所長代行の小さな拠点に配属された時です。
ここでは前任者が急に退職して引継ぎもママらない状態でした。
既に前任者が担当していたクライアントが数件、コンサルファームの経営者が受注して、キックオフのタイミングのクライアントが1件。
そしてこのファームの経営者はその時も全国に数か所の拠点があることから、私が配属された小さな拠点での日程はほんの2,3日。
他に役員はいましたが、主に既存コンサルティングに来られるだけで、新たなクライアントへは対応が難しい状況。
そんな時、私は経営者に
「何とかこちらに来られる日数を増やして下さい。まだ経験もない私ではクライアントからクレームが出るかもしれません」と。
するとその経営者は
「大丈夫。君なら何とかできる。熱意ある行動をすればいい。もし問題になったら最後は何とかするから」
と。
結局、「応援はしない。自力で何とかしなさい」という指示でした。
ヒドイ社長だと思いました。まだ入社後2年半の駆け出しで、一人担当などしたこともないのに。
しかし、結局それが奏功する訳です。
人は頼れないと思うと何とか頭で考え、工夫しながら行動します。
こんな「営業受注の為なら応援してくれる経営者でしかも、コンサル施工は現場任せの経営者」から自力を学んだこの時期はその後のコンサル人生に大きな影響を受けた時期でした。
2,組織攻略で次々へとコンサル受注
この小さな拠点は私が所長で事務員が1名、現地で採用した若手が1名、本社から応援に来ていたスタッフが1名の4名の拠点でした。
素人拠点なのでそうそうコンサル売上や受注が上がることもないのですが、アポ訪問をして探題活動はしっかり行いました。
ある時、スタッフがセミナー案内をしていた工業団地の事務局長と面談ができ、コンサルタントに興味があると報告が来ました。
そこで一緒に訪問した所、この団地には30社が入っていて、事務局は何らかの経営の勉強会をしたいというニーズがありました。
そこで、私は先ずは団地構成企業の経営者向けにファームの社長の講演を受注を提案。しかも先方の言い値で確か5万円位でした。
その時、ファームの社長は平均20万円の講師料をベースにしていたので、怒られる事を覚悟の上の講演受注でした。
そして2か月後実際に講演会が終了し、アンケートを取るといろいろなニーズがあり、私とそのスタッフは即アポを10数社と取り営業しました。
スタッフがフォローした見込み客で可能性が高い企業には、私が再訪し、ファームの経営者が拠点に来た日程で、「社長面談」を入れるだけ入れる込みました。
その1年だけで5社の新規開拓で「経営診断・現状認識から月次契約」に至り、その担当コンサルを私が行いました。
予定通り6か月で終わったところもあるし、私が赴任中ずーっと顧問をしていたクライアントもあります。
この団地の組織攻略で10社位と関係を持つことができ、そこでコンサルの現場を経験したことがその後の自信づくりにもなったのです。
この時、全国5拠点の中で、一人当たり売上、一人当たり営業利益がTOPになり、赴任中は継続できました。
やはり数字と自信は連動するのです。
3, 5名の素人メンバーで結束して高生産性
福岡の拠点に所長として転勤となった私は当時、1名の入社1年コンサルと事務員1名の3名で、福岡の拠点を再出発しました。
それまでも役員が責任者として、新卒のスタッフやコンサル経験者もいるにはいたのですが、生産性も低く再出発が必要な状況でした。
赴任後、すぐ新人2名を採用し5名体制で仕切りなおしをしたのです。
たまたまこの5名皆、苗字に「〇田」がついていたことから「5田の力を見せたレ」とスローガンを作ったことを覚えています。
この4名のスタッフは忠実で、私の指示をしっかり守ってくれました。
当然、受注や施工は最初は私が全部行い、徐々に施工部分を割りふりしていましたが、良い連携が取れていました。
ここでも「組織攻略による受注拡大」が進みました。
一つが公認会計士事務所を開拓して、顧問先経営者を集めた「社長塾」開催。その社長塾参加者がその後、5社ほど継続顧問先になりました。
また北九州の経営者団体での講演受注を取り、その講演参加企業へのフォロー面談で「診断→継続指導」に流れが、5社ほど生まれました。
何せ、皆若いので土日も深夜もなく、施工と受注活動に邁進しました。
福岡は最初は一拠点でしたが、生産性が高くなって、コンサルも増やしオフィスも拡大した事で、中核拠点になり私自身も「部長」となり、その後ボードメンバーの末席を汚す位置になっていきました。
素人集団なのに何故、高い生産性が生まれたのか?
それは役割分担がうまくいったからです。
●経営セミナーの講師を説得力とカリスマ性の経営者が行い、参加企業経営者が納得する
●セミナーフォローを全スタッフで行い、ニーズを聞き出す
●スタッフから私にスイッチして、受注契約まで蹴りこむ
●私の案件なら、経営者へスイッチして、その経営者が受注の手前まで蹴りこむ
●企画書提出と契約を私が行う
●契約が決まった案件では私が全案件の責任者になり、診断の方向性や情報収集先を指示
●診断報告会後、初期指導は私が行い、いずれ担当スタッフに任せる
そうして、私自身も自分の顧問企業を極端に増やさず、スタッフを育てながら、チームで高生産性を維持していました。
この頃は面白いように案件が決まっていました。
4,1プロジェクト1チャレンジで、毎回一工夫
例えば経営診断や経営計画書作成プロジェクト、基本動作、部門別層別体質強化研修などの単発プロジェクトをする際に、私も心掛け、スタッフにも強要していたのが「1プロジェクト1チャレンジ」という考え方です。
当時はネット環境もなく、具体策の提案にはいろいろな書物で調べたり、過去の診断書を参考にしたりする事がありましたが、案件が重なると時間がなく、ついつい前例パクりの衝動に駆られます。
それでは、物件のたびに新たな気づきもスキルアップもできない為、必ず「1チャレンジ」を義務化しました。
当然、私が一番「1チャレンジ」をしました。
実はそのお陰で今があると思っています。
私より先輩や上司の中には「本や過去事例をコピー」して使う輩が結構いましたが、やはりそういう人は続いていません。
今でも付き合っているファーム時代の仲間で、コンサルを続けている人は皆、「コピー」に頼らず、自分なりにオリジナルを毎回挑戦した人だけです。
結局、創意工夫のあるコンサルタントのアイデアは、オリジナルを追求する姿勢から生まれるのです。
今の時代のWebからのコピペや生成AIからのコピーを続けていると、そのうち脳が「依存症」になり、オリジナリティを生みだせないようになるでしょう。
これはコンサルタントとして致命傷だと思います。
5,ワープロだけで7台
当時まだまだ手書きの診断書や報告書が残っていましたが、いち早く自己投資でワープロを購入し、「手書きから脱却」を図りました。
1987年から東芝のルポというワープロを使い始め、ワープロが進化するたびに購入。
最初のノートパソコン(アップルのマッキントッシュ)を買った1994年までに、実に7台もワープロを買い換えました。
ノートパソコンになっても、アップルで2台、その後ウインドウズになってからは、これまで28年で13台を購入。
とにかく、ノートパソコンは商売道具なので、良いものを何台も買い替えています。
途中からモニターやプロジェクターを持参して見せながら、入力しながらコンサルティングを行うという今のカタチにしたのが1998年ごろでした。
あれから25年間今のスタイルを維持しています。
6,教えて貰えない、逆に分からなくても教えなければならない
コンサルファーム時代は、コンサルのノウハウとか、仕組みとかマニュアルとかを先輩から懇切丁寧に教えてもらう時代ではありませんでした。
「自ら学ぶしかない」時代で、いわゆる「見様見真似」で体験的にコンサルティングノウハウを体で覚えてきました。
そして自らも経験の途中に合っても、「部下や後輩に教えなければならない」立場でした。
「ごめん、俺も知らないから、ちょっと待ってて」
なんて言えません。
だから、それなりの勉強もしたし、ノウハウ本も読んだり、講演に使える歴史書も乱読していました。
また若い頃、社会常識、経済経営情報を知らない事で恥をかいた事から、日経ビジネスを愛読しだしたのも、ファーム時代でした。
あれから32年間、日経ビジネスを毎週愛読しています。
「知」の蓄積ですね。
「しっかりしたノウハウが分からないから、他人に教えられない」という人がいます。
専門業種知識や法律会計金融知識など「確定した知識」は覚える事がノウハウ習得でしょう。
しかし、一般的なコンサルティングノウハウは「技法」「リテール」より、「本質」がノウハウの根幹です。
だから「提供するコンサルティングサービス内容」の「本質」さえ逸脱しなければ、間違う事はありません。
そういう意味で、「知識も浅い若いコンサルタントが、それなりに活躍できた」のは、決して偶然でもない訳です。
コンサルファーム時代に鍛えられたのは「学習より実践で学び、体得する」ことでした。
当時の転職組の同僚や高職歴のスカウトで入った方が、軒並み潰れていったのは、「頭で考えるコンサルティング」「口先三寸」の方々でした。
このファームのターゲット顧客は中小企業で、頭でっかちの経営者が少なく、理論でまくし立てても、説得できる相手ではなかった。
当時も今もそのあたりは同じでしょう。
いかにAIが来ようとも、リモートが増えようとも。
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