社長の思い、方針が「言葉」だけで理解できる社員は少数派?
会社の方針やルール、将来の戦略やビジョン等を熱く語る経営者はよくいます。TOPのモチベーション能力は重要な経営者の資質です。言葉が少なく誤解を招きやすい経営者よりは、しっかりと自分の言葉で、社員に説明する経営者の方が信頼感が高いのは当然でしょう。
しかし問題は、その経営者の言葉を社員がどこまで理解しているかという事です。
言葉は大事なコミュニケーション手段ですが、耳から入り、一時的には記憶に留まりますが、記録としては残りません。また、後から「言った・言わない」の誤解を招いたり、聞く相手によっては理解の仕方が異なり、なかなかTOPの思いが浸透しないものです。
そこで、社員に浸透させるには『言葉での説明』と『目で見て分かる説明』の2種類が必要なのです。例えば、会社の方針に関する話を、社長が3回に分けて話したとします。恐らく、1回目よりも3回目の方が、内容が濃く、判りやすいのではないでしょうか。これは、説明する度に学習していくので、3回目位が、一番出来が良いからなのです。4回目以降だとマンネリが出てきます。しかし、もし文章や目で見て分かる資料があれば、言葉での説明もブレがなく、伝わり方も極端な差は出ない筈です。
多くの中小企業の経営者は、言葉では説明できるが、それを文章や絵・表にするという事を結構苦手にしているのです。しかし、社長が無理なら、誰かが文書化・目で見える資料として作成した上で、説明をするよう促して頂きたいものです。
ある企業での出来事です。まだパソコンが今ほど普及していない25年くらい前のことです。その会社の経営者は新たな販売チャネルでの営業戦略を社員に説明し、今までの営業の進め方を大きく変えて欲しいという要望を伝えました。今までは、代理店方式の営業で、決められた得意先を回るだけでした。また、代理店開拓も特定業界だったので、営業はとてもシンプルでした。しかし、不況の影響で、特定業種の代理店方式だけに頼る営業では、ジリ貧の傾向が明らかになり、新たな営業方式の導入を決定したのです。それは、特定ユーザーへの直販でした。直販による利幅の拡大と、力のない代理店への依存度を減らし、自前で業績を上げると言うシナリオです。
そのシナリオを営業会議で何回も説明しましたが、なかなか理解して貰えないようでした。あるベテランの営業マンに、『何回か説明を聞いたけど、結局、我々は、何をどうすれば良いのですか?』と、また一から説明を要求されたのです。
そこで、私たちは経営者や営業役員と協議し、営業方法を図式化し、【今まで】・【これから】と対比方式で『絵で説明』してみました。すると、どうにか理解度が上がったようでした。特に、今までの代理店へのフォローの仕方や権利保護、商流の説明等、複雑に絡んだ内容を説明する際には、図柄化し矢印等を使い、なるべく主語が分かるようにしました。
実はこの後、営業マンから、『得意先へ説明する際にも、今までのカタログだけでなく、【目で見て説明できるツール】があれば、営業技術も上がる』と言う提案を受けて、「説明力プレゼン研修」を数回に分けて実施しました。これはロールプレイング方式の研修で、ホワイトボードや紙をいかに上手に使い、相手に分かるように説明するかを訓練するものです。『説明力プレゼン研修』で使用したチェックリストの一部を下記にご紹介しましょう。
- 相手の理解度を常にチェックする為、表情を見ながら説明しているか
- 一方的な説明にならないよう、時折質問し、相手の理解促進を図っているか
- 言葉での説明だけでは理解が難しい場合、紙やボードに判りやすく書いているか
- 重要な箇所はマークを付けたり、表記の仕方で要点と分かるようにしているか
- 話の展開は筋道が立っているか。バラバラの説明で、何を言いたいのか分からないような話し方ではないか
- 分かりにくい専門用語・横文字は、平易な言葉に修正して使用しているか
- 相手の固有事情を加味して、相手が理解しやすい具体例があるか(●●の件が良い例ですが・・・)等
- 説明途中や質問への回答の結果、話が脱線した場合、本来の筋道に話を戻しているか。また相手に話を戻す事を伝えているか
- こちらは小さな事例と判断した事であっても、相手にその理由を分かりやすく説明しているか
- 紙やボードに書いた文字が極端に見づらかったり、分かりにくい字体を使用していないか
- 聞き取りやすい話し言葉か(話すスピード、語尾、声の通り等)
他
にもチェックポイントはありますが、ロールプレイングを通じて、営業マンもある程度自信を持つようになりました。皆様の会社でも、『目で見て分かる説明』が習慣化できるよう、TOPや管理職に提案したらいかがでしょう?仮にTOPや管理職ができなくても、社員側から実行すれば、必ず受け入れられると思います。
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