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②レストランのSWOT分析事例と解説

2店舗のレストランのSWOTクロス分析事例

 


《事業者の概要》

業種・業態:ファミリーレストラン

店舗数:2 店舗

年商:2 億1,000 万円

従業員数:25 人(パート・アルバイト含む)

SWOT 分析の実施日数:2 日

SWOT 分析参加者:社長、役員、店長の3 名



 A レストランは、同地域で2 店舗を経営している地域密着型のファミリーレストランです。多くの外食産業が低価格路線を展開しているなかで、地元特産の鶏料理をメインにし、地域で一定の評価を獲得していましたが、5 年前から来店客の減少と客単価の減少に歯止めがかからない状態が続いていました。別会社で新業態店(フレンチ)にも挑戦しましたが、その不振によりますます経営を圧迫していました。そこで、苦境から脱却するために、「大手チェーン店との差別化を図りたい」「収益源の多様化を進めたい」というニーズからSWOT 分析を行うことになりました。SWOT 分析では、数回に分けて議論を行い、クロス分析での戦略決定を行いました。

「強み」の見方を変えたら、可能性が広がった

A レストランの「強み」は、全国的にも認知度が高まりつつある地域特産の「鶏料理」にあります。SWOT 分析では、この「強み」をどう活かすか、また飲食というカテゴリーでは、今後はインターネット戦略がチャンスになることから、ネット戦略での「機会」の捻出に時間が割かれました。

 「積極戦略」では、地域内に向けては「鶏料理」よりも実績のある調理機能を前面に押し出したケータリングサービスの強化と、テイクアウト開発による客単価アップという方針が確定しました。また、地域外に向けては「鶏料理のパーツ販売」を展開するためのインターネットの活用と、取引のある商社を活用した「具材販売」という戦略が打ち出されました。ネット活用と用具販売は、来店客に左右されない新しい売上を創出するための対策といえます。これらの戦略は、既存の来店客による売上だけに期待するのではなく、自店(社)の経営資源(強み)をどう多角的に活かすことができるかを検討した結果、生まれたものです。

 近年、さまざまなメディアで地域食材がクローズアップされるようになり、A 社でも、「鶏料理」と「A 社」というブランドを全面に出した加工食品の提供はスーパーなどの量販店でもニーズが高いと判断したのでした。インターネット販売はすでに行っていましたが、本格的に実施している規模やレベルではなかったので、今後ネット関連への広告投資を行うことで、まだまだ大きな可能性があると判断しました

クロス分析:商品戦略「新カテゴリー」への挑戦

 「致命傷回避・撤退縮小戦略」では、他業態で展開していた高級レストラン(フレンチ)の撤退を決めました。このレストランは、経営者の道楽として始めたものの、開店以来、毎年赤字を出していました。SWOT 分析の結果、撤退するという意思決定がなされましたが、撤退を決めたにもかかわらず、最終決断は半年後の経営会議まで引き延ばされ、その間、赤字の垂れ流し状態が続きました。経営者の思い入れもあって撤退をそう簡単に決断できないことは理解できますが、いずれ撤退せねばならないのに、事を先延ばしにする弊害は大きいと言えます。さらに、地元特産の料理で高単価のメニューが多いことが、他のファミレスへ顧客が流れているのも事実として認め、既存メニューは値下げせず、新カテゴリーによる低価格メニューの開発での売上づくりも決定しました。しかし、低価格メニューの開発は既存ブランドの価値を損なう危険性もありました。

 そこで、別メニューの基本は

  • 原材料の品質を落とさず、
  • 少量化やアセンブリ(組み合わせ)の工夫で注文しやすい
  • 価格帯のセットメニューを複数開発する

ことにしました。

以上のSWOT 分析の結果、下記の順で対策に取り組んでいきました。

  1.  Web 業者とホームページ刷新の打ち合わせと契約
  2.  鶏料理具材販売の研究と加工業者との共同開発
  3.  ケータリングメニュー、テイクアウトメニューづくりとパンフ作成
  4.  低価格メニューづくりとメニュー表の改定
  5.  フレンチ店の閉鎖と隣接チェーン店へフレンチメニュー移管

 このレストランチェーンではこれまでにもいろいろと試行錯誤しながら経営改善を行ってきましたが、これまで漠然としていた改善内容が、SWOT 分析による客観的な分析の結果、経営者の「腹が決まった」という形になり、上記の対策の⑤のほかは即実行に移されました。

 これらの経営改善の結果、赤字が減少し(この時点ではフレンチ店閉鎖にともなう出費もあり黒字化できていない)、非食堂売上(加工食品、ケータリング等)の商材がそろってきました。また低価格メニューの貢献もあって売上は伸びてきましたが、メニューの見直しが遅れたことで、利益率はまだ予定どおりには改善されていません。しかし、厳しい状況を脱しつつあることから、黒字化は見えてきています。


 ★本ケーススタディにおけるSWOT 分析のポイント

  1.  商品の「強み」を再定義し、食堂以外の商品の販売を目指した
  2.  赤字業態店の撤退を意思決定した
  3.  強みと顧客ニーズを再分析し、低価格の新メニュー開発に着手した

このレストランの事例は、「差別化できずに埋没を余儀なくされている」飲食業にも当てはまる事例だと思います。SWOT分析は、「経営者の腹を決める」事にも有効だった訳です。

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