嶋田利広ブログ

コンサルタント事務所経営

コンサルタント・会計事務所の値上戦略

コンサルタントや会計事務所の顧問料やコンサルティングフィーは、バブル崩壊以降ほとんど上がっていないようです。いや、むしろデフレの影響は企業業績に厳しさから、「値下げ」を余儀なくされたケースの方が圧倒的に多いでしょう。企業経営者は、事業継続に必要なモノが値上げされたら、受入れます。

例えば、

  • 石油が上がればガソリン代が上がっても仕方ない、
  • 原材料が値上げされれば、受け入れるしかない
  • 外注先が他にない場合、値上げしないと請け負えないと言われれば、上げるしかない

このように、事業継続や業績に直結するものは、「値上げ」を受け入れる訳です。しかし、それが、今の事業継続に喫緊必要でないものや、原価があまりかからないものには、経営者はシビアな判断をします。値上げに論理的な理由がないのに、値上げ要請を受け入れることは厳しいでしょう。では、コンサルタントや会計事務所の「値上げ戦略」と「価格戦略」はどう考えるべきでしょうか?

1、先ず、初期価格の見直し

値上げはなかなか厳しいですが、先ず最初にやるのは「初期価格」の見直し、いわゆる「メニュー単価」の見直しです。既存客の既存契約ではなく、これから契約する場合に適用する「新メニュー表」です。この「初期価格=新メニュー単価」が明確でない為、価格がクライアントによって、異なる矛盾を多くにコンサルタントや会計事務所は持っています。「初期価格=新メニュー単価」を決める際の基準は、

  1. 必要時間数の設定(その作業に関わる大まかな工数と所要時間)
  2. 時間単価の設定(1時間当り1万円とか、3万円とかを決める。これは作業者のレベルや給与によって設定。管理職や所長クラスなら、時間単価3万円以上)
  3. 難易度の設定(難易度は、必要スキルの違いを意味する。知識と経験が必要な難しい作業なら150%を掛けたり、
  4. 蓄積ノウハウ提供料をプラス(作業量とは別に、提供するノウハウ、コンテンツの蓄積があれば、それは付加価値なので、価格にプラス。例えば、事例ツールたデータ提供なら、内容やプロジェクトによりけりだが、10万円をプラスするなど)

結果、「新メニュー単価」=(「必要時間数」×「時間単価」×難易度)+蓄積ノウハウ提供料となります。

2、初期価格が通じないクライアントへのしかし、第4戦略と第5戦略とは

いくら論理的に初期価格を設定しても、クライアントや関与先が「とてもそんな価格は払えない。半額にしてくれ」等と、「単価相場を無視した要望」をされることがあります。

そんな時、コンサルタントや会計事務所は3つの選択が必要です。

Aの選択=価格体系を崩せないので、「だったらやりません」と潔く断る

Bの選択=妥協して、クライアント関与先の要望通りの価格で受ける

Cの選択=クライアント関与先の要望の金額の範囲の内容にボリュームダウンの仕事をするだいたい、この3つのどれかを行います。

しかし、この3つの戦略では、決してクライアント関与先と「win―win」の関係にはなりません。そこで、「第4戦略」と「第5戦略」が必要になります。

先ず「第4戦略」とは、

基本価格は変えないが、特定期間値下げした金額で実施し、「元の価格の戻る条件」を明示することです。例えば、本来なら月額10万円の顧問料だが、5万円しか出せない場合、ある条件にクリアや、変化が確認できる事例を取り決め、その段階本来の10万円に戻すという契約です。この時、「業績が上がったら…」という条件は出さないことです。それは、読めないし、コンサルタントや会計事務所がいくら頑張って提案し、行動しても先方の体制の問題や経営者が行動しなければ、成果はでないからです。

次に「第5戦略」とは

顧問料自体は要望通りの金額にして、オプション契約のメニューを、入れることです。しかも、契約当初に現状認識をした後、「経営計画書」や「今後の改善スケジュール」などをクライアント関与先と一緒に作成し、その計画に「オプションメニュー」の導入時期を明示し、計画段階で「経営者に了承」を貰うことです。顧問料は後から値上げがなかなか難しい場合もあるので、「計画的なオプションを先に提示」すれば、理解が得やすくなります。

3、単価に相応しい適正な仕事量を把握してもらう「年間業務スケジュール」の提出

クライアント関与先の誤解には、「金額ほど、やってもらっていない」と誤解されている方が多いようです。例えば、会計事務所の職員が毎月監査で企業訪問し、いろいろな作業、チェック、経理指導などを行います。延作業時間が5時間位掛かっているとします。恐らく、一緒に指導やチェックを受けている経理担当者は、「毎月お疲れ様です。ありがとうございます」と感謝してかもしれません。

しかし、決定権者である経営者はその場に居なかったり、職員の仕事について、経理担当者が適切な報告をしない場合、あまり評価して貰えません。「経営者は会計事務所職員に仕事量」を知らないのです。また、コンサルタントの場合、幹部対象のコンサルティングや特定部門対象のコンサルティングの場合も、そこに経営者が出席していなければ、会計事務所職員と似たような評価になりかねません。だから、「値上げ」が言いにくい状況になっているのです。

そこで、今、複数の会計事務所で進めているのは、「決算報告会時に、年間業務スケジュール表」を提出し、それぞれの大体の所要時間や、該当者、作業者を明示し、そこに有料提案の仕事も「何月に提案」などと記載します。それを、決算報告時に「当事務所の今年の御社への支援予定です。」と年度初めに、あらかじめ伝えておくのです。そうすれば、いちいちおカネの話をしなくても良い訳です。

4、付加価値とは、「経営者の困りごと」に直接コミュニケーション取ること

最終的に値上げを受け入れるには、経営者です。経営者は自分に直接関与することは、付加価値として評価しますが、自分以外が関与する業務には付加価値を感じない傾向があります。だから、幹部がいくら「あの先生は良いですよ。よくやってくれます」と経営者に進言しても、契約以上のフィーの値上げは難しいでしょう。しかし、経営者が抱える課題、経営者個人の誰にも相談できない課題に対して、適切なアドバイスや相談機能を持てば、それだけで付加価値として評価され、ある程度の金額増が望めます。

経営者が、誰にもなかなか相談しにくい課題とは、何か?

  • 役員人事
  • 同族問題
  • 資金対策
  • 賃金評価制度
  • ビジョン
  • 縮小撤退

などの、「上級人事」と「経営戦略」です。それらは、経営者と個別面談で話し合う課題です。だから、コンサルタントも会計事務所職員も「経営者との直接コミュニケーション」の場をしっかりとらなければなりません。しかも、経営者に本音で言わしめる関係性を作り、その面談時間自体がオプション契約にようにして、単価増の理解をもらいます。「経営者との直接コミュニケーション」でマンネリになり過ぎると、なかなか価格アップを言いにくくなるので、「経営者面談に価値を示した初期」に、別契約なりオプションとして提案します。まだこの経営者面談に価値を持ってない段階での提案は、ご法度です。

このように、コンサルタントや会計事務所の値上げ戦略は、周到に準備が必要だし、年度計画で行うべきです。

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