嶋田利広ブログ

コラム

会社の上手な辞め方

今回はチョット昔話を思い出したので角度を変えて「会社の上手な辞め方」です。

 誰だって、一度や二度は会社を辞めたいと思った事があるはずです。外面も内面も、まったく問題ない会社など、この世には1社もありません。入社前に想像していた事や聞いていた事とギャップがある事など、正直日常茶飯事です。新卒から定年退職まで、1つの会社や職場で勤め上げる事の方が、もしかしたら少ないのかもしれません。

 実際に会社や職場を退職する理由は、種々様々でしょう。しかし、『辞め方』の良し悪しには、ある一定の法則がありそうです。その法則を守らないと、その後の人脈と言う財産が、活かせなくなり、勿体ない事になります。先ず、悪い辞め方とはどんな辞め方でしょうか。いくつかの共通点があります。

 一言で言うと、『無責任な辞め方』を指します。例えば

  1. 引継ぎも行わずに勝手に辞めてしまう
  2. 会社も上司も了承していないのに、勝手に有給を使って辞めてしまう
  3. 会社や上司に打診もせずに、社内や取引先、関係者に先に辞める事実を伝えてしまう
  4. 先に就職先を決めて、入社日まで勝手に決めて、今の会社の都合を考慮しない
  5. 辞める間際、経営者や上司と言い争いをして、しこりを残したまま辞めてしまう
  6. 仲間を勝手に引き抜いて辞めてしまう
  7. 会社や経営者、上司の悪口を社内外問わず言いたい放題言って、辞めてしまう

 などが挙げられます。仮に、今辞めようとしている会社が大嫌いだとしても、その会社が反社会的な行為をする会社以外なら、私たちは正しい辞め方をしなければなりません。それは、どこで、どう以前の会社の人たちと関わりがあるか、この先分からないからです。

 かなり前ですが、当時私が経営のお手伝いをしていた建材販売会社で、こんな事がありました。

 社歴3年くらいの25歳の営業社員Aが、営業部長の所へ『辞表』と書いた封筒を持ってきました。営業部長は、まだまだ若いA君をいろいろと説得しましたが、頑として退職の意思は変わりませんでした。結果的に退職は了解するしかありませんでしたが、営業部長は、Aの退職で引継ぐ次の担当者の業務量の都合で、「最低でも2ヶ月先にしてくれ」と要請しました。しかし、そのA君は『もう、次の会社への入社が1ヵ月後で、有給もあるので、2週間で辞める』と勝手な都合を言うのでした。

 彼は、辞めようとする会社の事や、社長・役員・そして営業部長の事をあまりよく思っていませんでしたが、営業の仲間とはいい関係で、プライベートでも付き合っていました。

 社長からも、『良い辞め方をしないと、先々の人生にプラスにならない』と説得を受けましたが、最終的には、引継ぎも不完全なまま、2週間後には出て来なくなりました。

 大変だったのは、引継ぎの不完全さによる顧客対応やら、A君が在職中に隠していたクレームの発覚でした。営業部は混乱してしまい、A君と仲が良かった営業の同世代のB君も、辞めたA君の顧客やクレームに振り回され、一気に悪感情が芽生えたそうです。B君はその後、A君とは、プライベートでも付き合わなくなったそうです。

 『運命のいたずら』を感じたのは、営業部長が定年を迎え、円満退職し、以前から知り合いがいる会社に転職した時です。営業部長は退職後も、その建材販売会社の社長とはお付き合いがあり、ちょくちょく会社にも来ていました。丁度、私もその会社の会議に入る前に、営業部長と会ったときです。

 その営業部長が、こんな事を言ったのです。

営業部長 『先生、1年前に勝手に辞めたAって覚えていますか』

私     『ああ、辞めた後、いろいろ顧客からクレームが来た、あの勝手な若い子ですね』

営業部長 『あの彼の会社が、今の私の会社に設備機器を売り込みに来たんですよ。既に別の会社に発注は決まっていたんですが、ちょっとだけ意地悪をしました』

私     『意地悪って?』

営業部長 『彼と上司がきている時に、私が出て行って面談をしたんですよ。彼はびっくりしていましたね。そこで私が言ったんです。〈A君が前の会社を辞めた後、とんでもない事が起こって、皆が迷惑した。君がいるよう会社とはお付き合いできないねって。〉 彼、顔が真っ赤になって。彼の上司もいろいろ言っていたけど、たぶん、後で相当お灸をすえられたんじゃないですか』

 この営業部長は、顧客クレームの全てを言った訳ではありませんが、彼の会社での立場にプラスにはならなかったようです。いつどこで、誰と会うか分からないのが、世の中です。辞め方だけは、社会人として恥ずかしくないよう、しっかりと正しくして欲しいものです。

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