会計事務所職員が「経営計画づくり」に消極的な理由

毎月、5事務所の職員教育や事務所経営のコンサルティングをしていますが、何故こうも多くの会計事務所職員は顧問先の「経営計画づくり」に消極的なのでしょうか。金融機関からも求められているし、事務所の付加価値化・差別化で重要な事は、これまでいろいろな研修を通じて知っている筈です。また、事務所の所長も「口を酸っぱくして」、経営計画づくりの必要性を言っているのに・・・

しかし、

  1. 時間が取れない
  2. 経営のことまで首を突っ込むと大変
  3. 時間が取られても、無料サービスだからやりたくない
  4. 顧問先経営者が、「経営計画づくり」に前向きでない
  5. 自分自身に、経営計画のことまで期待されていない
  6. 融資の為の事業計画づくりを相談されたら、やっているからそれでいい

こんな「やらない理由」をよく耳にします。恐らく事実なんでしょう。しかし、私はこの「やらない理由」には、事務所自身の体制や経験が大きく影響しているように思います。

事務所で経験していない事は関与先へ提案できない

私たち経営コンサルタントは、コンサルタントファーム時代も独立後の現在も、必ずと言っていいほど、「会社・事務所の経営計画」を決算期までに作成します。当然毎年です。そして、「経営計画」の目標が達成される為に必要な条件・要素を皆で議論し、それを文書化していきます。

  • 経常利益はいくら必要か、それは何故か?
  • 固定費では、人件費や投資をどのようにするか?
  • 売上は、ベース売上がいくらで、今後の努力売上がいくらか?
  • 努力売上目標を実現するには、「何を、どこへ、いくらで」「顧客開拓で行う事」「商品開発で行う事」はどうするか?
  • 上記の具体策を実行する為の行動計画は、「何月に何をするか」

これらを議論して、まとめて行きます。無論、モニタリングができるような書式で。こういうコンサルタント自身の経験は、当然のようにクライアントにも提案するし、いろいろな業種の特性に合わせて臨機応変に経営計画を作成していきます。

ところが、会計事務所で、実際に細かく「経営計画書」を毎年の期末までに、「全員参加型」で作成している事務所が一体どれだけあるでしょうか?事務所で経験している職員は、「経営計画書」の必要性や作り方を分かっているから、提案もするし、有料化もできます。先ず「事務所で自身で、経験させる」事ができていない事が、「経営計画提案」ができない理由です。

 経営計画書ソフトで、数値合わせはできるが、対策の提案ができない

ほとんどの会計事務所が提案する「経営計画書」は、最初から数値で始まり、数値のみで終わります。経営計画で大事な事、経営者が興味がある事は、「その数値を実現する為の戦略や具体策」です。だから、その内容にはあまり触れず、立派な利益が出る計画書をつくっても、「仏作って魂入れず」状態です。その為、予実管理もあまり真剣にならないのです。

数値(例えば売上や粗利)を上げる為の具体策とは、「商品戦略」「顧客戦略」「価格戦略」が含まれます。これに追加するとすれば「原価戦略」「品質戦略」「組織人事戦略」でしょうか。これらは、アナログな事なので、会計ソフトからは出てきません。こういう話になると途端に、「やっぱり、自分にはできない」と尻込みする職員が結構多い訳です。実際に、これも「経験」しかありません。

事務所経営計画で、商品戦略、顧客戦略、価格戦略、品質戦略、組織人事戦略のフォームに沿って議論しているでしょうか?私が何十回研修で伝え、事例を見せて、ロープレをしても、「2:6:2」の原則から、下の2割は全くしないし、中間の6割も半分はしません。

おカネを貰う事へのメンタルブロックがある

私たちコンサルタントでも、「この経営計画作成は10時間かかるけど、無料にしてくれないか」と言われたら、正直モチベーションは上がりません。それなりの顧問料を毎月頂いている場合や、スポットで経営計画づくりのコンサルティング費用が貰えるから、頑張る訳です。会計事務所の場合、顧問料3万円位で、月次監査と別にこの「経営計画づくり」を無料でするのは、とてもじゃないけど、「モチベーション」は上がりません。しかし、「経営計画支援で別途料金が貰えるほどノウハウがない」「別途料金と言ったら、顧問先が嫌がる」という事で、顧問先には、サービスをしているケースがほとんどです。

大事な事は「経営計画づくりは必須だ。絶対しなければならない定例行事だ」とクライアントに分からせなければなりません。だから、事務所の所長や幹部が率先して顧問先に提案し、有料で作成支援する姿を職員に見せることが大事だと思います。所長も幹部もしていないのに、職員にヤレと言う姿勢は、基本的に成果は出ませんね。

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