嶋田利広ブログ

「中小企業のSWOT分析指導の第一人者」が現場からお届け

2026.7.11 人事評価制度を導入しても「白ける」のはなぜか?今の若手が本当に求めている「精神的給与」と社風改革

 人事評価を導入してもしらける.jpg

「そろそろ我が社も人事評価制度を導入して、社員のモチベーションを上げよう」

そう意気込んで立派な評価シートやクラウド型の評価システムを導入したものの、期待したような効果が出ずに頭を悩ませている経営者は少なくありません。

それどころか、制度を入れたせいで社内がぎくしゃくしたり、社員が冷めた目で行事を見つめたりするようになるケースすらあります。

なぜ、多大な労力とコストをかけて構築した人事評価が、社員の「やる気」に火をつけないのでしょうか。

実はそこには、従来型の「評価能力」や「賃金連動」といった制度論だけでは片付けられない、現代の若手社員や中堅社員が抱える心理と、日本の社会全体に漂う閉塞感が深く関係しています。

今回は、中小企業の現場で今まさに起きている評価制度の限界と、これからの時代に本当に必要な組織のあり方について紐解きます。

 

1. 制度の限界と現場のリアル〜経営者と会計事務所の「あるある」〜

中小企業の現場に目を向けると、人事評価を巡る「あるある」とも言える生々しい光景が広がっています。

よくあるのが、顧問先から「社員のやる気を出すために評価制度を作りたい」と相談されたコンサルや会計事務所の職員が、人事制度のパッケージをそのまま導入してしまうケースです。

結果として、形ばかりの見栄えの良い評価シートは完成しますが、運用フェーズで一気に頓挫します。

一次評価者となる現場の管理職にそもそも「評価能力」が疑問で、本当に客観的に評価できない現実があります。

結局は「従順で扱いやすい部下」「協調性がある部下」を高評価にするという“好き嫌い”の感情が透けて見え、部下たちは一気に白けてしまうのです。

さらに、業績が厳しい局面では、どんなに高い評価を獲得した社員がいても、原資がないため賃金や賞与に反映させることができません

逆に、評価が著しく低い社員に対して「日本的な人情」が働き、一気に給与を下げるのは忍びないと躊躇したり、「下げたら辞めてしまうのではないか」という離職リスクを恐れて結局一律の評価に落ち着けてしまったりします。

これでは何のための制度なのか分からず、社内には「どうせ頑張っても変わらない」という諦めムードだけが漂うことになります。

 

2. 「賃上げ」だけでは火がつかない、現代の若手の心理

しかし、昨今の人事評価やモチベーションを巡る問題は、こうした「制度の運用ミス」や「処遇連動の不手際」だけが原因ではないようです。

多くの経営者やコンサルタントが直面しているより深刻な現実は、「賃金が上がろうが下がろうが、仕事への取り組み方やモチベーションがほとんど変わらない」という社員が急増している点にあります。

かつてのように

「成果を出して人より稼ぎたい」

「出世していい車に乗りたい」

「早くマイホームを持ちたい」

といった分かりやすい物欲や上昇志向を持つ若手は少数派になりつつあります。

むしろ、

「どうせ大した賃金にならないなら、ほどほどに働き、プライベートを大事にしよう」

と、最近の「働き方あるある」が多数派になっていないでしょうか。

 

経営者側が

「今年は賞与を大盤振る舞いしたから、きっと来期は目の色を変えて頑張ってくれるだろう」

と期待しても、社員側の働き方が大きく変わることは滅多にありません。

背景にあるのは、長年続く日本の閉塞感と、昨今のインフレ(物価高)です。

多少のベースアップや数万円の賞与増額があったとしても、日々の生活コストの上昇にかき消され、「豊かさ」を肌で実感することが非常に難しくなっています。

結果として、「どれだけ頑張っても未来はそれほど明るくならない」という無力感が社会全体を覆い、企業内にも「真面目に波風立てずにこなすけれど、覇気はない」という“ゆるい優秀さ”を持った社員が増えてしまうのです。

 

3. 今、組織に必要なのは「精神的給与」という仕組み

お金という強力なインセンティブが効きにくくなった現代において、人事評価制度という「ハード(枠組み)」だけをいくらいじくり回しても、社員のエンゲージメントを高めることは不可能です。

今、中小企業が本気で取り組むべきなのは、金銭的報酬とは異なる『精神的給与』を社内に溢れさせる組織づくりです。

精神的給与とは、働く個人がその職場で得られる

「やりがい」

「自社や仕事に対する誇り」

「上司や同僚から褒められる喜び」

「一人の人間としてリスペクトされているという信頼感」

そして自分の意見を安心して発言できる「心理的安全性」

のことです。

インフレで金銭の価値が揺らぎ、将来への不安が尽きない時代だからこそ、若手社員は

「この職場で自分は認められている」

「誰かの役に立っている」

という精神的な充足感を強く求めています。

どれだけ完璧な評価シートがあっても、日常的に上司から無視されたり、理不尽に怒鳴られたりする環境であれば、精神的給与はマイナスです。

逆に、評価制度自体はシンプルであっても、日々の仕事の中で精神的給与が格段に高く支払われている組織では、社員は自発的に動き、覇気を取り戻します。

評価制度を見直す前に、まずはこの「受け皿」となる組織の土台を根本から変えなければなりません。

 

4. 社風改革の第一歩は、経営者・幹部の「言葉の変化」から

では、どうすればこの「精神的給与」が高い組織を作ることができるのでしょうか。

それは、評価システムを外注することではなく、経営者をはじめとする幹部陣の「言葉」を変え、社風そのものを改革することです。

具体的には、社内のマネジメント層に対して「コーチング」「アンガーマネジメント」「ハラスメント教育」の3つを徹底的に叩き込む必要があります。

多くの管理職は、悪気はなくても「なぜできないんだ」「前にも言っただろう」といった、部下の心理的安全性を奪い、やる気を削ぐ言葉がけを無意識に行っています。

これを、部下の話を傾聴し可能性を引き出す「コーチング」の問いかけへと変えていくのです。

また、感情のコントロールを学ぶ「アンガーマネジメント」や、時代に即した「ハラスメント教育」を学ぶことで、恐怖による支配から脱却します。

経営者や幹部が日常的に発する「言葉」が肯定的に変わり、部下へのリスペクトを示すようになれば、社内の空気は確実に変わります。

それこそが、社員が安心して挑戦でき、褒められる喜びを実感できる「精神的給与の高い職場」の正体です。

言葉の変化から始まる地道な社風改革こそが、機能不全に陥った組織を蘇らせる唯一の道なのです。

 

人事評価制度が機能しない本当の理由は、評価シートの項目が悪いからでも、仕組みが古いからでもありません。

社員の心に閉塞感が漂う今、求めるべきは制度という「ハコモノ」ではなく、経営者や幹部が発する「言葉」を通じて、心理的安全性とリスペクトを担保する『精神的給与』の仕組みそのものです。

もし貴社の人事評価が形骸化していると感じるなら、まずは幹部の言葉がけを変える具体的な研修の第一歩を検討してみてください。

また、顧問先の支援に悩む会計事務所の皆様も、制度設計という数字や枠組みの提案に留まらず、こうした社風変革のアドバイスへと踏み込んでみてはいかがでしょうか。

それこそが、これからの時代に中小企業を真に救うコンサルティングのあり方です。

こちらのページもいかがですか?

無料電子書籍ダウンロード

「これを無料で渡すんですか?」と同業のコンサルタントがビックリしたマニュアルをご提供!各種コンサルティングマニュアルを揃えております。

コンサルティング現場実例ノウハウ

「こんな実例ノウハウを、こんな価格で売るって正気ですか?」と仲間のコンサルタントがあきれた「コンサルティング現場で活用した実例ノウハウ」があります。クライアントとの面談や会議で、また研修時に「見せるツール」しかも記入実例付きのリアルテンプレートを豊富に掲載。