私のSWOT分析コンサル失敗談①
SWOT分析コンサルティングの腕を磨くには、一にも二にも「場数」であることは言うまでありません。その場数を繰り返す中でも、いろいろな失敗も経験します。私自身も200超のSWOT分析をしてきた中で、必ずしもうまくいかなった事は、一桁では足りません。「SWOT分析スキル検定」を受講された方の中にも、実践でSWOT分析をする事に、戸惑いと恐怖を持っている方もいるでしょう。そこで、私自身の「SWOT分析コンサルティング」の失敗経験というか、上手くいかなかった事の事例を、恥ずかしさを覚悟のうえで、ご紹介します。
そのクライアントは、特定の大手企業の工場に部品や原材料を納入するを専門商社でした。売上規模も年商数億円、従業員も15名程度。その経営者から「待ち営業が多く、攻めの営業ができてない。何とか『攻め』のつながる営業戦略をつくれないか」という依頼から、「SWOT分析」をする事になりました。
1、顧客のニーズや今後の可能性は把握
経営者や営業幹部とSWOT分析をするなかで、「機会」ヒアリングをしました。「A大手企業の工場では、どんなニーズが増えているか」「先方の購買担当者から見聞きした事で、どんな将来方針を聞いたか」「同業者はどの分野を攻めているか」「今後の設備投資の方針は何か聞いてないか」などを質問しました。
すると、営業幹部からは、いろいろな意見が出され、その大手企業の工場の戦略が見えてきました。「機会」の意見を出す雰囲気は幸先の良いものでした。もともと「機会」に比重を置いたヒアリングだから、上々の滑り出しだった訳です。「この調子なら、良いSWOT分析になる」と、この段階では思っていました。
2、何回、聴いても「強み」ではなく、「良い点」しか言わない
ある程度、「機会」も出た所で、「強み」に入りました。最初は、多くの企業が言うように「強み」ではなく、「良い点」でした。
例えば、
- 社歴が長いから信頼感がある
- もう取引が40年を超える
- 依頼があれば部品を何でも揃えられる(但し価格競争力はない)
- 営業と配送が毎日、訪問している 等々
そこで「良い点ではなく、機会に使える物理的な「強み」をお願いします。」と何回も伝えました。それでも、やはり「良い点」しか言わない。すると、SWOT分析シートへ入力できません。そこで、「いやいや、それは良い点です。もっと「機会」に使えそうな「強み」はないんですか?」と、厳しく言ったその時です。ある幹部が神妙な面持ちで発言しました。
3、昔の「強み」が全く生かされない
「先生の言っていることも分かりますが、『強み』がないんです。我々の『強み』は、先方には魅力のないものになってしまって、むしろ、それがあだ花になっているのが実情です」
と。その後は、
- 先方の購買ルールが変わった事(現場責任者に発注権限がなくなり、本部集中購買になった事)
- 小口はネットで低価格小ロットで購入するようになった事
- どんな商品も相見積もりになり、昔の関係性がほとんど役に立たないこと
- 多頻度配送などの物流機能よりもコスト優先がされている事(この会社は配送車両を抱え多頻度配送に強みがあった) 等々
「強み」を聞いていたのに、「弱み」ばかりが出る始末。
4、ネガティブ意見に支配されたクロス分析
「機会」は埋まっても、それに使える「強み」がない。再度、「機会」の見直しをして、少しでも使える「強み」を再討議したが、やはり、「強み」がでない。時間の関係上、ほとんど意味のない「強み」と「機会」を掛け合わせた「積極戦略」を無理やりまとめ上げようとしました。結果はご想像の通り。
「積極戦略」で生まれた、戦術的な具体策も、あまり納得がいかなかったらしく、実行がされませんででした。只、救いだったのは、経営者が「先生、申し訳ありません。私はこういう議論ができただけでも良かったと思います。うちの幹部が頭が固いですから、こんな刺激も必要でした。改めて、思ったのはわが社の形態は、新たな戦略は難しいですね」と。まあ、慰めみたいな事でした。
5、この失敗から学んだ事
こういう業界は、今の顧客だけで考えると、自社独自のマーケティング戦略を出しにくい訳です。特に「専門部品問屋業」という形態なので、自社商品を持っている訳でもない。だから、新規事業や新チャネルに向けた「SWOT分析」をすべきだかもしれません。こういうケースの場合、「機会先行」に捕らわれず、「強み」を先にする柔軟性があれば、このミスは防げたかもしれないと思っています。
こういう失敗は決して、ここだけではありません。まだまだ十数社はあったような気がします。でもめげずに、SWOT分析は良いものだと信じて、やるだけですね。
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