
中小企業の経営顧問を務めるコンサルタントや、一歩踏み込んだ経営支援を目指す会計事務所の職員にとって、顧問先での「経営会議」や「役員会」の運営は腕の見せ所です。
しかし、現場で誰もが一度は直面するのが、「司会進行(ファシリテーション)をしながら、同時に正確な議事録も取る」という二刀流の難しさではないでしょうか。
議論をコントロールしながらPCを叩き、5W2Hの決定事項を画面に映して周知する作業は、想像以上に脳のキャパシティを消費します。
ただ私の経営顧問が10年、20年、30年と続いている理由は、その二刀流をしてきたからです。
私は先日、遅ればせながら、AI議事録ツール「プラウド(Plaud)」を実際の経営会議に投入してみました。
その結果、叩き出された議事録の圧倒的な精度に、文字通り目から鱗が落ちるような衝撃を受けたのです。
今回は、このAIがもたらす革新と、だからこそ私たちが絶対に手放してはいけない「人間の役割」について深く掘り下げます。
1、司会と議事録の二刀流が生む「付加価値」と「潜むリスク」
これまで私は、顧問先の経営会議において「司会」と「議事録作成」の両方を自ら買って出ていました。
ノートPCを会議室のモニターにつなぎ、発言や決定事項をその場でリアルタイムに入力していくスタイルです。
この方法には確かな付加価値がありました。
事前に経営者と綿密にプロットした論点へ議論を誘導できますし、幹部たちの発言が脱線しそうになっても瞬時に軌道修正が可能です。
何より、うやむやになりがちな「誰が(Who)」「何を(What)」「いつまでに(When)」という5W2Hの決定事項を、全員の目の前で文字化して周知徹底できるメリットは極めて大きいものでした。
しかし、その一方で「人間の限界」によるリスクが常に潜んでいたのも事実です。
例えば、熱を帯びた議論の最中、コンサルタント自身の「無意識の恣意(しい)性」が働き、自分たちの誘導したい方向性の発言ばかりを強調して記録してしまうことがありました。
また、ノートPCの入力スピードには限界があるため、重要な発言のニュアンスが漏れてしまうことも少なくありません。
「会議時間が足りなくなったから、この主要課題は次回へ後回しにしよう」といった、場当たり的な判断による議論の先送りが発生することもしばしばでした。
2,AI議事録「プラウド」の衝撃!網羅性と客観性がもたらす安心感
こうした「二刀流の限界」を打破すべく、会議の進め方自体は大きく変えずに、超小型のAIボイスレコーダー「プラウド」を会議室の机に置いて録音を試してみました。
会議終了後、生成された議事録と要約データを確認した私は、その完成度の高さに声を失いました。
これまでは、発言者の声が重なったり、専門用語や業界の独特な言い回しが飛び交ったりすると、後からの文字起こしは困難を極めるのが常識でした。
しかしプラウドは、誰が何を話したのかを正確に識別し、極めて高い精度でテキスト化してくれたのです。
しかも、ただ文字を起こすだけでなく、会議の文脈を理解した見事な「要約」まで瞬時に作成してくれました。
何よりの収穫は、人間特有の「主観」や「記憶の漏れ」から完全に解放されたことです。
コンサルタントがどれだけ公平に記録しようとしても、自分の得意なテーマや関心のある議題に偏りがちになります。
しかし、AIはすべての議論をフラットかつ網羅的に、100%客観的な事実として記録してくれます。
これにより、「言った・言わない」の不毛なトラブルが防げるだけでなく、コンサルタント自身も「必死にメモを取る」という作業負担から物理的に解放されることになったのです。
3,要注意!AIに任せるのは「記録」であり、「ファシリテーション」ではない
この圧倒的な精度を体感すると、「これからは経営会議の運営もすべてAIに任せればいいのではないか」と思ってしまうかもしれません。
しかし、ここに大きな落とし穴があります。
私たちが強く認識すべきなのは、AIが完璧にこなしてくれるのはあくまで「過去の記録と整理」であり、「未来の意思決定を導くこと」ではないという点です。
例えば、ある中小企業の役員会で、売上低迷の対策を話し合っていたとします。
幹部たちから
「営業人員が足りない」
「ツールの導入が必要だ」
「競合の値下げが激しい」
といった不満や課題が次々と噴出しました。
AIをただ置いておくだけでは、これらの発言を綺麗に箇条書きにした「完璧な不満リスト」が出来上がるだけです。
会議を価値あるものにするためには、「なるほど、では課題は人員の数ではなく、営業プロセスの標準化にありそうですね。
社長、事前の打ち合わせ通り、まずはA商品のテコ入れから議論を絞り込みませんか?」と、議論の舵を引く人間が必要です。
事前に経営者と擦り合わせた企業のビジョンや、今回の会議で着地させるべきゴールへ向けて、脱線を防ぎながら合意形成を促す「ファシリテーション」は、AIには絶対に不可能です。
ここを怠り、会議の進行までAIの要約機能の力任せにしてしまえば、どれだけ議事録が美しくても、「何も決まらない、成果の出ない経営会議」へと一気に形骸化してしまうでしょう。
4,AIという最強の相棒を得て、人間は「最高の参謀」へ
経営会議における議事録の作成は、AIという強力な相棒に全面的に任せるべき時代がすでに到来しています。
プラウドのようなツールの登場は、私たち経営支援者の仕事を奪うものではなく、むしろ進化させるための福音です。
「記録」という重労働から解放されたコンサルタントや会計事務所の職員は、その分の脳のメモリーを、目の前の経営者や幹部の表情、発言の真意、そして議論の「空気感」を読み取ることに100%集中できるようになります。
それこそが、会議に命を吹き込む高度なファシリテーションへとつながるのです。
これからの時代、優れた経営支援者であるための条件は、AIを賢く使いこなしながら、人間にしかできない「最高の参謀役」として会議を勝利へ導くことではないでしょうか。







