事業の撤退か維持かの判断のコンサルティング
SWOT分析、KPI監査、採用サイト、事業承継「見える化」コンサルタントの嶋田です。
これだけ、先々に不安ばかりが募る経営環境を冷静に見ると、「これ以上事業を続けるよりも、早い内に、徹底又は転業廃業をした方がいいのではないか」と考える経営者も出てきます。
恐らく、赤字を繰り返し、後継者もいない、資金手当ても切迫してくれば、最悪の自己破産前に何らかの判断をしたくなるものです。
まだ「撤退」できる余裕のある企業に限られる訳ですが。
1,事業の撤退、廃業の相談をされたら
コンサルタントや 会計事務所職員には日頃の付き合いから、そういう相談を受けることがありますよね。
「事業の縮小や撤退」の話を「グチの一環」で言っているのか、「真剣」に言っているのかでこちらの対応も違ってきます。
もし、真剣に言っているのなら、どう応えるべきでしょうか?
ことがことだけに、安易な答えを避けたいと思い、言葉を濁す人も多いのではないでしょうか。
クライアント・顧問先が中小零細企業の場合、腹を割って相談する相手は限られているので、コンサルタント・会計事務所職員が信頼できるなら、先ずはそこに相談をしたくなるものです。
それなのに、コンサルタント・職員にもし真剣な態度がなければ、経営者はがっかりする事でしょう。
実は、私達コンサルタントも、「経営判断の修羅場」の経験がないと、一般論や総論だけ述べて自己の見解を避ける人も多いのです。
しかし、いかに、そういう経験を複数回しても、各社各様ですので経験則だけでは言えません。
ある程度の、基本的な理論や考え方に基づいて、経営者の判断の参考になる「何らかの意見」を持たねばなりません。
2,中小企業の事業撤退や縮小に関する本音
それは、「先ずは経営者が総合的に考えて、事業撤退の意識に傾き、分析は後付の理論に過ぎない」と言う事です。
大企業のように「将来の市場分析」「PPM(ポートフォリオマネジメント)分析」「競合分析」「SWOT分析」等を通じて、理論的に分析した結果「事業撤退」と言うわけには行きません。
平たく言えば「先ず結論ありき」なのです。
それでも、経営者と言う人は「一度傾いた撤退と言う決断が様々な情報によって揺らぐ」ものです。
特に拙速は好まず、できる限り多方面から意見を貰いたいと考えています。
ですから、自社の台所事情を知って、長年付き合っているコンサルタント・会計事務所職員にも、客観的な意見を貰いたいと思うのです。
3,ある製造業での話
ここ数年来赤字が続いているある事業があり、様々な打開策を実行してきました。
しかし商品力、価格力、そして何より人材力の問題で、継続する事は赤字を広げるだけで、本業への悪影響も看過できない状態になっていました。
経営者は腹の中では「事業の撤退」を意思決定していました。
当然、経営者の一存だけでは決められないので、役員幹部とも一緒に検討しました。
会社の状況を考えると「撤退やむなし」と皆が賛同したので、次に「どうのように撤退すべきか」と言う方法論を議論しました。
既に「撤退」と言う意思決定がなされた訳ですから、今度は「いかに円滑に、最小限のリスクで撤退すべきか」が焦点になるはずでした。
しかし、その方法論を巡って議論をするのですが、喧々諤々いっこうに議論が前に進みません。
その理由は「撤退に伴う最小限の被害」に拘っているからでした。
即ち「ソフトランディング」を目指していたので、自社に都合の良い状況で進むよう発想しているのです。
挙句の果てには「やっぱり、撤退は難しいので、当面維持するしかないのでは」と言う意見まで出て、振り出しに戻るような事もしばしばでした。
こういう議論を袋小路に入ったというのでしょう。
そんな時、誰かが助け舟を出さねばなりません。
そのお鉢は非当事者であるコンサルタントが請け負うべきなのです。
そこで、私達は下記の事を提起しました。
⑴まず撤退の為に片付けるべき課題を経営の機能別に整理する・・・これはホワイトボードや模造紙に整理する
⑵各経営機能別の「撤退スケジュール」と撤退までに行なう事を一覧にするよう、担当幹部に指示
⑶「撤退」で一番のネックになる機能の責任者には「社長」にもなってもらう
⑷顧客への迷惑は最小限にしたいので、代替提案を複数案用意し、そのメリット、デメリットを整理させる
⑸何より、一度撤退を決めて動き出した事は、よほどの事情がない限り白紙に戻さない事を役員幹部に確認する
⑹ある程度の情報が整理されるまで、内部でも情報を制限する事の約束を取り付ける
でした。
数回に渡って議論するのですが、なるべく総論での議論にならないようにする事が重要です。
最終的には経営者が「私が責任を取るから、やれ」とTOPダウンで言うしかないのです。
ある意味、役員幹部も経営者のその言葉を待っているでしょう。
コンサルタント・会計事務所職員が、経営者からいきなり「この事業は辞めたほうが良いと思うが、どうかね?」と聞かれて、感覚論で「私もそう思います」と軽々しく応えるのは考え物です。
しかし、「難しいですね」の一点張りでは、真摯な姿勢とは言えません。
そんな時は、撤退決定までの手続きについて提案してみる事が肝要かと考えます。
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