2026.8.17 【実践録】社員70名の金属加工業で実証!生成AIとモニターを囲んで作った「現場が本気で動く経営計画書」10のステップ

金属加工業で生成AIと経営計画を作る10ステップ.jpg

「先生、うちの役員たちと一緒にモニターを見ながら議論して、その場で数字や言葉がどんどん形になっていくこの進め方、すごく納得感があるよ」

社員70名を抱える金属加工メーカーの社長からそう笑顔で言っていただけたとき、伴走型支援の手応えを強く実感しました。

昨今、生成AIを使って経営計画書を作成する試みが増えていますが、AIに丸投げして机上で作った綺麗な計画書は現場に届きません。

かといって、従来のように膨大な時間をかけて手作業で作るのも非効率です。

私たちが目指すべきは、経営陣と信頼関係を築きながらモニターのExcelを囲み、コンサルタントの的確な問いかけとファシリテーションによって現場の生々しい情報を引き出し、AIと協働して言語化・数値化していく参加型のスタイルです。

今回は、実際に高い成果を上げた「10のステップ」を詳しくご紹介します。

1:AI×参加型ファシリテーション|モニターを囲んで始まった経営計画策定

多くのコンサルタントや会計事務所の職員が直面する課題として、「せっかく作成した計画書が経営陣や幹部の腹に落ちず、形骸化してしまう」という悩みがあります。

私自身、かつては事前に一人で作り込んだ資料を提案するスタイルを取っていた時期もありましたが、それでは本当の意味での当事者意識は生まれませんでした。

そこで私がシフトしたのが、会議室の大型モニターにExcelとAIの画面を映し出し、社長や専務、工場長の言葉をその場で打ち込みながら進める「参加型ファシリテーション」です。

「専務、先期のあの治具トラブルでのロス、具体的には外注費と修繕費のどちらに跳ねましたか?」

「社長、大口の取引先から内示が減った分、試作案件の引き合いはどう推移していますか?」

私が問いを投げ、役員陣が答えた内容を構造化してその場で入力していく。

このライブ感あるやり取りこそが、全員の納得感を生む土台となります。

 

2:前半戦|現場の生の声をAIに注ぎ込む「情報整理の6ステップ」

会議では、まず現場の一次情報と定性的な事実をAIに整理させる前半の6ステップを実行しました。

  • ステップ①:DeepResearchによる市場・顧客課題の分析

    業界全体の動向だけでなく、同社が属する特定一次サプライヤーの設備投資動向や特定顧客のニーズをAIにリサーチさせ、外部環境の課題をスクリーン上で共有。

  • ステップ②:前期の反省(具体策と進捗)

    前期計画の具体策に対する進捗と課題をヒアリングし、ありのまま入力。

  • ステップ③:科目別の予実対比と寄り付き予想

    「売上高」「外注加工費」「修繕費」など勘定科目ごとに前期の着地見込みと計画の乖離を入力。

  • ステップ④:今期に影響する出来事の明示

    主要顧客の内示数変動など、売上に影響する出来事を特定の売上科目に紐づけて整理。

  • ステップ⑤:過去3年PLの読み込みと今期収支予測

    過去3期のPLと定性情報を統合し、AIに今期の収支予測を算出させました。

  • ステップ⑥:今後3か年の科目別予測と根拠整理

    市場動向や反省を踏まえ、科目ごとに「なぜこの数字になるのか」の背景付きで3年予測を整理。

3:後半戦|役員陣の議論から生まれた「納得の3か年計画とアクションプラン」

AIが出力した科目別の3か年予測をモニターのExcelに展開し、ここから役員陣との熱いディスカッションが始まります。

  • ステップ⑦【最重要】:Excel上での検証と修正

    「AIは外注費を5%削減と試算しているが、協力工場の単価改定があるからここは+2%で見直そう」「その代わり、内製化を進めることで修繕費と材料ロスは圧縮できるはずだ」など、画面を見ながら数字を1行ずつ役員陣の総意で修正していきました。

  • ステップ⑧:修正数値の再投入と部門別重点対策の抽出

    修正した3か年数値とその根拠をAIに再投入し、【製造部】【営業部】【管理部】の部門別重点対策を出力。

  • ステップ⑨:3半期ごとの行動プロセス策定

    「第1四半期:金型内製化の検証」「第2四半期:若手向け技能伝承チェックリスト運用」といった具体的な行動計画にブレイクダウンさせました。

  • ステップ⑩:最終プランの現場向け微修正

    担当役員と工場長の意見を反映し、実行可能なタスクレベルまで微調整して完成させました。

「自分たちで議論して決めた数字だから、現場の職人たちにも自信を持って方針を語れるよ」と、社長も役員陣も深く頷いておられました。

 

4:コンサルタント・会計事務所の介在価値は「問いと構造化のファシリテーション」にある

AIの進化により、財務分析や計画書のドラフト作成スピードは劇的に向上しました。

しかし、どれだけAIが進化しても代替できないのが、「現場の暗黙知を引き出す問いかけ」と「経営陣の想いを構造化するファシリテーション」です。

AIは与えられた前提を論理的に組み立てることは得意ですが、経営陣の表情を読み取り、

「この数字の裏にどんな葛藤があるのか」

「現場が本当に実行できる負荷はどのレベルか」

を判断することはできません。

AIに良質な情報を渡し(ステップ①〜⑥)、

AIが出した骨子を経営会議の場で揉んで血を通わせ(ステップ⑦)、

再びAIを使って行動計画へ落とし込む(ステップ⑧〜⑩)。

この「人間とAIの協働サイクル」をリードすることこそが、これからの経営支援における最大の価値です。

経営計画書は、単に金融機関に提出するための書類ではなく、経営陣と社員のベクトルを揃えるための羅針盤です。

AIに計画作成を丸投げするのではなく、経営者や役員と一緒にモニターを囲み、対話しながら作り上げていく協働プロセスをぜひ取り入れてみてください。

顧問先の伴走支援に力を入れたいコンサルタントや会計事務所の皆様、そして自社の未来を社員と共に創りたい経営者の皆様は、まずは次回の経営会議で「ステップ①の課題分析」や「モニターを見ながらの科目別出来事整理」から試してみてはいかがでしょうか。

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