嶋田利広ブログ

コンサルタント事務所経営

コンサルタント失敗物語②営業受注の失敗

コンサルタントにとって生命線は「受注」があることです。どんな高いコンサルティングスキルがあっても、仕事の発注を受けない限り活かしようがありません。しかし、「コンサルタント稼業」をしている人には、「受注活動」「営業活動」が苦手な人が多いのも事実。だから、この「営業受注時の失敗」は枚挙に暇がない位多いのです。

幸い、私は前職のコンサルティングファーム時代から、「生産性を上げながらコンサルタントの道を歩む」という、会社の方針に沿って「営業受注優先」で修業したので、「営業が苦手」という事は全くありませんでした。しかし、これから紹介する事例は、私の知り合いコンサルタントが、経験した事ばかりです。この失敗事例を学べば、「コンサルタントの受注方針」が見えてくると思います。

⑴ 値段を先に決めないコンサル

  これはコンサルタントや会計事務所でよく見かける光景です。

  • 「まず、やってみて良かったらおカネを頂きます」
  • 「成果が出たら、おカネをください」
  • 「やってみないと工数も分からないので、後から費用は決めましょう」

「成果報酬型コンサルティング」なら、それもありですが、一般のコンサルティングは「値段決めずに実行すると80%以上トラブル」になる可能性があります。最初に費用を決めないと、クライアントの要望でどんどん工数が増えても、成果にならなかったら1円ももらえないという事です。クライアントもおカネを払っていないので、真剣みが足りない場合もあります。値決めしないで、コンサルティングが始まり、後から請求の話をしても、「そんな費用が掛かるなら最初からお願いしなかった」「この触りの部分は無料じゃないの」「費用が掛かるなら、最初から言ってくれよ」 と。特に中小零細企業の経営者は、自分に都合の良い言い訳をしてきます。そして、「後から請求」したコンサルタントに対して不信感を持つのです。

まさに踏んだり蹴ったりです。だから、「最初に値決め」が肝心です。

⑵ 低価格で過剰なコンサル

受注の失敗で多いのが、「低価格で受注し、過剰なコンサルティングサービス」をすることです。コンサルタント自身の時間単価を考えてください。例えば、5万円/回の契約でも、訪問指導時間、移動時間、事務所での準備時間を総合すると10時間かかっているなら、時間単価は5,000円です。 なのに、クライアントから、他の要望を受けても別料金を言えず、どんどん時間単価が下がっていきます。あるコンサルタントは、顧問料月額10万円を貰っているクライアントがいました。訪問回数は月2回、1回当り平均半日(5~6時間)でした。これだけでの時間単価はわずか約1万円です。更に移動時間、事務所での準備作業時間が平均6時間加わり、時間単価は6250円。

更に、そのクライアントの要望で、別の仕事も依頼されました。クライアントは「顧問料を払っているんだから、それくらい頼みますよ」みたいな雰囲気で、別料金とは言えなかったそうです。その別指導が1カ月だけで終わらず、数カ月続いたそうです。その別指導の時間が平均5時間/月として、時間単価は約4700円です。こうなると、何をしているのか分かりません。彼曰く、そのクライアントに行く事が苦痛になりだしたそうです。当然です。

貰うべきものを貰えない訳ですから、ストレスになるし、時間も制約されます。これは経験則で言いますが、「別指導は別料金」だとはっきり言うべきです。それを受け入れないなら、キッパリと断ることです。仮にその別指導を断っても、日頃のコンサルティングが良ければ、問題ありませんし、日頃のコンサルティングが良ければ、「別指導は別料金」を相手が飲んでくれるはずです。厳しい言い方をすれば、「別指導は別料金」といえないのは、日頃のコンサルティングに自信がないからだという事です。

⑶ 直接開拓をせず紹介会社経由やJVに依存

コンサルティングの受注をネットワークに依存している人がいます。紹介会社経由、一緒にジョイントベンチャー(JV)を組んで仕事をしてる同業者からの紹介などです。私の経験とそういう知り合いコンサルタントの経緯を見ると、そのパターンは常に受注に苦しむことになります。まず紹介はいつ来るか分かりません。

仮に紹介が来ても、単価が合うかどうか分かりません。また価値観が全く分からない人からの依頼です。そして紹介手数料も相当掛かります。紹介会社も仕事を断ると次から紹介しない傾向があるので、「つらい受諾」を受けざるを得ない場合もあります。また、JV仲間からの紹介やプロジェクトメンバーに入る場合もそうです。

明確なコスト見積もりをしたうえでの依頼なら良いですが、結構アバウトなケースも多く、「やってみたら見積以上の工数がかかった」という事も多々あります。また、JVからの紹介では、その配分もトラブルになりやすいです。JVによっては総額を提示せず、発注金額しか言わない場合もあります。紹介会社経由、JVに仕事を依存していることの最大の問題点は、いつまで経っても「自分の見込み客を育成できない」ことです。自分の見込み客なら、自分から提案したりセミナーに誘導したりと、いろいろな企画が可能です。

ある受注ネットワークに依存しているコンサルタントに言わせると、「自分のような専門コンサルタントは、自らの営業は難しい。そんなニーズを持っている見込み客をどう掘り起こせばいいのか分からない」と。そんなことは全くありません。FAXDMを多用したり、ミニセミナーを主宰したり、コンサルティング以外のきっかけ商品(低価格)を作り、それを拡販して、フロントエンド商品にしたりと・・・ どんなに専門的なコンサルタントでも方法はいくらでもあります。 自分の直接の顧客を作ることが、開業後3年間の重点課題です。

⑷ 企画書を出さない、またはアバウト

クライアントと口頭だけでコンサルタントを受諾して仕事をする人がいます。「長年の付き合いだから」とか、「請求すれば振り込んでくれるから」とか、いい加減なことを言います。付き合いが長いほど、前述のように「顧問料に何でも含まれる無料の呪縛」に取り付かれるのです。また、企画書がないという事は、先方にも準備や段取りが分からないという事です。元来企画書には

  1. このプロジェクトの目的と狙うべき成果
  2. 実施要項
  3. スケジュール表
  4. 担当
  5. 費用 が掲載されます。

スケジュール表は先方担当者の名前も入れて、詳細なアクションプランにすべきです。ただ、大手のコンサルティング会社でも、このスケジュール表が結構アバウトなケースを散見します。詳細なスケジュール表を作ると、コンサルタント自身の首を絞めることになりかねないので、その保険として「曖昧なスケジュール表」にしているのでしょう。しかし、それはプロの仕事とは言えません。企画書を出さないと、仕事が始まらず、企画書なしで先にコンサルティングが進んだ場合、成果や費用面でまたトラブルになる可能性が高いのです。必ず、顧問先でも企画書を出しましょう。

⑸ 最初から複数年契約にしていない

ほとんどのコンサルティング契約は6か月~1年程度のものです。契約書にもだいたい1年間と書き、後は事前の交渉みたいな表現になっています。複数年契約とは、契約書にうたうのではなく、企画書に記載するのです。

最初の1年間は、〇〇ができる状態

2年目は◇◇ができる状態

3年目は仕上げで自立して△△になる

みたいな表現で、向こう3か年は、コンサルタントが何らかの支援をすることをイメージ付けさせます。そうしないと、「契約期間終了」=解約 になります。コンサルティング契約の中身次第ですが、プロジェクトものでも、そのフォローやモニタリングをすることで、複数年コンサルティングは可能なはずです。複数年コンサルティングをしておけば、その間の受注ベースが見えるので、コンサルタントは精神的に安定します。

いかがでしたか、「営業受注」の考え方次第で、いつまでも受注をつらくするか自らの見込み客を作るかはあなた次第です。

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