コンサルタントの提案とクライアントの消化能力
あなたは、クライアントからこんな不平ともクレームともとれる苦言を言われた事はないでしょうか?
- 「先生がいろいろ指導してくれても、うちの幹部社員が付いていけてない」
- 「一つのことも徹底できないのに、新たな事はうちの社員は吸収できてない」
- 「先生の求めるレベルと当社の幹部のレベルが違いすぎるんですよ」
私も32年間のコンサルティング経験の中で、幾度か言われた言葉です。その都度、自己反省しました。
要は、コンサルタントがクライアントにこうあってほしいと願う気持ちとそれに沿ったコンサルティングが、先方のキャパシティーを超えている場合、上述のような不平やクレームが発生する訳です。もし、ここで軌道修正できないと、そのまま解約の憂き目にあいます。
1、コンサル結果は、コンサルの先進能力よりも、相手の消化能力
コンサルタントはいろいろ知識を吸収して、クライアントのテーマに応じて提案し、指導します。コンサルタント病とも言いましょうか、旧来のコンサル知識や指導内容では「クライアントに飽きられるのではないか」という不安感から、どんどん新たな事を提案する人もいます。
私も若い頃、顧問企業の経営会議に参加した時、「とにかく経営者の課題を知りたい」「経営者の課題に対して、具体的な解決策を提案したい」と常に思っていました。すると経営者の課題は多岐にわたっているので、毎回違う課題やニーズを言われる経営者もいます。すると、私はそれに合わせた具体策を提案する訳です。
経営者は「先生、是非それも指導してください」と言われます。
そこで、今進行中のコンサルをないがしろにして、新たな事に取り組む訳です。こちらとしては、経営者のニーズを汲んでのコンサルですが、幹部社員はそう思っていません。「また、違うことを指導するのか。今でもいっぱいいっぱいなのに」と内心思っているのでしょう。彼らの言葉に出してくれないので、こちらも分からないのです。しかし、時間の経過とともに、経営者は怒りをあらわにします。「先生、もっと一つのことに徹底してくださいよ。うちの幹部社員は完全に消化不良です。これでは効果もなくコンサルタント料を払う意味がない」と。
コンサルタントの指導結果を実行されないことへの不満です。その場その場の経営者の意向に、コンサルタントがブレすぎた結果ですね。
2、たくさん提案されて、腹をこわすクライアント
上述の事はクライアント組織の消化能力を超えている事を意味します。それが中堅企業なら、コンサルタントはある程度知識を言うだけで、動く組織になっているしコンサルタントの指導通り動かず結果を出さない事は、そのまま人事評価に影響します。更に、そういう基本教育を受けている幹部が多く、それなりのスタッフもいます。ところが中小零細企業は、組織的にもそういう余裕はなく、プレイングマネージャーの幹部は直ぐにオーバーキャパになります。「良かれと思って、たくさんの美味しい餌を与えたペットが腹を壊し、あだ花になった」見たいな感じです。
どんなに必要な提案も、ニーズにマッチしている提案も、一度に吸収できる能力は限界があり、中小零細企業には、その限界点が相当低いのです。大企業や中堅企業を中心に研修をしてきたコンサルタントが、中小零細企業のコンサルティングに入った時、こういう現象が多々起こります。中小零細企業には消化能力が少ないのです。
3、小食で物足りないけど、確実性を期待する経営者
経営者のたくさんのニーズに答えたいけど、それでは消化不良を起こす。しかし、経営者のニーズの答えないと、解約されるという危機感があります。経営者はその時々で、多種多様なニーズを言いますが、とどのつまりは、「コンサルタントを入れて、どんな成果が出たのか」だけが、価値基準です。たくさんの中地半端なニーズを拾い上げ、どれも実行されず、「食い散らかして、組織がガタガタになる事」が最悪の結末です。だから、経営者から発信される様々なニーズは聞くけど、優先順位を常に、経営者と協議し、理解を貰うことが必要です。
4、診断しても消化能力まで見えてこない
初めてコンサルタントを入れるクライアントなら、まだまだ消化能力があります。しかし、クライアントのレベルが低くと、一度に多くの事を実施しようとすると、6カ月もしないうちに消化不良を起こし、不満がくすぶってきます。中小企業診断士などは、経営診断を通じて、課題と必要な具体策を提案します。しかし、レベルの低い中小零細企業に「求める理想」を言い過ぎて、返ってトラブルを起こす場合が多いと聞きます。
経営診断時に「消化能力」をあまり考えず、コンサルタント側の視点で診断書を書いた結果でしょう。いかにヒアリングをしても、先方の消化能力まで見えてないのが実情です。私たちもコンサルタント契約したら、現状認識期間を設け、課題抽出と具体策を提示します。しかし、必ずまずは「突破口作戦」を提案し、それを当面のコンサルティング課題に選択します。突破口作戦とは、いろいろな課題の中で、「ここを改善するだけで、他の課題にプラス影響する箇所の絞ったコンサルティング」です。
当初これで結果を出すことで、クライアントの経営者・幹部から「先生の指導は効果があるから、これからも信頼し、実行していこう」というマインドセットになる訳です。突破口作戦は必要な考え方です。
5、仕組み化されるまで執拗にチェックする重要性
一つのコンサルティング指導項目が、実行され仕組みとして定着するまで、どれかの会議や研修等で、チェックしたりモニタリングする必要があります。多くの中小零細企業は「熱しやすく冷めやすい」傾向があり、直ぐ飽きて忘れる場合が多いです。クライアントは忘れても、コンサルタント側は覚えておき、忘れたころにチェックを繰り返す。それは経営者に取ってはありがたい事です。私たちは、クライアントと一緒に経営計画書を作成します。その中でも「重点具体策のアクションプラン」のPDCAを重要視しています。アクションプランがあるから、定期チェックもでき、どれ位実行しているか把握できます。
経営顧問の仕事とは、「クライアントが忘れた重要な決定事項を、コンサルタント側が掘り起こし、軌道修正させる」ことかも知れませんね。
上述のように、コンサルティングの進め方に対する、経営者からの不平不満やクレームが発生する前に、幹部社員からの声が経営者に届いています。コンサルティングの中で、
- 幹部社員の表情や言動が消極的
- 必要な宿題が実施されない
- 決めたことを守らない
そんな事が起こっているなら、消化能力を超えている可能性があると考えられます。傷が浅いうちに、是非軌道修正を。
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