本来なら中小企業のコンサルティングでは、必ず経営者も絡めて
行うのが常道です。
しかし、ある程度の規模になると、経営者が
「私が出ると幹部が意見を言えないから、幹部だけでお願いします」
「プロジェクトの細かい推進は、〇〇専務中心にお願いします」
等と、経営者が直接関与しないコンサルティングが結構あります。
また、層別・テーマ別の継続研修などでは、経営者は全く参加しな
いものもあります。
しかし、経営者が参加しないコンサルティングや研修は、注意すべき事、
配慮すべき事が結構あります。
私の32年間の経験でも、「ミスった」事は相当あります。
「失敗」しているから、学んでいるのはずなのに、こちらの忙しさ、
別途時間が取れない事などで、この「失敗」はたまに起こります。
今回も私の失敗事例を恥を忍んで公開します。
1、専務が報告していると思い込んで、社長への直接の報告を怠った
ある企業の幹部研修です。
毎月1回(半日)の研修を12か月間継続しました。
幹部研修といっても、実務に直結するアウトプットや決定事項を出す
研修なので、「幹部会」みたいなパターンでした。
社長は参加せず、社長へは専務からの報告がルールでした。
研修結果、議事録、決定事項などのアウトプットは毎回データで出します。
専務が社長へ報告するという当初の取り決めがあったので、私は完全に
信じ切ってそのチェックさえもしませんでした。
そんな事は当たり前であり、まさか報告漏れがあるなんて思ってなかっ
た訳です。
2、社長から電話でクレーム
研修も6カ月目を過ぎたある日、社長からこんなクレーム電話があり
ました。
「先生は毎月、どんな研修をしているんです?全然報告がないですが?」
私
「専務から毎月研修後、報告していると思いますが?」
社長
「研修の簡単な結果と感想はありますが、研修内容や何をしたかなんて、
全くありません」
私
「毎回、実務的な決定事項や取り決めの文字化・フォーム化をしている
ので、最低でも5~6枚のデータが作成されています。それを報告して
いると思ってました」
社長
「いいえ、そんなものはありません。一度詳細を教えてください。ちょ
っとこのままなら、研修を続ける事は難しいです。・・・・・」
明らかな不信感のクレームです。
3、専務に何故報告しないのか、聴いたら・・・
社長からのクレーム電話の後、社長に会う前に専務にあって、ことの
顛末を確認しました。
すると、専務は
「先生、申し訳ありません。実は報告できないんです。何故なら、詳
細を報告すると、『なんで勝手にそんな事を決めるのか』とか『その
方法では本当に大丈夫か』とか、いわゆる【ちゃぶ台返し】を言われ
て、下手に報告すると、我々も困る事があるんです」
と。
社長は任せていると言いながら、幹部が決めて実行しようとすると、
介入してきて何をやるにも、お伺いをしないと許さないタイプの経営
者でした。
4、コンサルタントから直接経営者への報告をしたが、結局・・・
そういう事情を聴いて、次回から研修結果を私が報告をするように
しました。そしてその第1回目に
社長
「先生、困りますよ。こんな事を幹部の意見で勝手に決めてもらっ
ては・・・」
私
「これは研修での決定事項です。それを専務らが経営会議や社長へ
提案して、実行か、保留か、修正か、却下かを決めてもらうたたき
台です。あくまでもたたき台ですが・・・」
しかし、社長の私への不信感はぬぐえず、残り4カ月の研修を残して
幕引きとなりました。
5、幹部の報告を信用してはいけない、やはり報告は直接が良い
「専務が詳細に報告しているはずだ」
そういう認識がこのケースでの失敗でした。
3現主義(現地現場現品)という言葉通り、コンサルタントが直接、
経営者へ報告する事が必須だという事です。
いくら研修カリキュラムを経営者から了承して貰っても、途中で経
営者のニーズや気持ちにも変化があるわけです。
それを、第3者(この場合は専務)の又伝え、又聞きでは、当事者の
本当の声が伝わりません。
経営者への報告は初歩の初歩のはずなのに、「やってしまった」とい
う事が、何回も繰り返される、自分の未熟さです。
多忙になると、経営者の時間と自分の時間の調整がつかず、面談でき
ないケースが増えます。
やはり大事なのは、研修前後に経営者面談を入れるようにアポを入れ
ておくという事です。
弱気なコンサルタントや、経営者が苦手なコンサルタントは、こうい
うミスを連発するので要注意です。